好奇心はネコをころす

６

「ううぅ……いたい……」


光成はベッドの上で屍のように横たわっていた。

あれからしばらく無体を強いられ、聖紀の気がすむまで嫌というほど身体を貪られた。
やっと手錠を外してもらえたと思ったら、ありとあらゆる汁が飛び散ったびちゃびちゃな床の上に寝転がされて犯され。
背中が痛いと喚けば四つ這いにされて後ろからガツガツ犯され。
腕で自分の身体を支える力も無くなり床に伏せるような状態になっても犯され続けて。
ようやく気がすんだかとずっと中に埋まっていた肉棒を引き抜かれた瞬間、俵よろしく肩に担がれ向かった先は浴場で、そこでもまたあんあんと喘がされる羽目になったのだ。
その後、身体を綺麗にしてもらい髪を乾かしてベッドの上まで連れられて今に至るわけだが。
兄とはそれだけでここまで横暴が許される生き物なのかと、元々の原因が自分にあることを棚に上げ、ベッドの横に腰掛けている聖紀にめいっぱい恨みがましい目を向けた。


「なんだ」
「兄ちゃんのせいで全身痛い。喘ぎすぎて喉痛いし、いじられすぎてちんこも痛いし、ずっと手錠されてたせいで腕も痛いっ」
「腕は自分のせいだろ」
「け、けど、それ以外は全部兄ちゃんのせいだからな！なんであんなことしたんだよ」
「……なんでって、部屋の中からあんなエロい声聞こえてきて黙って素通りするわけねえだろ。扉開けたらお前がエロい顔でひんひん泣きながら喘いでるし、食ってくださいって言ってるようなもんじゃねえか」
「だからってこんな動けなくなるまで普通するっ？おかげで俺もうなんも出ませんけど！」


眉ひとつ動かさない聖紀の余裕っぷりを見ていると、まるでこちらが理不尽な怒りをぶつけているような気持ちになる。
正論を言っているのは光成のはずなのだが、すでに押し負けそうだ。


「でも死ぬほどよかったろ？」
「それは、まぁ、よかったけど…」
「ならいいじゃねえか、俺とお前の利害が一致して。解決解決」


タバコ買ってくるわ、といつもと変わらぬ調子で言い放ち聖紀はそのまま扉の外へと出ていった。


ぽかんと口を開けた光成は兄を見上げ、しかし何も発せないままその後ろ姿を見送っていた。
やがて、姿が消えてもなお扉の先に留まったままだった眼がうとうとし始めた頃。
そこでやっと光成は今更ながら当然の疑問に思い至ったのだ。


………兄弟ってセックスしていいんだっけ…？


ふわふわする思考の中では、アホを地でいく光成が懸命に考えたところで一生答えは出てこない。

兄に全てを絞り尽くされた可哀想な弟は、そもそも先に手錠を外してもらえばよかったことにも気づかず、微睡の中に意識を手放すのだった。