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朝のいたずら(※)
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※まだ未確定な未来の話
※蛍、影人君ともに成人済み・同棲設定です
ボクが朝早く起きると、影人さんは決まってまだ夢の中にいる。彼はいつでもお寝坊さんだ。
(今日も起きるのは昼過ぎかなぁ)
ボクらが高校卒業してから、数年。一緒のアパートに住み始めてから、充実した毎日を過ごしていた。
影人さんが、手を伸ばせばすぐに届く距離にいる。それが毎日続くことの、なんと幸せなことだろう。
何気ない日常のひとときも、影人さんがいるだけで特別なものに変わる。この距離感が当たり前になった日々は、今までで一番幸せで。
(それにしても……やっぱり、寝顔も綺麗だなぁ)
高校生のうちから超絶美少年だった影人さんは、大人になってからも劣化することはなく……
いや、それどころかますます磨きがかかり、毎日見てるボクですら見惚れるほど綺麗な男性に成長した。
テレビで有名な男性モデルだって、影人さんを目の前にすればきっと裸足で逃げるはずだ。
「……朝ですよ、影人さん」
小さな声で囁きながら、影人さんの頬をつつく。もちろん、完全に寝入っている彼は微動だにしない。
お寝坊さんな影人さんは、ちょっとやそっとのちょっかいだけでは目覚めない。
ましてや、今日は二人して休日。そうとなれば、余計に起きようとは思わないだろう。
(とはいっても……このまま寝て休日が終わっちゃうのはなぁ)
勤務形態の違いから、休日が被ることはなかなかに稀だ。今日という日くらい、デートの一つはしたい……と思ってるのは、ボクだけだろうか。
そうだとしたら、少し寂しい。
「起きないと、イタズラしちゃいますよ~」
いつもなら、布団を剥がして無理やり起こしているのだけれど……今日は、なんとなくそんな気分にはなれなかった。
多分、いつも影人さんにされているからだろうか。無防備な影人さんを見て、ほんの少しだけイタズラ心が芽生えてしまったのかもしれない。
体を起こし、影人さんにそっと顔を寄せる。反応は、まだない。
僅かに隙間の開いた唇に自分のそれを重ね、少し息を塞いでみる。
(……まだ起きないのかな)
王子様のキスで目覚めました、っていうのは、童話ではよくある話だけれど……ここは現実、影人さんには通用しないようだ。
顔を離して、目についたのは少し開いた口元。もう一度唇を重ね、そっと舌を差し込んだ。
舌を絡め合う音が、静かな室内に響きわたる。思考回路が甘く蕩けそうなほどの感覚に、呼吸を忘れてしまいそうだ。
夢中になればなるほど、苦しくなる。こんなキスをされれば、さすがに少しは起きるだろう。
そう思いながら舌を引っ込め、唇を離す。息を整えながら影人さんの顔を見下ろすと──
(ま、……まだ……?)
──影人さんは、まだ眠っていた。
少しは苦しかったのか先ほどより息は荒く、頬も熱を持っている。けれど、目は閉じたまま。
抗議をするでも抵抗するでもなく、特に大きな反応を示さない。
(手強いなぁ……)
キスでもダメなら、と……今度は服を捲り上げる。痣や傷の残った体に、そっと唇を寄せた。
首筋、鎖骨、胸元……時々吸いついたり舌で舐めたりしてみても、影人さんは起きる様子を見せない。
びくんと、少し体を震わせるだけで。
(あぁ、でも…)
(……ちょっと可愛い、かも)
これだけされても起きない、無防備な影人さん。いつもはされてばかりのボクだからだろうか、気づけば「楽しい」という感情が湧き出ていた。
未だ目を開けない影人さんの体に手を這わせ、肋骨をそっと人差し指で撫でる。
「ん、……っ」
眉を顰め、小さな声が漏れる。その声がもっと聞きたい、そう思った時には耳に顔を近づけていた。
いつもボクがされてるように、耳をなぞるように舌を這わせ。時々、耳たぶをゆるく噛む。
そうして影人さんの喉から漏れる甘い啼き声に、じわじわと熱が高ぶっていく。
(……というか、ここまでやられて起きないってどういう神経なんだろう)
睡眠薬を飲んでるわけでもなかろうに。これだけ刺激を与えられても爆睡してるって、どんな神経なんだろうか。
影人さんを起こすために必死になっているのか、それとも奥底から湧き出た欲を満たすために必死になっているのか──だんだんと境目が曖昧になりつつも、ボクは続けた。
体のラインをなぞるように動かしていた手を下へ移動させ下着越しに影人さん自身をつっついてみる。
「っはぁ……あ……」
耳腔に舌を入れつつ、下着の中に手を差し入れて影人さんの自身を握る。上下に擦るようにゆっくりと手を動かせば、影人さんの体が弓なりに沿ってびくんびくんと大きく震える。
「影人さん……いい加減、起きてください」
影人さんの耳元で囁きつつ、手を早める。影人さんの瞼が開くことはなく、目を瞑ったまま小さく声を漏らすだけ。
吐息混じりの甘だるい声、紅潮した頬。抵抗もせずあまりに無防備すぎる姿に、手が止まらない。
「はっ……あっ、んっ……」
影人さんの自身が、硬くなっていく。ボクの手で熱を上げていく影人さんの姿に、ボク自身もどんどん気持ちが上がっていく。
高校生の頃、彼の援交相手だった女子たちは影人さんにここまで熱を上げさせることができただろうか。
もし、今も昔もボクだけだったら。……そう考えれば考えるほど、彼への愛おしさが止まらない。
「……出していいですよ、影人さん」
膨張しきった影人さん自身を扱きながら、耳元で囁く。それに答えるかのように、影人さん自身の先端からどくんどくんと欲が吐き出された。
ボクの手の中で震える影人さんの自身に、加虐心を煽られたのだろうか。眠ったまま快楽に喘ぐ影人さんに、もっと触れたいと思ってしまう。
(……。でも、なぁ)
そっと下着から手を引き抜き、布団に潜り込む。端正な顔立ちを赤く染められたことに、異様な優越感を感じてしまう。
だからこそ、こういう時のボクは汚らしい欲に駆られてしまうのだけれども。
(寝込みを襲うのは、やっぱり気が引ける)
ここまで仕掛けても起きない影人さんも大概だが、いい加減ボクだって大人なのだ。高校生の頃のように、欲のままするのは大人げないだろう。
(……どうせなら一方的じゃなくて、起きてる影人さんと言葉を交わして──)
「……ねぇ、もう終わり?」
「えっ!?」
眠っている……はずだった彼の声が、ボクの耳に届く。顔を見てみれば、閉じていたはずの赤い瞳が僅かに開かれていた。
荒い息づかいと紅潮した頬は、そのままだけれど。
「ね、寝てたはずじゃ……」
「実は起きてた」
「えっ!? い、いつから……っていうか、どこから!?」
「いたずらしちゃいますよ~、って言ってたところから……」
「ほとんど最初からじゃねーかコンチクショウ!!」
ということは、今の今までずっと寝たふりをされてたということか。
寝ていると思いこんで手を進めていた自分が、本当に恥ずかしい。いっそ殺してくれと心底叫んでしまいそうになる。
「……で」
「な、何です?」
「俺、まだ物足りないんだけど……」
もぞもぞと布団の中で手を動かし、ボクの陽物に触れてくる。一瞬の快楽に、ボクの体がびくりと反応した。
無表情を描く瞳が、ほんの僅かに歪んでいる。
うっすらと浮かべられた笑みが、囁くようにボクを見つめていた。
「……朝からいいんですか?」
「仕掛けておいてよく言うよ」
「アナタが起きないのが悪いんですよ? ……あとで腰痛いとか喚かないでくださいね」
ボクを快楽に落とそうとする唇を、もう一度塞いだ。
※蛍、影人君ともに成人済み・同棲設定です
ボクが朝早く起きると、影人さんは決まってまだ夢の中にいる。彼はいつでもお寝坊さんだ。
(今日も起きるのは昼過ぎかなぁ)
ボクらが高校卒業してから、数年。一緒のアパートに住み始めてから、充実した毎日を過ごしていた。
影人さんが、手を伸ばせばすぐに届く距離にいる。それが毎日続くことの、なんと幸せなことだろう。
何気ない日常のひとときも、影人さんがいるだけで特別なものに変わる。この距離感が当たり前になった日々は、今までで一番幸せで。
(それにしても……やっぱり、寝顔も綺麗だなぁ)
高校生のうちから超絶美少年だった影人さんは、大人になってからも劣化することはなく……
いや、それどころかますます磨きがかかり、毎日見てるボクですら見惚れるほど綺麗な男性に成長した。
テレビで有名な男性モデルだって、影人さんを目の前にすればきっと裸足で逃げるはずだ。
「……朝ですよ、影人さん」
小さな声で囁きながら、影人さんの頬をつつく。もちろん、完全に寝入っている彼は微動だにしない。
お寝坊さんな影人さんは、ちょっとやそっとのちょっかいだけでは目覚めない。
ましてや、今日は二人して休日。そうとなれば、余計に起きようとは思わないだろう。
(とはいっても……このまま寝て休日が終わっちゃうのはなぁ)
勤務形態の違いから、休日が被ることはなかなかに稀だ。今日という日くらい、デートの一つはしたい……と思ってるのは、ボクだけだろうか。
そうだとしたら、少し寂しい。
「起きないと、イタズラしちゃいますよ~」
いつもなら、布団を剥がして無理やり起こしているのだけれど……今日は、なんとなくそんな気分にはなれなかった。
多分、いつも影人さんにされているからだろうか。無防備な影人さんを見て、ほんの少しだけイタズラ心が芽生えてしまったのかもしれない。
体を起こし、影人さんにそっと顔を寄せる。反応は、まだない。
僅かに隙間の開いた唇に自分のそれを重ね、少し息を塞いでみる。
(……まだ起きないのかな)
王子様のキスで目覚めました、っていうのは、童話ではよくある話だけれど……ここは現実、影人さんには通用しないようだ。
顔を離して、目についたのは少し開いた口元。もう一度唇を重ね、そっと舌を差し込んだ。
舌を絡め合う音が、静かな室内に響きわたる。思考回路が甘く蕩けそうなほどの感覚に、呼吸を忘れてしまいそうだ。
夢中になればなるほど、苦しくなる。こんなキスをされれば、さすがに少しは起きるだろう。
そう思いながら舌を引っ込め、唇を離す。息を整えながら影人さんの顔を見下ろすと──
(ま、……まだ……?)
──影人さんは、まだ眠っていた。
少しは苦しかったのか先ほどより息は荒く、頬も熱を持っている。けれど、目は閉じたまま。
抗議をするでも抵抗するでもなく、特に大きな反応を示さない。
(手強いなぁ……)
キスでもダメなら、と……今度は服を捲り上げる。痣や傷の残った体に、そっと唇を寄せた。
首筋、鎖骨、胸元……時々吸いついたり舌で舐めたりしてみても、影人さんは起きる様子を見せない。
びくんと、少し体を震わせるだけで。
(あぁ、でも…)
(……ちょっと可愛い、かも)
これだけされても起きない、無防備な影人さん。いつもはされてばかりのボクだからだろうか、気づけば「楽しい」という感情が湧き出ていた。
未だ目を開けない影人さんの体に手を這わせ、肋骨をそっと人差し指で撫でる。
「ん、……っ」
眉を顰め、小さな声が漏れる。その声がもっと聞きたい、そう思った時には耳に顔を近づけていた。
いつもボクがされてるように、耳をなぞるように舌を這わせ。時々、耳たぶをゆるく噛む。
そうして影人さんの喉から漏れる甘い啼き声に、じわじわと熱が高ぶっていく。
(……というか、ここまでやられて起きないってどういう神経なんだろう)
睡眠薬を飲んでるわけでもなかろうに。これだけ刺激を与えられても爆睡してるって、どんな神経なんだろうか。
影人さんを起こすために必死になっているのか、それとも奥底から湧き出た欲を満たすために必死になっているのか──だんだんと境目が曖昧になりつつも、ボクは続けた。
体のラインをなぞるように動かしていた手を下へ移動させ下着越しに影人さん自身をつっついてみる。
「っはぁ……あ……」
耳腔に舌を入れつつ、下着の中に手を差し入れて影人さんの自身を握る。上下に擦るようにゆっくりと手を動かせば、影人さんの体が弓なりに沿ってびくんびくんと大きく震える。
「影人さん……いい加減、起きてください」
影人さんの耳元で囁きつつ、手を早める。影人さんの瞼が開くことはなく、目を瞑ったまま小さく声を漏らすだけ。
吐息混じりの甘だるい声、紅潮した頬。抵抗もせずあまりに無防備すぎる姿に、手が止まらない。
「はっ……あっ、んっ……」
影人さんの自身が、硬くなっていく。ボクの手で熱を上げていく影人さんの姿に、ボク自身もどんどん気持ちが上がっていく。
高校生の頃、彼の援交相手だった女子たちは影人さんにここまで熱を上げさせることができただろうか。
もし、今も昔もボクだけだったら。……そう考えれば考えるほど、彼への愛おしさが止まらない。
「……出していいですよ、影人さん」
膨張しきった影人さん自身を扱きながら、耳元で囁く。それに答えるかのように、影人さん自身の先端からどくんどくんと欲が吐き出された。
ボクの手の中で震える影人さんの自身に、加虐心を煽られたのだろうか。眠ったまま快楽に喘ぐ影人さんに、もっと触れたいと思ってしまう。
(……。でも、なぁ)
そっと下着から手を引き抜き、布団に潜り込む。端正な顔立ちを赤く染められたことに、異様な優越感を感じてしまう。
だからこそ、こういう時のボクは汚らしい欲に駆られてしまうのだけれども。
(寝込みを襲うのは、やっぱり気が引ける)
ここまで仕掛けても起きない影人さんも大概だが、いい加減ボクだって大人なのだ。高校生の頃のように、欲のままするのは大人げないだろう。
(……どうせなら一方的じゃなくて、起きてる影人さんと言葉を交わして──)
「……ねぇ、もう終わり?」
「えっ!?」
眠っている……はずだった彼の声が、ボクの耳に届く。顔を見てみれば、閉じていたはずの赤い瞳が僅かに開かれていた。
荒い息づかいと紅潮した頬は、そのままだけれど。
「ね、寝てたはずじゃ……」
「実は起きてた」
「えっ!? い、いつから……っていうか、どこから!?」
「いたずらしちゃいますよ~、って言ってたところから……」
「ほとんど最初からじゃねーかコンチクショウ!!」
ということは、今の今までずっと寝たふりをされてたということか。
寝ていると思いこんで手を進めていた自分が、本当に恥ずかしい。いっそ殺してくれと心底叫んでしまいそうになる。
「……で」
「な、何です?」
「俺、まだ物足りないんだけど……」
もぞもぞと布団の中で手を動かし、ボクの陽物に触れてくる。一瞬の快楽に、ボクの体がびくりと反応した。
無表情を描く瞳が、ほんの僅かに歪んでいる。
うっすらと浮かべられた笑みが、囁くようにボクを見つめていた。
「……朝からいいんですか?」
「仕掛けておいてよく言うよ」
「アナタが起きないのが悪いんですよ? ……あとで腰痛いとか喚かないでくださいね」
ボクを快楽に落とそうとする唇を、もう一度塞いだ。
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