恋文筆弁士の最後の交換日記

十九話 もう、君を離さない

ミコトに嫉妬するなと、言われたヤツメだが、健一の洋服を選び始めると、更にその気持には、疎外感が増し、彼の心の中は、不安な気持ちが、徐々に支配する事になる。

　文華は、優しく健一の手を引いて、健一を連れ回す。
　
　「ねェ、健一君」「こっちの洋服着て見て」

　「わかった、わかったから」「文華ちゃんそんなに、ひっぱらないで」
　
　「おいおい、遊び来ているんじゃ無いんだぞ」「文華ちゃん、健一君に、似合うかどうかも大事だが、硬い恋のつぼみを、ほぐせる程の洋服を探す必要が、、、」

　「はい、了解です」

　ヤツメの話しなど、彼等の耳に入らない、


　「ここの無いね」「隣の店いって見よう健一君」
　「だから、そんなにひっぱらでよ、文華ちゃん」
　

　不安な気持ちに、支配されたヤツメの瞳に、にごりを与える。

　それは、色あせた白黒写真の様に、心を霞ませる。

　そして、ヤツメは、自分でも思っても無い事を、強い口調で、発知ってしまう

　「文華ちゃん、この洋服選びは、遊びじゃないんだ」「健一君の硬い恋つぼみをほぐしてくれる」「そんな服が、きっと有る」「じっくりと、品定めしないと駄目なんだ」

　「文華ちゃん、悪いけど帰ってくれないか」

　「邪魔だ」

　嫉妬とは、みにくい物で、ミコトの様に、その場にいる事に、耐えきれず去る者も居れば、ヤツメの様にその場を破壊する者も居る。

　残酷な結果が、待ち受けると、知る事すら出来ないままに、破壊する。

　「私、嫌なの」

　「健一君は、真実の自分をさらけ出さ無いと」「二度と恋をする事が、出来なくなっちゃうんでしょ」「そんなの、嫌なの」

　「私なりに、協力したい、そう思うっただけなの」

　「なのに、邪魔だなんて」「そんな」

　「そんな言い方しなくても」



　文華は、なだめ様とする、健一の手を振り払い、涙を目に浮かばせ、下を向いて、走り去る。

　ヤツメは、わかっていた文華の優しさを、健一の為に必死になって、手を繋いで歩き、優しい笑顔を見せ、洋服を探していた事を、全て頭では、わかっていた。

　文華から、手を振り払われた健一は、困り果てた様なヤツメの顔を見て、早口でヤツメに話しかける。
　「ヤツメさん、僕」「僕は、大丈夫です」

　「早く文華ちゃんを、追っかけてあげて」

　健一のこの言葉に、ヤツメはふと我に帰る。
　「健一君、ありがとう」


　「俺は馬鹿だ、何の為にここに来た」

「恋文筆弁士失格だ」


　「文華の瞳をぬらす事は、寿命を縮める事に」「わかっていたのに」「俺は馬鹿だ」
「文華の恋人失格だ」

　ヤツメは、必死で文華を探すが、どこにもその姿は　　　　ない


　いない、何処に行った？
ミコトが、色あせたて見えたあの時に、気づくべきだった。

　「君のその優しさに」


「こっちにも　いない、早く見つけたい」「涙でベットを濡らす、その前に」



　文華の家までの道のりを、ヤツメはひたすら走る。

　すると、ヤツメは文華を見つけ、ソーとかけ寄り、背後から、ギュっと、抱きしめる





二度と君を、悲しませない、だから許してくれないか。

文華は、「うん」と、小さな声で、つぶやく




もう君を離さない、、、