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Insane girl
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(父親に狂わされた少女の話 ※近親相姦表現あります)
不憫な小娘の話。
ある世界に、それはそれは幸せな家族がいた。
父親と母親に、娘が一人。
貧しくもなく、かといって特別金があるわけでもない、ごく普通の家庭だった。
が、それでも家族はとても幸せだった。
素朴な料理の並んだ食卓で、いつも笑い合っている家族だった。
少女はそれで良かった。
親と母親と、三人で楽しく暮らせる。それだけで良かった。
特別金がなくても、好きな人がいなくても、それだけで満足していた。
いつまでもこの時間が続いてくれればと、毎晩ベッドの中で祈りながら眠りについていた。
だが、日々積み重ねてきた祈りも全て無に還る悲劇が起きた。
少女の母親が病魔に襲われ。必死に闘病するも虚しく、母親は夫と娘を亡くし、この世を去ってしまった。
残された父親と娘。
父親は、妻を深く愛し、彼女にいつでも寄り添っていた。
そんな彼女を失ったら父親の悲しみはどこまでも深く、底知れないものだった。
悲しみに包まれた父親の背中を見た娘は、母親の分も父親を支えようと強く決意していた。
けれど、彼女が父親を支えられたのはほんの数日だけだった。
彼女が思った以上に、父親の妻に対する愛情は深く、最早狂気といっても過言ではなかった。
娘は母親にそっくりだった。
父親はそんな娘に父親としての愛情も注ぎつつ、妻の代わりとしても彼女を愛するようになってしまった。
娘は抵抗をしていた。妻の代わりとしても自分を愛している父親に恐怖し、何度も家を抜け出そうと必死だった。
けれど、父親から逃れることは出来なかった。
自分以外の男が娘に触れることを、父は嫌がった。
まるで妻が他の男に触れられているようだと、父親は言っていた。
ある時娘は閉じ込められ、毎夜父の手で遊ばれるようになった。
父は妻にそっくりな娘を愛しているつもりだった。だが娘の目に映るのは父親ではなく、最早愛に狂った獣のような男でしかなかった。
日を重ねるごとに壊れていく娘の心。
崩壊した娘は刃を持ち、父親をその手で葬り去った。
彼女はやっと自由を手にし、幸せと悪夢の詰まった家を出た。
けれど、それ以来彼女は男が自分の手に触れることをなによりも恐れ、嫌うようになった。
そして彼女自身が狂い始めたのも、あの日々から解放されてからだった。
彼女は自分のことが段々とわからなくなっていた。
自分の年齢も、自分が何をしているのかも、何がしたいのかも。
忘れているのか知らないのか、彼女に尋ねたところで最早それは時間の無駄以外の何でもない。
彼女が唯一他人に教えられるのは、「ロコ」という名以外なのだから。
不憫な小娘の話。
ある世界に、それはそれは幸せな家族がいた。
父親と母親に、娘が一人。
貧しくもなく、かといって特別金があるわけでもない、ごく普通の家庭だった。
が、それでも家族はとても幸せだった。
素朴な料理の並んだ食卓で、いつも笑い合っている家族だった。
少女はそれで良かった。
親と母親と、三人で楽しく暮らせる。それだけで良かった。
特別金がなくても、好きな人がいなくても、それだけで満足していた。
いつまでもこの時間が続いてくれればと、毎晩ベッドの中で祈りながら眠りについていた。
だが、日々積み重ねてきた祈りも全て無に還る悲劇が起きた。
少女の母親が病魔に襲われ。必死に闘病するも虚しく、母親は夫と娘を亡くし、この世を去ってしまった。
残された父親と娘。
父親は、妻を深く愛し、彼女にいつでも寄り添っていた。
そんな彼女を失ったら父親の悲しみはどこまでも深く、底知れないものだった。
悲しみに包まれた父親の背中を見た娘は、母親の分も父親を支えようと強く決意していた。
けれど、彼女が父親を支えられたのはほんの数日だけだった。
彼女が思った以上に、父親の妻に対する愛情は深く、最早狂気といっても過言ではなかった。
娘は母親にそっくりだった。
父親はそんな娘に父親としての愛情も注ぎつつ、妻の代わりとしても彼女を愛するようになってしまった。
娘は抵抗をしていた。妻の代わりとしても自分を愛している父親に恐怖し、何度も家を抜け出そうと必死だった。
けれど、父親から逃れることは出来なかった。
自分以外の男が娘に触れることを、父は嫌がった。
まるで妻が他の男に触れられているようだと、父親は言っていた。
ある時娘は閉じ込められ、毎夜父の手で遊ばれるようになった。
父は妻にそっくりな娘を愛しているつもりだった。だが娘の目に映るのは父親ではなく、最早愛に狂った獣のような男でしかなかった。
日を重ねるごとに壊れていく娘の心。
崩壊した娘は刃を持ち、父親をその手で葬り去った。
彼女はやっと自由を手にし、幸せと悪夢の詰まった家を出た。
けれど、それ以来彼女は男が自分の手に触れることをなによりも恐れ、嫌うようになった。
そして彼女自身が狂い始めたのも、あの日々から解放されてからだった。
彼女は自分のことが段々とわからなくなっていた。
自分の年齢も、自分が何をしているのかも、何がしたいのかも。
忘れているのか知らないのか、彼女に尋ねたところで最早それは時間の無駄以外の何でもない。
彼女が唯一他人に教えられるのは、「ロコ」という名以外なのだから。
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