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夢の話
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夢――眠っている間に、現実にない事象の感覚を起こすこと。辞書にはそんな風に記されていた。
現実のものではない、眠っている自分の脳内に流れ出る短い映画のようなもの。あたかも自分がその場にいるような感覚があろうと所詮は夢、実際に起こることはあり得ない。
けれど、時々心の中が恐怖という感情一色に染まってしまう時がある。夢の中にいる自分の心情とやっているがあまりにも現実のもののように思えて、目覚めた後も恐ろしいくらい自分の体に実感が残っている。
もう何回この夢を見ただろう。
心が壊れて思考回路も機能しなくなった自分が、たった一発の鉛玉で愛しているはずの人を殺して、最終的には自分にも銃口を突きつけて。
自分の頭部に向かって引き金を引く前にはいつも目覚めているけれど、その後の自分の体には確かに残ってしまっている。殺した後の感覚が残ってしまっている。
外に出れば、その人は生きている。けれど、夢の中ではいつも自分が殺して死んでいる。
現実味のある夢に現実までも蝕まれて、どちらが現実なのか分からなくなる。あの人は生きているのだろうか、死んでいるのだろうか。
もしくは、あれは俗に言う予知夢というものなのだろうか。いつか、自分はあの人を殺して自分も死のうとしてしまうのだろうか。
とんだ心中劇だ。来世で幸せになろうね、なんて夢物語を実行するつもりなのか。来世というものが存在するかどうか確証もないというのに、我ながら冷笑ものだ。
あの時の自分は何を思ってあの人の命を奪い取っていたのだろう。楽しかっただろうか、悲しかっただろうか、それとも何も感じなかったのだろうか。
今の自分にとっては、いつか訪れるかもしれない未来の事象と思うと恐怖でしかないけれど、いざその場に立ったら自分はどんなことを考えてしまうのだろうか。
夢の中はいつも灰色で、唯一鮮明に画面を彩るのは鮮血の紅色だけだった。
けれど、外に出れば青く晴れ渡った空の色。眩いほど純粋な青に、夢との懸隔に、目が眩んでしまいそうだ。
現実のものではない、眠っている自分の脳内に流れ出る短い映画のようなもの。あたかも自分がその場にいるような感覚があろうと所詮は夢、実際に起こることはあり得ない。
けれど、時々心の中が恐怖という感情一色に染まってしまう時がある。夢の中にいる自分の心情とやっているがあまりにも現実のもののように思えて、目覚めた後も恐ろしいくらい自分の体に実感が残っている。
もう何回この夢を見ただろう。
心が壊れて思考回路も機能しなくなった自分が、たった一発の鉛玉で愛しているはずの人を殺して、最終的には自分にも銃口を突きつけて。
自分の頭部に向かって引き金を引く前にはいつも目覚めているけれど、その後の自分の体には確かに残ってしまっている。殺した後の感覚が残ってしまっている。
外に出れば、その人は生きている。けれど、夢の中ではいつも自分が殺して死んでいる。
現実味のある夢に現実までも蝕まれて、どちらが現実なのか分からなくなる。あの人は生きているのだろうか、死んでいるのだろうか。
もしくは、あれは俗に言う予知夢というものなのだろうか。いつか、自分はあの人を殺して自分も死のうとしてしまうのだろうか。
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今の自分にとっては、いつか訪れるかもしれない未来の事象と思うと恐怖でしかないけれど、いざその場に立ったら自分はどんなことを考えてしまうのだろうか。
夢の中はいつも灰色で、唯一鮮明に画面を彩るのは鮮血の紅色だけだった。
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