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二十八話 苦痛に歪む

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柚華は、吸鬼達を挑発し彼等の怒りを一身に背負ったその時、サイナメが描いた封印の魔法陣が完成する。

 サイナメ…

 そう、秘境の何処で、サイナメは誰にも気付かれ無い様に、最新の注意を払い息を凝らしただ黙々と、封印の魔法陣を幾重に重ね、キビのはるか上空に描いていた。

 空中に描かれた魔法陣は、完全なる形で、見る者恐怖を与える程大きく堂々たる物だった。
 「これでやれる」「後はキビが一瞬の隙を見せるこの時を待つのみだ」「必ずやその一瞬の時は来る」「柚華よこの戦さ場の設計を…」

 「たのむ」



 この時、全ての吸鬼は動きを止め、突き刺さらんばかりの鋭い視線で、柚華の心をえぐり取ろうとするのだが、この時柚華は、絶対的自信に満ち溢れていた。

 彼等は、柚華をにらみつけは、する物の、その場で羽ばたき、矢射る者はいない、ただ重い空気が、その場を支配する。




 「誰が動けば、必ず攻撃は始まる」 「ユリネこの重き空気の中、動けるかい?」

 ユリネは、大きくうなずく

 「よし、えらい動けるならば」

 
 「最良の一張りをキビに向かい放ちなさい」

 多くの吸鬼が、上空を飛び交う中
 
 「木々の隙を射抜くより厳しい」

 「やれるかい」

 「お姉たま了解だよ」

 具現化した青き魔力の上で、ユリネは息をフッと勢い良く吐き捨てると、その瞳が輝き出し、そしてキビに狙いを定め、キリリと弓を引き、揺らめくマントの隙間より、その矢を解き放つ

 彼女の解き放つ矢は、唸りを上げる事無く、静かにそして、鋭く飛び行く、その的中率は、母親譲りで正確無比なり…
 
 
 「イケーーー」
 
 矢じりの先端は、ギラリと光を放ち勢いを失う事無く突き進み
 


 グサリ


 「な、何、いつの間に…」キビは驚きながら、苦痛に顔を歪める。

 赤き魔力を写し込んだ矢じりは、確実に、禁断の魔法陣を手に持つキビの右腕をとらえる。

 吸鬼達は一斉に動き出す。
 柚華は、悪しき魔力秘める矢が飛び交う中、その全てを見極め交わし、急下降し、地上スレスレを疾風の如くスピードで、駆け抜ける。

 「ヒャホーー」

 攻めて来る全ての吸鬼を、「オリャーー」裏刃刀で打ち払い難を逃れ、地上にヒョイと飛び降り、直ぐさま地面に片手をつき、「この地に浮遊する魔力よ、あの時、矢が飛び行く音を消してくれて、有難う」

 「主人あるじは嬉しく思う」


 


 


あの時
 
 右手を貫かれたキビは、グラリと揺らぎ、わずかだが、落下した。
 「グッ」「チィ」
 その時を、サイナメは逃がさない、封印の魔法陣をキビに向かい解き放つ、「ヨシ、とらえた」「悪しき者達よ、消えて無くなれーー」

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