恋文筆弁士の最後の交換日記

京間 みずき

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二十八話 甘い約束

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可愛い九歳の女の子の願いを、ヤツメは無事解決し、安堵する。

 翌朝ヤツメは、文華のいる病院を訪れる。

 「やっと退院出来るな、文華」「良かったな、思ったより、大した事なくて」

 「ん、ありがとう」

 二人は、指と指を絡ませ、手を握り、ゆっくりとした時間の中を、笑顔浮かべながら、文華の家に向かう

 ゆっくり歩きながら、文華は 、甘えるように、ヤツメの顔を見て話しかける。

 「あのね、ヤツメさん夏休みの終わり頃」「海に連れて行ってくれない?」

 「ヨシわかった」「海に行く約束だったな」

 その言葉を聞いて文華は、満面の笑みを浮かべ、少し照れながら

 「ありがとう」と、つぶやく

 二人は、夏休みの終わりが近いたある日、とある浜辺に向かい、飛びっきりの一日をお過し、夕日が二人の頬を照らす中、ヤツメは、文華を抱きしめ、ソーとキスをする。

 文華は、今にも飛び出しそうな、鼓動を感じながら、ヤツメの頬に、お返しのキスをする。

 彼等は、お互いの事を、一番大事にし、信頼し合い、優しい空気に包まれながら、今年の夏の終わりを感じる。

 「文華ちゃん」「秋になったら、キンモクセイの香りを楽しみに、あの山に行こう」

 この言葉を聞いた文華は、まるであの日のヤツメの様に答える。
 「ヨシ、わかった」「山に行く約束だったな」

 ヤツメは、吹き出しそうな気持ちを、グッと抑え、「ありがとう」と、優しくつぶやく


 時は、二人が約束した秋を迎える。

 電車とバスを乗り継ぎ、あの日の様に、ヤツメは文華の肩を枕替わりにし、ウトウトと気持ち良さそうに眠る。

 文華は、そんな寝顔を見て、心を和ませる。
 「気持ちいい?ヤツメさん」「このまま到着しなきゃ良いのね」と、寝息を立てるヤツメに、文華は優しくつぶやく

 文華は、キンモクセイの香り漂う山間部にたどり着くと、以前の様に、野原を走り始める。
 ヤツメは、「まるで子供だな」と、少し、あきれながらも、文華を追いかけ、背中越しに、強く抱きしめる。

 キンモクセイの甘い香りに、包まれながら、二人は見つめ合い、ヤツメはソッと顔を近づけ、優しくキスをし、文華は、照れながら、ヤツメの頬に、お返しのキスをする。
 
 コレが、彼等にとっての、愛の形だった。

 文華が作った弁当を、食べ終わった二人は、名残惜しいそうに、バスに乗り込む、以前の様に文華は、ヤツメの肩を借り、笑顔を浮かべながら、寝息を立て始める。

 ヤツメは、そんな文華の寝顔を見て、「また、来年も来ような」と、密かに約束をする。

 文華は、ヤツメの肩に付く、キンモクセイの甘い香りを感じながら、夢の中で、ヤツメに「また来ようね」と、密かに約束していた。
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