私鬼戦記 禁断の魔方陣とカエルに変えらし者

京間 みずき

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十二話 螺旋

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彼等は、これまで圧倒的主観の中で生き抜いていた。

 狩人のさとの者達は、猪や熊といった獣を弓を用いて射抜き、その命をいただき生活する。 当然の事ながら、矢で急所を貫かないかぎり、獣達はもがき苦みながら逃げまわる。

 狩人の郷では、獣の命に敬意を払い、一分一秒でも苦しまぬ様に、常人では計り知れない程の身体能力を身につけて、裏刃刀を用いて、その命にとどめを刺す者達がいる。
 その行為こそが、尊い命をいただく者の最低限の敬意と、かたくなに信じ、狩りを行う。


 一方、狩人の郷の者達と形はちがうが、葉組の火消し屋半次郎も又、圧倒的主観の極みに足を踏み入れていた。

 一分一秒を削り出すその為に、過酷な訓練を行い、圧倒的な身体能力を身につけ、いの一番に火事場に向かい、潰しやいばに、ほどこした、クサリガマを自在に操り、火事場で取り残された者達の、その尊い命を救い、鎖の先端に付けられた重い分胴で、たちまちの内に、火事で、半壊仕掛けた家屋を粉砕する。


・・・



 柚華は、屋根の上で、クサリガマを自在に操る少年に向かい、叫ぶ

 「我が名は、柚華」「狩人の郷の者なり」

 半次郎も負けじと声を張り上げ、柚華に向かい叫ぶ

 「我が名は、火消し屋半次郎」「葉組の者なりーー」


 圧倒的主観の極みに踏み入れる二人には、多くの言葉など必死無い

 二人は、目と目を合わせ、首を縦に振る。

 次の瞬間

 柚華は手に持つ一本のクナイを、左の吸鬼に目掛けて渾身の力を入れて、投げる。

 シュターー

 そのクナイは、うなりを上げ飛び行く

それとほぼ同時に、半次郎は、葉組と書かれたはっぴを、ひるがえし、屋根上で、クサリガマを自由自在に操る。 

 ブオーーン、ブオーーンと唸るカサリガマは、まるで生きてるかの様に、クナイの周りを螺旋状に、左の吸鬼に向かい伸びて行く

 白き魔力を帯びながら


 「白き魔力は、伸縮の魔力なり」

 「疾風のきらめき」


 だが吸鬼は、黒き羽根をたたみ、頭から一気に降下し、螺旋の外へと逃げ出る。

 そこで、大きな羽根を広げ、突如止まり、ニヤリと不適な笑みを浮かべ
 「ヌルイ、ヌルイ、ヌルイ」「うぬらの攻撃」「手に取る様に見える」




 ブン

 その時柚華は、疾風の如き早技で、螺旋状の鎖を駆け走り、空中で吸鬼の背後を取っていた。


 「言いたいのは、それだけか」
柚華は、そう言い放ち、黒塗りの鞘より裏刃刀を素早く抜き、怒涛の如く攻撃を繰り広げる。

「一の太刀」「二の太刀」「サンノタチーー」

 柚華は裏刃刀を鞘に納め、空転しながら着地する。

 この攻撃で、吸鬼は地面に叩き付けられ、苦しそうにのたうち回っていた。
 



 「螺旋を駆け走る」「私の姿、見えぬお前など、我らの敵では無い」

 

 「案ずるな」「今、楽にしてあげる」
 柚華は、そう言い放ち、落下して来たクナイを手に持ち、紅き魔力を写し込む。


 封印された吸鬼は、黒き灰になり、消えて無くなる。

 彼等は、三羽目の吸鬼も力を合わせ封印するのだが、その遥か上空で、腕を組み、彼等を見つめる吸鬼がいる事を知るよしも無かった。

 
 「チィ」「使えん奴らだ」「だが、まあいい、目的の一つは果たしたからな」

・・・
 
 半次郎は、七色に光る小石を柚華に見せ、語り始める。



 
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