baby rabbit

雑田

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「どどどどうしよっ、気付かないうちに俺の乳首敏感になっちゃってたよおぉ…!!」
「ここ学校だけど大丈夫そ?」

学校、昼休み、屋上でお昼ごはん。
古からの定番のシチュエーションだ。
だが、今日は少し風が冷たいからか自分達以外に生徒はいないためナシよりのアリだろう。うん、大丈夫。

「そんなことより聞いてくれ有賀。今まで弟を寂しくさせないように俺のおっぱい吸わせてたんだけど敏感になりすぎて昨日ついに射精までするようになっちゃったんだ!」
「なんて?」

紙パックのイチゴオレを飲んでいた有賀が、若干引き気味に俺から距離を置きつつ聞き返してきた。
そんな有賀の態度をものともせず、しかしそれ以上離れられると会話が出来なくなってしまうので肩を掴んで引きとめる。

「だからぁ!凛にぃ!乳首吸われてイッちゃったのぉ!!」
「うるさいうるさい、耳元で叫ぶなっていうか聞こえなかったんじゃなくて言葉の意味が理解できないつってんのどうしてそうなった?」
「それは色々あって、凛が俺のおっぱい吸ったら安心するっていうから…」
「話が飛躍しすぎだし色々あってもそうはなんねえだろ」

心底意味分からんといった感じでこちらに訝しむ目を向けてくる有賀に事の発端を話した。

それは2年前、父親が会社から海外赴任を命じられたのがきっかけだった。
1人で海外に飛び立とうとする父親とまだ小中学生であった俺たち兄弟を天秤にかけ悩みに悩んだ末、高を括った母親が生活能力がゴミクズすぎる父親についていくことを決めたのだ。
きっと1人で行かせては二度と生きて帰っては来れないだろうと満場一致で思わせるほど父親の生活能力は本当にゴミクズだったので、俺と凛は母親の意見に特に異論もなく快諾した。
家事や炊事に関しては元々手伝っていたこともあり、母親が近所で交流のあった人に何かあれば子ども達の助けになってもらいたいと頼んでくれたおかげもあって生活面での不便はなかった。
が、今までずっと同じ家で一緒に暮らしていた両親の姿が見えなくなったことに、まだ小学生だった凛は急に寂しくなったのだろう。
学校から帰ってもおかえりと迎えてくれた母親の声が聞こえない。
休日はうざったいくらい絡んできて嫌がる俺たちを無理やり散歩に連れて行こうとする父親の姿もない。
どことなく寂しさを纏った生活が続き、兄弟2人だけの夕飯を何度か繰り返したある日のこと、凛が突然目の前で泣き出したのだ。

「お、おにいちゃんっ、おかあさんも、おとうさんもいないの、さみしいよぉっ」
「り、凛っ?急にどうした!?父さんとも母さんとも昨日ビデオ通話で話したばっかりだろ?」
「ふたりとも家にいないのなんでぇ、っ、いつっ、帰ってくるのおっ」

堰が切れたようにひっくひっくとぐずり出す凛に、慌てて駆け寄り戸惑いながらも抱きしめてやる。
凛はあまりマイナスの感情を表に出すことは少なく、普段もどちらかといえば笑っていることの方が多い。
滅多なことでは泣かない凛がここまで悲しみに暮れていたとは知らず、子どもながらにしっかりしているし大丈夫だろうと勝手に決めつけていたことを悔いた。
両親が側に居ない分、自分が凛を気にかけて寂しさなんか感じないくらいめいっぱい可愛がってやらなければ。
その日から俺は、母さんに負けないくらいの包容力と父さんに負けないくらいのうざったさを思い浮かべ凛と接するようになった。
凛もまるで幼児返りしたかのように事あるごとに俺に甘えてきたので、可能な限りそのすべてに応えるべく凛を甘やかした。
そんな日々を過ごし、俺はとうとう凛に「紬お兄ちゃん、おねがい…?」と言われれば自分のおっぱいさえも差し出してしまうほどのブラコンへと成長したのだった。

「いや、だからなんで???」
「あ、ブラコンっていうとちょっと語弊があるかな…?飽くまで俺は母さんのような包容力を追求しておっぱいを」
「違う違う、途中まで良い話風だったじゃん。なんで急におっぱい差し出した?」
「おっぱいってお母さんぽくない?」
「お前の言ってること最初からずっと分かんねえんだけど」

おっかしいな~、これで大体伝わると思ったんだけどな~。
腕を組みながらうんうんと唸っていると、眉間の皺を狙ってデコピンをかまされた。

「いてっ」
「要するに、弟のお願い聞いてたら乳首が感じやすくなって困ってるからやめさせたいってこと?」
「うん。正確には、お母さんがしてたみたいにおっぱい吸わせてくれたら安心して寂しくなくなるかも、て言われて」
「お前それ……」
「俺も最初は抵抗したんだけど、まぁ男のおっぱいなんてたかが知れてるし」
「…………」
「どうせ数回もやったら飽きるだろうって思って」
「…………」
「でも飽きるどころかむしろ頻繁に吸ってくるし、だんだん吸うだけじゃなくて指で弄ったり軽く噛まれたりするようになってきて…」

少しの沈黙のあと、有賀が途中から飲み始めたイチゴオレのパックからズゴゴゴッと品のない音が鳴った。

「で、今に至ると」
「まさか乳首で射精するようになるなんて思わないじゃん…!!!」

飲み終わった紙パックを広げてきれいに畳んでいく。
やっぱ2ℓの方買っときゃよかったなーなどと呑気なことを言いながら、まったく相手にしてくれない有賀の胸ぐらを掴んで無理やり話を聞かせる。

「ねえ有賀、俺の乳首治る?乳首って縮むかなあっ?」
「そんな簡単に伸び縮みできるほど乳首だって暇じゃねえわ」
「そうだよね…俺の乳首、最近忙しいもんね…」
「こいつ本当アホだな。さて、教室戻るかー」
「あっ、ちょっと待って…!まだ俺の悩みは解決してないっ」

ごみをまとめて立ち上がろうとする有賀に慌ててしがみついた。
こうなったら現物を見せて事の重大さを伝えるしかない。さすがに実際に目の当たりにすれば有賀だって真剣に話を聞いてくれるはず!
俺は一切の躊躇なく制服のシャツとカーディガンをバッと捲り上げた。

「ひかえおろー!この乳首が目に入らぬか!」
「は? え、うわ、えろ乳首じゃん」
「あんっ」

目論見通り、急に眼前に晒された俺の乳首に食いついてきたこいつはあろうことか無遠慮にそこを摘んできたのだ。
当然そんなことをされると思っていなかった俺は、ただでさえ弱くなったノーガード乳首に突然の刺激を受け盛大に喘いでしまった。

「……………」
「……………」

お互いの間に流れる沈黙。
ひゅうと吹く冷たい風に撫でられた乳首は俺の許可なく勃ち上がっていく。
空気を読んでくれ乳首。
そんな空気の読めない乳首に育てた覚えはないぞ。育てられた覚えはあるけど。
急に恥ずかしくなって自分で見世物にした己の乳首をそっと仕舞おうとした。が、目の前のこいつに無情にも阻まれ、寒さのせいで著しい成長を遂げた俺の乳首がずっとこんにちはしている。

「こんにちはー」
「やめて!本当に挨拶しないで!居た堪れない…!!」
「なるほどなー、これは一大事だなー」
「あっ、ちょ…!えっ、友達の乳首、そんな気軽にさわってくるっ?」
「えー、ほら、実際に触ってみれば弟の気持ちも分かるかなと思って」
「な、なるほどぉ…?」

こいつさっきまで俺の話なんか聞こうとしなかったくせに、乳首見せた途端めちゃくちゃ乗り気じゃん。
なんだよ、最初からこうすればよかった。
いつものやる気のなさそうな表情に少しだけ真剣さが混じっているような気がして、触りやすいよう捲り上げた制服をそのまま留めておく。

「んッ、ゃ、ぅっ」
「………………」

男友達の乳首そんな弄り倒す?てくらい、ガン見されながら無言でこねくり回されてつい声が漏れ出てしまう。

「あ、有賀…!もう、とめてっ」
「うーん」
「な、なんかわかった…?」
「あー、お前の弟って歳いくつ?」
「中学入ったばっかだけど」
「中学生かあ」

いきなり凛の年齢を聞いてきたかと思ったら何かを悟った顔をする有賀。
さすがに寒いし腕も疲れてきたので制服の裾を下ろしたいのだが、動きだけが止まった有賀の手は一向に乳首を離す気配がない。
仕方がないので、諦めて冷えたお腹を自分の腕で覆った。

「どうやったら凛にやめてもらえるかな。それとも落ち着くまでは乳首には犠牲になってもらうしかないのか…」
「とりあえず俺も吸ってみていい?」
「話聞いてた?」
「えー、ほら、実際に吸ってみれば弟の気持ちも分かるかなって」
「それさっきも言ってたよね?分かってないよね??」

分かってるってー、と軽い調子で返してくる有賀には不信感しかない。けど、こんな相談ほかの友達にはできないし頼みの綱はこいつだけ。

「腑に落ちないけど、致し方ない…」
「おけ。んじゃ今日の放課後、紬ん家な」
「なんで有賀が決めてんの…?」

もしかしたら早まったかもしれないと思い始めた時、タイミングよく鳴った予鈴に思考を遮られる。
いそいそと教室に戻る準備をして立ち上がると、あ、と一音発して有賀が振り返った。
どうしたの?と問う前に俺の下半身を指差して何の気なしに奴は言い放った。

「授業始まる前にそれ、なんとかしてこいよ」

しっかり勃ってるのバレてたんかい。



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