好奇心はネコをころす

３

しばらくすると慣れてきたのか麻痺してきたのか、微弱な振動に快感を拾いにくくなっていた。
変わらずふわふわとした気持ち良さはあるが、快感の逃し方を心得てきたのかもしれない。

かといって刺激を与え続けて感覚が鈍くなっても困る。
せっかくのチャンスなのだから、兄が帰ってくるまでの間めいっぱい楽しみたい。
アホだと思われるかもしれないが、お互い自室があるとはいえ2人暮らしのアパートなのだ。
普通のオナニーだったら抑えられる声も、こんな特殊なオナニーではそのうち勘付かれてしまうだろう。
兄がいないタイミングを見計らえば、次のチャンスは1週間後となってしまう。
ならば今日を楽しまねば！
凡そオナニーにかける熱量ではないのだが、やはり光成がアホたる所以はそこにあるのだろう。

そういうわけで、快感を一度リセットしようと光成はローターのスイッチを切ろうとした。のだが。


「あれ？さっきどっちに回したっけ…？」


この遠隔操作のローターは、スイッチを左右どちらかに回すことで強弱を決められる。
しかしアホな光成はここでもアホを発揮して、どちらに回してスイッチを入れたのか分からなくなってしまったのだ。


「まぁ、どっちでもいっか！回してみれば分かるだろ。この振動が弱なら、もし1段階強くなっても大丈夫なはず…」


そう言って光成は、カチリと音を立てひとつ右にスイッチを回した。


「あっ？ひ、ああぁっ、んあっ、～～～～っ！！！！」


瞬間、腰をびくんっ、と跳ねさせ白濁が散った。
同時に指先が滑り何かが転がり落ちた。

今しがた右と判断したのは失敗だった。
1段階上の振動の強さにスイッチを切る余裕もなく、2度、3度と腰を打ち震わせる。
予算の関係で安物のローターを選んだのがいけなかったのか。段階の強弱に差がありすぎではないだろうか。
達している最中、気を逸らすように別のことを考えようにも強い快感に意識が引き戻されてしまう。


「んんっ、あっ、あぅ、ぁああっ……！！」


先程放った白濁がとろとろとピンク色のローターにかかり、汚された仕返しとばかりに酷く敏感な部分を刺激し続けているように感じた。
射精してもなお続く振動にびくびくと震え、真っ赤に染まった亀頭の先で小さな穴がくぱくぱと蠢いている。
早くスイッチを切らねばと思い、手に持っていたはずのリモコンを指先で探すがまったく手応えがない。
焦って周囲を見渡すと、先程まで手の中にあったリモコンが何故か太ももの真横に落ちていた。


「あっ、ぁんっ、ぅ、うそだあぁぁ…っ」


いつ？なんで？？どのタイミングでっ？？？
これずっと続くの？？？いつまで？？？？
俺どうなっちゃうのっ？？？？？？？


ひんひんと泣きながら数十分前までの自分を呪った。
あぁ、だから俺は兄ちゃんにアホだって言われるんだ。
こんなアホなことしなきゃよかった。
事の発端となった忌まわしいAVから始まる記憶が走馬灯のように駆け巡る。

そして光成は、先程感じた不安感がなんだったのか今更というタイミングでようやく思い至ったのだ。