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十三話 悪い予感
しおりを挟む文華は、一日置きに一度、必ず学校から、ヤツメの家に立ち寄り、交換日記と甘い缶コーヒーを手渡し、十分程度たわいない話をし、帰宅しているのだが、この日は、いつもの時間を、とうに過ぎても、彼女はここに姿を見せない、「今日は来ないのか?」「何か有ったのか?」
ふと悪い予感が、頭をよぎる。
「まさか悪しき力が」「文華を襲ったのか」
ヤツメは、慌てて重い扉を開けると、直ぐそこに、二冊の交換日記が、ソォーと置かれていた。
「おやおや、あの子何で入って来なかったのかね?」「もしかして、私達の会話が聞こえたのかな?」
「幾ら何でも、そんな事は無いだろう」「もし聴こえたとするならば」
「ミコトお前の姿も、見えると言う事だ」「見られている、そんな感じは有るのか?」
「ん~?」「どうだろうね」「今まで一度も、目と目が、有った事など無いけどね」
「まぁとにかく、その交換を読み解けば」「何か見えて来るんじゃない」
「ヤツメ様、早く開いて見なさいよ」
ヤツメは、いつもより慎重に日記の文字の、わずかな震えや筆圧の違いを読み解く、「これを書いた時は、いつもと何一つ変わらない」「だとすると」「今日学校で何かあったのか」「それとも、ミコトの言う通り、俺たちの会話が、聞こえるのか?」
「どっちにしても、会って確かめるしか無さそうだなぁ」「恋文も渡さなきゃ行けないしな」ヤツメは、そう言うと慌てて家を飛び出す。
ミコトは、キツネの姿に戻り、その後ろを浮遊しながら、ヤツメを追いかける。「ヤツメ様、そろそろ携帯電話ってやつ、持ったら~」
「あんな物文字文字じゃない」「文字もどきだろアレ、好きになれん」
「まあ、確かにねぇ」「私もアレは好きじゃ無いよ」「でも家の電話が、黒ダイヤル式ってどうなのよ」
「お前なぁ」「今そんな事、どうでももいいだろ」「てか、ミコトは、使う事無いだろう」
彼等は、いつもどうでもいい事を真剣に考え話すのだが、そんな下らない事を話しながら、歩いていると、文華の家の前迄たどり着く、
だが、ヤツメは思いもよらない景色を目にする。
「おっお、男と一緒だ」「だ、誰だ、あの子は」
「ヤツメ様、目がまん丸ですよ大丈夫ですか?」「それにしても、以外だね~」
「えらく、仲がよさそうだねぇ」
「あの二人」
「しかも、私好みの男前」
「だから、お前なぁ」「関係無いだろう」「何、目を輝かせてる」
「取り敢えず」「行って、話して見るしか無いな」
「嗚呼、悪い予感しかしない」
自分の事になると、以外と気の小さいヤツメは、頭を抱えながら、文華に近づく
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