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一話 吸鬼
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「かつて鬼才の式神師、幾多弦斎様が、描いた禁断の魔法陣」「複雑怪奇なこの紋様、面白い」
幾多弦斎亡き後、彼の愛弟子のサイナメは今、暗く、狭い畳み二畳程の一人部屋で、ゆらめくロウソクの光を頼りに、禁断の魔法陣について記された、古い書物を手に持ち、不適な笑みを浮かべる。
「実に面白い」「ヌハハハ」「考えただけで、この胸の中が、踊り始める」「この声すら、震えが止まらない」
禁断の魔法陣の解放には、魔力を秘める者の生贄が必要と記されていた。
「この左腕に、禁断の魔法陣を描いて見せる」「我が魔力と、左腕一本」
サイナメは、仕事道具で使う千枚通しを右手に持ち、青白く揺らめくロウソクの光の中に、鋭くとがる千枚通しの先端を、おもむろに差し込む
彼は、赤く焼けたその先端を見て、ニヤリと不気味に微笑む
複雑怪奇な禁断の魔法陣の紋様を、自分の左腕に、寸分違わぬ形に千枚通しで描き進める。
圧倒的な精神力で、その痛みをこらえ、禁断の魔法陣を描き終える。
すると、血でにじむ禁断の魔法陣のその紋様が、青黒く蠢くき始める。
「これだ、この力」「あふれんばかりのこの力」
そして今、闇黒の扉が開かれる
「吸鬼よ我が身にまとえーー」
こうしてサイナメは、圧倒的な魔力と、吸鬼の力を身にまとう
「さて、この力どう使うのが、一番面白い吸鬼よ」
「文献人狩りなどいかがですか」「死ぬまで苦労する様な、、、」
サイナメの耳元で、吸鬼の悪しき力がボソリとささやく、まるでそこに存在するかの様に
「面白い、実に面白い提案だ、ヌハハハーー」
・・・・・
チリン、、、チリン
「お母たま」「あの人達何者なの?」
春の爽やかな風が吹き始めたある朝、狩人の郷の首領、桃花は、娘二人を連れて、郷の近くの小高い丘の上で山菜採りながら、ゆっくりとした、時間の流を楽しむはずだった。
この時までは、、、
チリン、、、チリン、、、チリン
桃花は丘の上より、眼下を歩く彼等の姿を見て、優しく末娘に話しかける。
「ユリネちゃん」「あの人達は、修行中の山伏よ」
七歳になったばかりのユリネは、母親の桃花同様に、はかま姿で、弓を背負い、えびらには、五、六本の矢を入れ、物珍しそうな眼差しで、目を輝かせながら彼等をみつめる。
「へーーあれが、ヤマブシなんだ」「お姉たま知ってた?」
四つ年上の柚華は、胸には、さらしを巻き、忍び服を身にまとい、お気に入りのマントをたなびかせる。
妹にそのマントを引っ張られ、しぶしぶ眼下に目をやり、笑みをこぼす。
「ヤマブシって強そうね」「フフフ」
この時、柚華もユリネ同様に、目を輝かせていた。
チリン、、チリン、チリン
彼等が、近づいたその時、春の風が、桃花の頬をなでる。
「この匂い」「吸鬼?」「間違え無い吸鬼だわ」「この腐った獣の様な匂い」
桃花の眼光が、キリリと光る。
桃花は、大声を上げ、柚華に向かい叫ぶ
「柚華、ユリネを連れて、出来るだけ、遠くに」
「早くしなさい」
ただならぬ予感が、彼等の脳裏をよぎる。
それは一瞬の事だった。
「いやーー母たまーー」
彼等の悲痛叫びが、辺りの山々にぶつかりこだまする。
幾多弦斎亡き後、彼の愛弟子のサイナメは今、暗く、狭い畳み二畳程の一人部屋で、ゆらめくロウソクの光を頼りに、禁断の魔法陣について記された、古い書物を手に持ち、不適な笑みを浮かべる。
「実に面白い」「ヌハハハ」「考えただけで、この胸の中が、踊り始める」「この声すら、震えが止まらない」
禁断の魔法陣の解放には、魔力を秘める者の生贄が必要と記されていた。
「この左腕に、禁断の魔法陣を描いて見せる」「我が魔力と、左腕一本」
サイナメは、仕事道具で使う千枚通しを右手に持ち、青白く揺らめくロウソクの光の中に、鋭くとがる千枚通しの先端を、おもむろに差し込む
彼は、赤く焼けたその先端を見て、ニヤリと不気味に微笑む
複雑怪奇な禁断の魔法陣の紋様を、自分の左腕に、寸分違わぬ形に千枚通しで描き進める。
圧倒的な精神力で、その痛みをこらえ、禁断の魔法陣を描き終える。
すると、血でにじむ禁断の魔法陣のその紋様が、青黒く蠢くき始める。
「これだ、この力」「あふれんばかりのこの力」
そして今、闇黒の扉が開かれる
「吸鬼よ我が身にまとえーー」
こうしてサイナメは、圧倒的な魔力と、吸鬼の力を身にまとう
「さて、この力どう使うのが、一番面白い吸鬼よ」
「文献人狩りなどいかがですか」「死ぬまで苦労する様な、、、」
サイナメの耳元で、吸鬼の悪しき力がボソリとささやく、まるでそこに存在するかの様に
「面白い、実に面白い提案だ、ヌハハハーー」
・・・・・
チリン、、、チリン
「お母たま」「あの人達何者なの?」
春の爽やかな風が吹き始めたある朝、狩人の郷の首領、桃花は、娘二人を連れて、郷の近くの小高い丘の上で山菜採りながら、ゆっくりとした、時間の流を楽しむはずだった。
この時までは、、、
チリン、、、チリン、、、チリン
桃花は丘の上より、眼下を歩く彼等の姿を見て、優しく末娘に話しかける。
「ユリネちゃん」「あの人達は、修行中の山伏よ」
七歳になったばかりのユリネは、母親の桃花同様に、はかま姿で、弓を背負い、えびらには、五、六本の矢を入れ、物珍しそうな眼差しで、目を輝かせながら彼等をみつめる。
「へーーあれが、ヤマブシなんだ」「お姉たま知ってた?」
四つ年上の柚華は、胸には、さらしを巻き、忍び服を身にまとい、お気に入りのマントをたなびかせる。
妹にそのマントを引っ張られ、しぶしぶ眼下に目をやり、笑みをこぼす。
「ヤマブシって強そうね」「フフフ」
この時、柚華もユリネ同様に、目を輝かせていた。
チリン、、チリン、チリン
彼等が、近づいたその時、春の風が、桃花の頬をなでる。
「この匂い」「吸鬼?」「間違え無い吸鬼だわ」「この腐った獣の様な匂い」
桃花の眼光が、キリリと光る。
桃花は、大声を上げ、柚華に向かい叫ぶ
「柚華、ユリネを連れて、出来るだけ、遠くに」
「早くしなさい」
ただならぬ予感が、彼等の脳裏をよぎる。
それは一瞬の事だった。
「いやーー母たまーー」
彼等の悲痛叫びが、辺りの山々にぶつかりこだまする。
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