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ニ十一話 七色に光る石ころ

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いつもなら、闇が支配するこの時間、洸夜の秘境は、キノコ達がまるで喜んでいるかのように淡く優しい光を放ち、谷底から周りを見ますと、幻想的な雰囲気に包み込まれる。

 しかし、当然のことながら今の柚華の瞳は、それを見る余裕などなかった。
 
 なぜならば、身の丈が190センチを超える大柄の武人が振り抜く剣先は鋭く重い、身の丈120センチあるかどうかの柚華は、不利な戦いを強いられていた。

ブォーン
 「ヌァーー」
キン
 その重い一振りは、剣を弾き返した手首より全身に伝わる。

 柚華は痛みを抑え攻撃に転じる。

「一の太刀」「二の太刀」烈火のごとく早業で剣先を振り抜く

シュタ、シュタァーー

 その剣先はうなりを上げ、空を切り裂き武人に向かい襲い掛かる。
キン、カン裏刃刀と、日本刀が火花を散らしぶつかり合う

 「軽い、軽い」「何ともしがたい体格差、少しでも埋めてから出直せ」「うぬに勝ち目など無い」「黙って引っ込んでいろーー」

 武人は、そう言い放ち、柚華の後ろにいる。 玄関先で忍び刀手を持つ、乾に向かいにらみ付ける


 この武人の狙いは、私じゃ無いな、間違い無く乾様…
いやサクラの民とその子供の命
 
 ならば、勝機は有る。
 
 「何ともしがたい体格のさをうめろだと」「笑わせるな、先程の倍の速さでお前を仕留める」

 柚華は、己手を見つめ、大きく息を吸い込み、武人を睨み付ける。

 すると武人がかぶる三度笠隙間から、わずかに笑みがこぼれ落ちる。



「圧倒的な体格差、埋めれる物ならかかってこいーー」

 この時先に動いたのは武人の方だった。

 上段に構える日本刀の刄がキラリと光り、鋭くそして重みを増しながら、柚華の頭を目指し振り落とす。
 圧倒的主観の極みに、足を踏み入れる柚華は、前に一歩踏み身体をくねらせ、うなり、迫り来る刄をスルリと交わし武人の懐に入り込む
 
「もらった」「三の太刀」「四、五の太刀」

 「悪いね、武人さん圧倒的な体格差」
 「埋めさせてもらったよ」



 「ケロ、ちと早すぎないか?」「以外と、あっさりと…」
 乾が前に真っ直ぐ突き出す忍び刀の先端で、カエルとうかは一人呟いた。
 「桃花そう言うな、仕方がないだろ、奴の本職は神主だからな」この時二人は何かに気づいていた。


 ドサ

 武人は、仰向けになりその場で、倒れ込む。

 その時、その懐から七色に光る石ころが一つ ポタリと おちた。


・・・



 「ケロ、飛猿よ目を覚ませ」「いつまで、この寒空の下で寝ているつもりだ」
 カエル桃花そう言いながら、飛猿の顔の上を飛び跳ねる。

 ピョーン


 そう、なにを隠そう柚華と戦った武人は、里中島に居る筈の飛猿だったので、有る。

 七色の石ころを持ち、飛猿がこの地に足を踏み入れたと言う事は、一つの目的の為に、彼等が動き出す事の あかし





 ピョーン「目を覚ませーー」


 
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