恋文筆弁士の最後の交換日記

京間 みずき

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七話 満開の花は、一途の幸せ 後編

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満開の花は、一途の幸せ、彼の重く、切ない想いをヤツメは、文字にしたため、満開の花を描く

 この恋文の強い文字は、重みと温もりを与え、満開の花は、一途な想い共に、感謝の気持ちを表す。

 そしてヤツメは、病院で主人の事を待って居るであろう、奥さんの事を思い、一つ可愛い花のつぼみを書き足す。

 花のつぼみは、希望の導き、決してあきらめる事無く、頑張って欲しい、その想いで、この恋文を包み込む。

 「これをお持ちになり、早速く奥様のお見舞いに」

 ヤツメはそう言い、恋文を手渡すと、彼の感謝の気持ちが、溢れ出す。

 「ありがとう」「実は、自分で書きたいと思ていた」「だがな、筆を持つと、手が震え、涙が溢れ書けなったんだ」「そんな自分が、情け無く、今までな、辛かった」「凄く辛かった」

 「本当にありがとう」

 やまいと闘う、本人は当然だが、献身的に看病する者の、その苦労は計り知れない、その事を彼の瞳を見て、うかがい知ったヤツメは、思わず彼に、声をかける。
 「もし、よろしければ、御同行しましょうか」ヤツメは、優しい口調で、この者に問うと、彼は首を横に振り、「近くのガン専門医院だ」「歩いて行ける」

 「それに、私は妻と二人の時間を楽しみたい」

 彼はそう言うと、深く頭を下げ、重い扉を開け、足早に妻の居る病院に向かう

 その後この恋文は、彼らの人生に、どれだけの影響を与えたかは、うかがい知る事は、出来ないが、ヤツメには、彼との出会いが、文華との交際を加速させる事となる。

 扉の向こうで、暖かい缶コーヒーで、寒さを凌いでいた文華に、ヤツメは頭を優しくトントンと叩き、「すまなかった、寒かっただろ」そう言うと、すぐさま自分のコートを文華にそーと羽織ってあげる。

 文華は、顔を赤らめちょと恥ずかしいそうに「ありがとう」と小さな声で呟く当然文華は、男性にこんな事をされた経験が無い、その為か、しばらく無言のまま下を向き、ヤツメの優しさの、余韻に浸っていた。

 そして、自分が書いた交際日記に込めた、意気地無しの気持ちが、溢れ出す事が無い様に願っていた。

 あっ~恥ずかしい、あんな事、想いながら書かなきゃ良かった。
バレて無いよね。

 そう思いチラッと、ヤツメを見ると、「やっと顔を上げてくれたな」ヤツメは、さりげなくキラキラした瞳の中を確認し、にっこりと微笑み、

 大丈夫そうだな、悪しき力は、強くなって無い、良かった。 ホッと胸を撫で下ろし

 「文華ちゃん、最初に出会った、あの日の事、覚えている?」

 「俺、あの日に君に心を、奪われてしまった」 

 「正式に、付き合って、くれないだろうか?」「君が好きなんだ」

 文華の頬に涙が伝う
何故ならば、彼女は長い間この言葉を待っていた。
 
 

 


 

 

 
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