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第一幕/出立
[邂逅/前]第3話-3
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いつの間にか体に掛かっていた感覚がなくなっていた。とうとう辿り着いたのかと、マコトは大きく息を吐いた瞬間、シャトルが止まった時と同じくらいの衝撃が襲い掛かる。
『エアロック閉扉及びシャトル固定確認、重力場適応開始。』
マコトは肘掛けにしがみつきながら、聞こえてきた音声に耳を傾ける。
‐なんだ?英語?‐
音声の意味を考えようとするマコトだったが、状況はそんな暇を与えてくれず、今度は体が次第に怠くなっていく感覚に襲われる。いや、怠くなっているのではない、重くなっているのだ。体に重力が戻ってきている。試しに軽く腿に力を入れて足を上げた後、力を抜いてみた。足はそのまま宙に浮かばず、ストンと踵を床につけた。小規模ながら重力を発生させる装置があるのは知っていたが、客室をカバーできる範囲までの装置が存在しているのは知らなかった。もしかしたら、もっと広い範囲をカバーしているかもしれない。マコトは驚きで目を丸くしていた。
「うーん、なんか地球に戻ってきた様な感じだねぇ。」
背伸びをしながらノブヒトは大欠伸をした。ノブヒトの呑気な言葉を聞いたユウヤは、溜め息を吐き、
「先生も結構大物だよな・・・。全く、何されるかわかったもんじゃないのに。」
呆れた様にボソっと呟く。その口ぶりから察するに、ユウヤもシャトルが〝何〟に連れられて、〝何処〟に向かっていたか分かってきたらしい。ユウヤは天を仰ぎながら、また大きく天を仰ぐ。まだ照明が復旧していないシャトルの中。少しでも落ち着こうとユウヤは目を瞑り静かに深呼吸をする。マコトは携帯端末が治っていないか、色々と弄りつつ、耳を澄まして周りの音に気を配る。「おいおいこれからどうなるんだ?」「知らないわよ。」「クソ、今なにが起きているんだ」。乗客が不安を訴える声の中から、少々遠くの方からタイヤが路面を走る音が聞こえてきた。音は一定距離まで近づいてくると、少しずつ小さくなっていき、やがて完全に止まった。その後、ガチャガチャと何かを装着する音が聞こえる。マコトは「なんだ?」と顔をしかめると、急にクラクションの音が数回鳴り、機内が左右に揺れ始めた。恐らく牽引用の車両か何かに引っ張られているだろう。マコトはそう考えながら、揺れる機内の中を壁やノブヒトにぶつからない様に必死に肘掛けに掴まって体勢を維持した。揺れる度に小さく悲鳴が上がるのを機にせず、シャトルが運ばれている先には何が待ち受けているのかを、マコトは思考する。
民間のシャトルが居るのにも関わらず、戦闘行為を行う。軍についての評判はあまり聞いたことはないが、全世界でも圧倒的な武力を持っていることは確かだ。と、言っても内戦やテロを含めた戦闘行為等、全世界で55年間一度も起きてはいないから、どれほどの戦力なのかは図れないが。
‐無理やりシャトルの扉をこじ開けて。力づくで外まで連れていかれて。外に出たらクン人に囲まれていて。「機密を見たな!貴様らを銃殺する!」・・・は、流石に無いか‐
マコトは苦笑すると、突然揺れが止まり、その衝撃からマコトは前につんのめる。それと同時に客室の照明が点き、いきなり周囲が明るくなった。
「復旧した!?こんなタイミングで?」
客室の暖かな照明も、暫く暗闇の中に居たマコト達には眩しすぎ、思わず目を細める。照明が復旧したことに喜ぶのも束の間、客席の後方からボンッと小さな爆発音。そして聞こえた数名の足音。客席の全員は後方に注目し、身構えようとしたが、その隙も与えられず。後方の自動ドアが開き、5名の男性が入ってきた。着ているのは青黒い服。技州国の軍服だ。手には人体工学に基づいた形状の軽機関銃・・・サブマシンガンが握られており、その銃口を客室の一人一人へ向けている。
『全員、その場を動かずゆっくり両手を挙げながら立て!いいな、ゆっくりだ!』
英語だ。先頭に居た一番若い軍人が何か叫んでいた。何を言っているのか詳しくは分からないが、凡そこの状況化で言うことは決まっている。突如乗り込んできた軍人たちに怯えるも、マコトは立ちながら両手を挙げつつ、ちらっと周りを見渡し、他の乗客の様子を伺う。殆ど乗客‐ハルカも‐は恐怖で顔が引きつっている。ある程度覚悟をしていたであろうユウヤでさえ、顔が強張っていた。軍人たちに一番近いスズネは、泣きそうな子どもをなだめながら、手を挙げるよう優しく促しつつ自分もゆっくりと手を挙げた。しかし、子どもの前で気丈に振舞おうとしても、挙げられた両手は恐怖で小刻みに震えていた。ノブヒトだけ笑みを崩さず、ニコニコしながら両手を挙げている。
『おい!そこの男!キョロキョロするな!』
周りの様子を伺っていたのがバレたのか、若い軍人の銃口がマコトに向けられる。マコトは小さく飛び上がり、向けられた銃口に恐怖しつつも背筋をピンっと伸ばし、軍人たちを真っすぐ見つめた。全員が手を挙げたのを確認すると、若い軍人が前の手を振り、それを合図に斜め後ろの二人の軍人が小走りで中央の通路を駆け、操舵室へ向かって行く。二人が操舵室への階段を上ったのを確認すると、若い軍人は銃を構え直し何かを言おうと口を開いた。が、真後ろに居た落ち着いた雰囲気を纏っている初老の軍人に肩を叩かれ制止させられた。若い軍人が振り返ると、初老の軍人は首を横に振り、もう一度肩を叩いて若い軍人の前に出る。初老の軍人は銃を降ろし、首についているチョーカーに付いているボタンを軽く触る。そして軽く頷いた後、客室に居る一人一人に視線を向けながら口を開いた。
「皆様、まずは我々技州国の問題に巻き込み、そしてこういった脅すような高圧的手段、及び態度をとってしまい、まずお詫び申し上げたい。」
英語を話していた若い軍人とは違い、初老の軍人から出た言葉は日本語であった。それも、覚えたてなどではなく、日本人が自然に話すような流暢な日本語。CAであるハルカを含めた客室の全員が驚く中、初老の軍人は続ける。
「我々の目的は、皆様を戦闘の影響で漂流していたシャトルから救助する事だ。決して身を危険に晒すような真似はしないので安心してほしい。救助を円滑に進める為には、我々の指示に従ってもらう必要がある為、何卒、ご協力の程よろしく頼む。」
初老の軍人は深々と頭を下げた。後ろに下がった若い軍人は何かを言おうと初老の軍人に詰め寄ろうとしたが、初老の軍人は片手で若い軍人の動きを制止した。初老の軍人は頭を上げると、安心させる様に笑みを作る。
「大丈夫。先程も言ったが、我々は皆様の敵ではない。決して害を及ぼさないことを、技州国軍人として、誓う。」
初老の軍人は操舵室への階段をちらりと見る。丁度二人の軍人に連れられて沢渡と副機長が下りてきた所だった。
「よし、皆様、まずは軽くボディチェックし、それから中央の通路に出て頂きたい。慌てず、ゆっくりだ。荷物は後で取りに行けるようにするので心配しなくていい。」
初老の軍人は、片手を挙げる。それを合図に若い軍人以外の人員は各々人が居る客席へ向かった。マコトは軍人に危険物は無いかと体と調べられている間、残っている二人の軍人を見る。若い軍人が初老の軍人に詰め寄り、険しい表情で何かを言っていた。初老の軍人は呆れた様に肩を竦めた後、若い軍人の胸板を軽く指で突いた。最初は若い軍人が仕切っている様に見えたが、実際は初老の男性の方が上官らしい。
‐そういえば・・・‐
初老の軍人の日本語。流暢で聞き取りやすかったが、マコトは微妙な違和感を覚えた。何が引っ掛かっている。発せられた言葉とは別の、どこか仕草や動作的な所で。
「OK。」
身体検査を終わらせた軍人に不意に腕を軽く叩かれ、マコトの思考は遮られた。中央の通路に出ながら、ふと、周りの様子を伺う。老夫婦やハルカ、スズネ達は終わっていて、各々‐少し怯えた様子を見せながらも‐中央の通路で待機していた。先に終わりに通路に出ていたノブヒトは大きく背伸びをしている。ユウヤも身体検査が終わり、マコトの後に続く形で通路に出てきた。最後の中年男性の‐妙に念入りな‐身体検査が終わり、マコトと同じく腕を軽くたたいた後、軍人は元居た操舵室の方面へ戻って行く。自分から離れていく軍人を、忌々しそうに睨みつけながらも、少し崩れた襟を正しながら中年男性は中央の通路に出る。
「よし、次は私を含めた3名と操舵室側の二名の間に挟まれるような形で1列になり、私たち三名の先導でシャトルから降りて外に出る。何かあれば我々が迅速に対応するので、気兼ねなく、気軽に声を掛けてくれ。では、移動を開始する。」
‐そうか、「口の動き」か‐
マコトは軍人に抱いていた違和感の正体に気づいた。最初は突然出てきた流暢な日本語に驚いてあまり見ていなかったが、よくよく思い出してみると、口の動きと発声が合っていない。マコトの思考は時をさらに遡り、初老の軍人が首に付けているチョーカーに注目した。アレのボタン部分に触った後、初老の軍人は日本語をしゃべり始めた。恐らくアレは変声機なのだろう。しかし、あんなモノが開発されていたなんて聞いたこともない。対応している言語は解らないものも、容易く言語の壁を越えられる変声機の開発に成功しているなんて、普通だったらもっと大々的に取り上げられるはずだ。
‐もしかしてまだ試作段階かなんかだろうか?機能としては今のままでも申し分ないが・・・‐
巨鳥や騎士、変声機といい、未知のモノが多すぎる。そうマコトは思いつつ、動き始めた列に合わせて歩き始めた。
『エアロック閉扉及びシャトル固定確認、重力場適応開始。』
マコトは肘掛けにしがみつきながら、聞こえてきた音声に耳を傾ける。
‐なんだ?英語?‐
音声の意味を考えようとするマコトだったが、状況はそんな暇を与えてくれず、今度は体が次第に怠くなっていく感覚に襲われる。いや、怠くなっているのではない、重くなっているのだ。体に重力が戻ってきている。試しに軽く腿に力を入れて足を上げた後、力を抜いてみた。足はそのまま宙に浮かばず、ストンと踵を床につけた。小規模ながら重力を発生させる装置があるのは知っていたが、客室をカバーできる範囲までの装置が存在しているのは知らなかった。もしかしたら、もっと広い範囲をカバーしているかもしれない。マコトは驚きで目を丸くしていた。
「うーん、なんか地球に戻ってきた様な感じだねぇ。」
背伸びをしながらノブヒトは大欠伸をした。ノブヒトの呑気な言葉を聞いたユウヤは、溜め息を吐き、
「先生も結構大物だよな・・・。全く、何されるかわかったもんじゃないのに。」
呆れた様にボソっと呟く。その口ぶりから察するに、ユウヤもシャトルが〝何〟に連れられて、〝何処〟に向かっていたか分かってきたらしい。ユウヤは天を仰ぎながら、また大きく天を仰ぐ。まだ照明が復旧していないシャトルの中。少しでも落ち着こうとユウヤは目を瞑り静かに深呼吸をする。マコトは携帯端末が治っていないか、色々と弄りつつ、耳を澄まして周りの音に気を配る。「おいおいこれからどうなるんだ?」「知らないわよ。」「クソ、今なにが起きているんだ」。乗客が不安を訴える声の中から、少々遠くの方からタイヤが路面を走る音が聞こえてきた。音は一定距離まで近づいてくると、少しずつ小さくなっていき、やがて完全に止まった。その後、ガチャガチャと何かを装着する音が聞こえる。マコトは「なんだ?」と顔をしかめると、急にクラクションの音が数回鳴り、機内が左右に揺れ始めた。恐らく牽引用の車両か何かに引っ張られているだろう。マコトはそう考えながら、揺れる機内の中を壁やノブヒトにぶつからない様に必死に肘掛けに掴まって体勢を維持した。揺れる度に小さく悲鳴が上がるのを機にせず、シャトルが運ばれている先には何が待ち受けているのかを、マコトは思考する。
民間のシャトルが居るのにも関わらず、戦闘行為を行う。軍についての評判はあまり聞いたことはないが、全世界でも圧倒的な武力を持っていることは確かだ。と、言っても内戦やテロを含めた戦闘行為等、全世界で55年間一度も起きてはいないから、どれほどの戦力なのかは図れないが。
‐無理やりシャトルの扉をこじ開けて。力づくで外まで連れていかれて。外に出たらクン人に囲まれていて。「機密を見たな!貴様らを銃殺する!」・・・は、流石に無いか‐
マコトは苦笑すると、突然揺れが止まり、その衝撃からマコトは前につんのめる。それと同時に客室の照明が点き、いきなり周囲が明るくなった。
「復旧した!?こんなタイミングで?」
客室の暖かな照明も、暫く暗闇の中に居たマコト達には眩しすぎ、思わず目を細める。照明が復旧したことに喜ぶのも束の間、客席の後方からボンッと小さな爆発音。そして聞こえた数名の足音。客席の全員は後方に注目し、身構えようとしたが、その隙も与えられず。後方の自動ドアが開き、5名の男性が入ってきた。着ているのは青黒い服。技州国の軍服だ。手には人体工学に基づいた形状の軽機関銃・・・サブマシンガンが握られており、その銃口を客室の一人一人へ向けている。
『全員、その場を動かずゆっくり両手を挙げながら立て!いいな、ゆっくりだ!』
英語だ。先頭に居た一番若い軍人が何か叫んでいた。何を言っているのか詳しくは分からないが、凡そこの状況化で言うことは決まっている。突如乗り込んできた軍人たちに怯えるも、マコトは立ちながら両手を挙げつつ、ちらっと周りを見渡し、他の乗客の様子を伺う。殆ど乗客‐ハルカも‐は恐怖で顔が引きつっている。ある程度覚悟をしていたであろうユウヤでさえ、顔が強張っていた。軍人たちに一番近いスズネは、泣きそうな子どもをなだめながら、手を挙げるよう優しく促しつつ自分もゆっくりと手を挙げた。しかし、子どもの前で気丈に振舞おうとしても、挙げられた両手は恐怖で小刻みに震えていた。ノブヒトだけ笑みを崩さず、ニコニコしながら両手を挙げている。
『おい!そこの男!キョロキョロするな!』
周りの様子を伺っていたのがバレたのか、若い軍人の銃口がマコトに向けられる。マコトは小さく飛び上がり、向けられた銃口に恐怖しつつも背筋をピンっと伸ばし、軍人たちを真っすぐ見つめた。全員が手を挙げたのを確認すると、若い軍人が前の手を振り、それを合図に斜め後ろの二人の軍人が小走りで中央の通路を駆け、操舵室へ向かって行く。二人が操舵室への階段を上ったのを確認すると、若い軍人は銃を構え直し何かを言おうと口を開いた。が、真後ろに居た落ち着いた雰囲気を纏っている初老の軍人に肩を叩かれ制止させられた。若い軍人が振り返ると、初老の軍人は首を横に振り、もう一度肩を叩いて若い軍人の前に出る。初老の軍人は銃を降ろし、首についているチョーカーに付いているボタンを軽く触る。そして軽く頷いた後、客室に居る一人一人に視線を向けながら口を開いた。
「皆様、まずは我々技州国の問題に巻き込み、そしてこういった脅すような高圧的手段、及び態度をとってしまい、まずお詫び申し上げたい。」
英語を話していた若い軍人とは違い、初老の軍人から出た言葉は日本語であった。それも、覚えたてなどではなく、日本人が自然に話すような流暢な日本語。CAであるハルカを含めた客室の全員が驚く中、初老の軍人は続ける。
「我々の目的は、皆様を戦闘の影響で漂流していたシャトルから救助する事だ。決して身を危険に晒すような真似はしないので安心してほしい。救助を円滑に進める為には、我々の指示に従ってもらう必要がある為、何卒、ご協力の程よろしく頼む。」
初老の軍人は深々と頭を下げた。後ろに下がった若い軍人は何かを言おうと初老の軍人に詰め寄ろうとしたが、初老の軍人は片手で若い軍人の動きを制止した。初老の軍人は頭を上げると、安心させる様に笑みを作る。
「大丈夫。先程も言ったが、我々は皆様の敵ではない。決して害を及ぼさないことを、技州国軍人として、誓う。」
初老の軍人は操舵室への階段をちらりと見る。丁度二人の軍人に連れられて沢渡と副機長が下りてきた所だった。
「よし、皆様、まずは軽くボディチェックし、それから中央の通路に出て頂きたい。慌てず、ゆっくりだ。荷物は後で取りに行けるようにするので心配しなくていい。」
初老の軍人は、片手を挙げる。それを合図に若い軍人以外の人員は各々人が居る客席へ向かった。マコトは軍人に危険物は無いかと体と調べられている間、残っている二人の軍人を見る。若い軍人が初老の軍人に詰め寄り、険しい表情で何かを言っていた。初老の軍人は呆れた様に肩を竦めた後、若い軍人の胸板を軽く指で突いた。最初は若い軍人が仕切っている様に見えたが、実際は初老の男性の方が上官らしい。
‐そういえば・・・‐
初老の軍人の日本語。流暢で聞き取りやすかったが、マコトは微妙な違和感を覚えた。何が引っ掛かっている。発せられた言葉とは別の、どこか仕草や動作的な所で。
「OK。」
身体検査を終わらせた軍人に不意に腕を軽く叩かれ、マコトの思考は遮られた。中央の通路に出ながら、ふと、周りの様子を伺う。老夫婦やハルカ、スズネ達は終わっていて、各々‐少し怯えた様子を見せながらも‐中央の通路で待機していた。先に終わりに通路に出ていたノブヒトは大きく背伸びをしている。ユウヤも身体検査が終わり、マコトの後に続く形で通路に出てきた。最後の中年男性の‐妙に念入りな‐身体検査が終わり、マコトと同じく腕を軽くたたいた後、軍人は元居た操舵室の方面へ戻って行く。自分から離れていく軍人を、忌々しそうに睨みつけながらも、少し崩れた襟を正しながら中年男性は中央の通路に出る。
「よし、次は私を含めた3名と操舵室側の二名の間に挟まれるような形で1列になり、私たち三名の先導でシャトルから降りて外に出る。何かあれば我々が迅速に対応するので、気兼ねなく、気軽に声を掛けてくれ。では、移動を開始する。」
‐そうか、「口の動き」か‐
マコトは軍人に抱いていた違和感の正体に気づいた。最初は突然出てきた流暢な日本語に驚いてあまり見ていなかったが、よくよく思い出してみると、口の動きと発声が合っていない。マコトの思考は時をさらに遡り、初老の軍人が首に付けているチョーカーに注目した。アレのボタン部分に触った後、初老の軍人は日本語をしゃべり始めた。恐らくアレは変声機なのだろう。しかし、あんなモノが開発されていたなんて聞いたこともない。対応している言語は解らないものも、容易く言語の壁を越えられる変声機の開発に成功しているなんて、普通だったらもっと大々的に取り上げられるはずだ。
‐もしかしてまだ試作段階かなんかだろうか?機能としては今のままでも申し分ないが・・・‐
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