稲生物怪録 つづきの話 〜 五十年目の約束〜

保田 明日

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序章

怪異の終幕

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「 この神器を一度ふるえば、どのような危難にまみえようとも其方の身を救うであろう。例え我が怨敵 ●●●●●●●も敵うまい。もし、彼奴めが襲ってくるようなことがあれば、迷わずこの神器を使うがよい。但し、五十年を過ぎるまでは口外法度。ゆめゆめ忘れるでないぞ」

 自らを魔王と称する裃を身につけた妖の親玉は、神さびた不思議な声色で平太郎にそう告げると、駕籠に乗り込み百鬼夜行と共に去っていった。
 
 こうして三十日間毎日続いた稲生家の怪異は幕を閉じた。

 縁側に伏して一行を見送った平太郎は
「五十年後と言えば六十六歳。この太平の世、神器を操って魔王と戦う老爺など正気の沙汰ではないな。これは納屋の床下にでも埋めておくとするか……」と独りごちて、親戚の中山家に預けていた幼い弟 勝弥かつやを迎えに行く前に、ありがたい神器を渋紙で包むと納屋へと向かった。

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