宇宙のくじら

桜原コウタ

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第二章/接触

[遭遇]第1話‐1

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 バラバラになった体がまた一つに戻って行く。マコトは辺りを見渡し、自分の視界が正常であることを確認した。二度目のワープドライヴ。薬を貰う程ではないが、やはりこの感覚はあまり気持ちのいいものではない。少しフラフラとした足取りで机に向かい、上にあるリモコンを操作して機外カメラからの映像を確認する。壁面に映し出された映像には白と黄色の網模様の球体、そしてその周囲に特徴的な環。土星だ。
[ストレリチア]に乗艦して一週間が経過した。[ストレリチア]は簡単な検査を終えた後、技州国の追手から逃れる為に火星圏から離脱しようと航行を始めた。幸い追手は来ず、[ストレリチア]艦体にもトラブルも起きていない。何事もなく[ストレリチア]は火星から距離を離した。格納庫での見学を終えたマコトは、流石に疲れたのかアレックスにそれぞれの自室へ案内された後、直ぐにベッドに倒れ込んでそのまま眠ってしまった。起きたのは次の日の朝。寝ぼけ眼で端末を見るとノブヒトからのメッセージが昨日から送られていることに気が付いた。内容は[ストレリチア]に居る間での勉強の事だった。マコトは跳ねる様に起きると、慌てて端末の地図アプリを起動し、ノブヒトの部屋を確認しながらそこへ直行した。
「すみません!寝ていてしまって・・・・」
と、マコトは息を荒げて謝罪しながらノブヒトの部屋に入室すると、ベッドに座って本を読んでいたノブヒトは「そこまで急がなくても大丈夫、大丈夫。」と微笑みながら、マコトに椅子に座って落ち着くよう誘導した。ノブヒトの指示に従ってマコトは呼吸を整えながら椅子に座る。マコトが落ち着いてきたことを確認し、ノブヒトは昨日のメッセージのことに関して口を開いた。
「で、昨日送ったメッセージのことで来たんだよね。一ノ瀬君や若宮さんには昨日説明したんだけれども、この艦に居る間の勉強について、教材が大体纏まったから今日あたりからスタートしたいな、と思って。大体はボクの部屋でやるけど、気分転換がてら食堂や庭園とかでもやる予定かな。大体、午前2~3時間、昼食と休憩を1時間半ほど挟んで午後も同じ位の時間の授業だけど、授業時間が足りない、または多いとかはないかな?」
「いいえ、ありません。」と、首を横に振るマコト。
「良かった。若宮さんはあまり良い顔はしてなかったから心配だったんだ。」
ノブヒトがホッと胸を撫でおろしたタイミングでどこから「ぐ~」と気の抜けた音が鳴った。音の出どころはマコトのお腹から。「あの・・その・・・」と恥ずかしそうにするマコトにノブヒトは微笑みかけた。
「そういえば寝起きだったね。夕食も食べてないでしょ?まずは腹ごしらえだ。ボクはもう食べてきたから一緒には行けないけど、食堂で朝食を食べてらっしゃい。授業開始については後でメッセージ送っておくから。」
マコトは「はい。」と頷くと、一礼をしてからノブヒトの部屋を出て食堂へ向かった。
その後の日々は、何も起きず平和そのものだった。日に4~6時間の授業、食堂で美味しい食事、ショッピングモールをうろつき、自室で余暇の時間を過ごす。重力があるから宇宙にいる事を忘れてしまいそうになる。偶にアキレア達が授業の時や余暇の時間に顔を出す程度で、これと言ってトラブル等も起きていない。マコトは土星の映像から目を離し、ベッドに寝転がった。状況が変化したのは今朝。技州国の追尾対象・・・〝くじら〟が土星にて出現の予兆が確認されたということで[ストレリチア]はワープドライヴを使って土星圏まで跳躍をした。跳躍する際に英語で館内放送は流れていたが、態々保安部員が自室に顔を出してワープドライヴを使用するからと警告をしてくれた。お陰である程度覚悟を持って跳躍に臨むことができ、気分も一回目よりかは幾分かマシに感じられた。マコトは寝転がったまま首だけ映像の方を向いて、再び土星を見る。
「本当に〝くじら〟はここに居るのかな・・・」
マコトは一人呟いた。
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