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五話 意気地無し

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文華とヤツメは、二度、三度と、ちょと不思議な交換日記を繰り返し、文華は、ただひたすら忍び文字をノートに書き写し、ヤツメはその文字を紐解き、ノートに記す。 
 そして文華は、その御礼に、甘い缶コーヒーを買って渡す。
 ヤツメは、その缶コーヒーを手に持ち、文華の瞳を見つめ、にっこりと微笑む

 ただ、それだけの関係なのだが、彼等の交換日記の文字は、丸みを帯び始め、相手に温もりを与える。

 この二人は、筆圧の違いを、感知し「ん?」「昨日学校で、何か嫌な事でもあったかな」「筆圧が深い」


 「優しい筆圧だぁ」「良かった、お仕事順調そうね」
 
 この二人ちょと、変わっているが、確実に、優しく約束なき愛を育む、だがそれは、 何処寂しく、切ない、、、

 文華は思う、自分の部屋のベットの上で、言葉が欲しい、好きだよって、言て欲しい「ヤツメさんの意気地無し」

 文華のその想いが、文字となって溢れ出す。
 何度、君と交換日記を繰り返したのだろう、僕は君に好きだと言えずにいる。

 そして何度、君の、瞳を見つめたのだろう、僕は、遂にその瞳の悪しき、もののけがの力が、僅かに大きくなるの確認した。

 
 「ミコトお願いだ助けてやってくれないか」「一千年生きた、お前の妖気で」
 「頼む」


 「ヤツメ様」「文華さんが、ここに訪れたあの日も、お伝えしましたが」「白ギツネの私の力でも」「無理なのです」

「全ての文字には、力が宿りまする」「愛を思い浮かべ、書き記す文字には、優き愛の力が宿り」「憎しみや、恨み辛みを、つずった文字には、冷たき力が宿する」

 「これらの多くは、時と共にその力を失います」

 「昔は良く、貴方の筆に憑依するキツネ達同様に、素敵な文字に憑依するもののけや、あやかしがいたのよ」

 「ここまでは、良くある話しで、何の問題も無いのですよ」

 「でもね、うるわしき乙女の瞳に憑依する事を目的で、一旦文字に憑依する。 そんな悪しき、もののけや、あやかしがいる」「問題はこの者達の、悪しき力は」

  「誰にも、止められない」

 「だから言ったでしょ、あの者の事は、忘れなさい と」「これ以上ヤツメ」「貴方が、辛い思いをするのは、私には見て居られない」

 ミコトはそう言うと、しばらく無言のまま、ヤツメを見つめる。

 ミコトは重い口を開く

 「私の命と引き換え、ならば、、、」

 「おいミコト俺を怒らせるな」「二度とその様な事を口にするな」「お前俺の家族だ」

 怒りに満ちたヤツメの言葉を聞き、ミコトは、笑みを浮かべる。

 「ふふふ」「嬉しい事言ってくれますね」

 「でもねヤツメ様、この後事は、考えてる?」「私には、彼女の書いた文字には、ヤツメさんの意気地無しと、訴えている様に、見えますが」

そんな話しをしていた、その時、一人のお客が、ヤツメの家を訪れる。

 そうこの客が、ヤツメの背中を強く押す事となる。
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