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二十六話 特殊なペンと、特殊な紋様

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九歳になる、女の子は、文華の家の近くに住んで居て、文華に勉強を見てもらう事も有る程の間柄で、ヤツメの仕事の事を、以前文華から聞き、ここを訪れたのであった。

 ヤツメは、情報を得ることが必要なために、その女の子と多くの話しをしたのだが、彼女は事故した時の記憶が、余りないと言う

 「おそらく、事故防衛のための記憶の損失」


 「よほど辛かったのね」「そのせいで、未だに、お母さんが無くた事を、受け入れられないのね」

「ヤツメ様お受けになるの、このお仕事」

 女の子は、自分で書いた手紙を、三日後の母親の命日に、直接手渡したいと言う、依頼だった。

 「当然だ」 「しかしながら、余りにも厄介だなぁ」「ミコト、良い知恵を貸してくれないか」


 ミコトは、しばらく考え込み、「彼女の思いに、完全に応える事は出来ませんが、お香文字と言う物が有ります」


 「ヤツメ様、お香に書ける特殊なペンがあるのを、ご存知ないですか?」


 「俺は、実際には見た事は無いが」
 「特別なペンで、お香に文字を書くと、一度文字が消え、火を付けると文字が浮き上がると、聞いた事は有る」


 「流石ヤツメ様、そのペンで、お香に、彼女に、母親宛に、手紙を書てもらいかがでしょう」

 「子供だまし見たいですが」「私は、それしかないと思いますよ」




 「なるほど、それだミコト、それならいけるかも知れない」

 「時間が無い、今からその特殊なペンを買いに行く」「ミコト待ってくれ」

 「ヤツメ様、私も一緒行きますよ」

 「ペンを、買った帰りに、文華ちゃんのお見舞いに行くから、ミコト悪いが、待ってくれないか」

 ヤツメは、文華の見舞いを済ませ、ペンを手に入れ、帰宅すると直ぐに、なぜか特殊なペンに、自分が持つ筆と同じ、特殊な紋様を、寸分違わぬ様に、刻み始める。

 「出来た」「完璧だ」

 ヤツメは、寝る間も惜しみ、次の作業に取り掛かる。

 新品お香に、一文字、一文字に心を込めて、文字と挿し絵、そして何故かさくらんぼマークを書き入れる。

 「ヨシ、これで準備万全だ」

 
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