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十六話 硬い恋のつぼみと、その花の咲かせ方

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人は皆恋をすると、瞳に小さな恋のつぼみが芽吹き、そして多くの者は、その恋のつぼみを、何とか咲かせたいと、試みる。

 誰も明確に、花を咲かせる方法など解らず、信頼出来る者に相談し、手さぐりで、ゆっくりと、心を締め付けられる程の想いをしても、優しく花を咲かせる為に、当然、努力を惜しまない

 例え、その花が、すぐに消え逝く事と、解ったいても、小さな心の中で、もがき苦しみながら、花を咲かせ様とする。

 「健一君、俺の仕事は、恋する者達の苦悩を少しでも和らげる事」

 当然の事ながら、花を咲かせる事無く、恋のつぼみのそのままに、小さな心より、悲しみと共に地面に叩きつけられる様に、溢れ落ちるつぼみも、この世に多く存在す。

 「一つでも多くの恋を、実らせる事」
 
 ヤツメの書いた文字と、描いた挿し絵は、多くの者の恋の花を、華麗に、しなやかに、そして優しく咲かせいた。

 しかし、今ヤツメは、健一に厳しい言葉を言い放つ「すまんが、今の君に、書く事の出来る、恋文は、、、」「無い」

 この言葉を聞いた健一は、望みを失い肩をガッツリと落とすし、言葉を失う

 勇気を振り絞り、自分に相談した健一の想いを知る文華は、にらむ様に、ヤツメを見つめ

 ミコトは目を丸くし驚き、「そ、そんな、、、」

 誰もが言葉を失い、しばらく沈黙の時間が、彼等を支配する。

 しかし、突然、文華はヤツメをにらみ、怒りをあらわにし始める。

 「ヤツメさん、もうちょっと優しくしてあげて」「彼は、凄く真剣なの」「確かに、確かにね、同性愛者は世間から見ると、、、」「まだまだ」「受け入れられていないわ」

 「だからといって、そんなに冷たくしなくても」 

 「いいじゃない」


 健一は、怒りを露わにする文華の肩を、ポンと叩き、重い口を開き、自分の想いを話し始める。

 「ありがとう文華さん」「僕なら大丈夫」「あのね僕」「ここに来る前から、何処で、こうなるんじゃ無いかと思っていたの」

「どうせ、僕みたいな奴、誰も相手にしてくれない」
 この時、彼の顔はいら立ちと、寂しが複雑に入り混じっていた。

 「その通りだ、今のお前など、誰も相手にしてくれない」「それどころか、気付く事すら無い」「真実の君に誰もね」
 「真実の君をさらけ出さない限り」


 「俺は、君の為に恋文を書く事は、無い」

 「真実の僕?」

 「そうだ」
 「君の瞳の中には、重く硬い恋つぼみが一つ有る」「厄介な事にこのつぼみ」
 「真実の、自分を隠したまま、無理に咲かせ様とすると」

 「そのつぼみは、硬化する計りで」

 「溢れ落ち事すら、叶わない」

 「簡単に言うと、二度と君は、恋をする事が、出来なくなる」「嫌だろ」「そんなの」
 
 「俺は、君の恋のつぼみを、咲かせて見せる」

 「華麗にな」

 恋とは、全ての者が、自由に出来る優しき魔法、だがその魔法の使い方を間違えると、その者の心を、生涯閉ざす。

 ヤツメは、どんな恋の形でも全力を尽くし、ここに居る全ての者の心を、穏やかに包み込む。
 

 
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