212 / 220
孤児と大罪を背負う英雄
212
しおりを挟む
本は怪しく輝き周囲から絶叫が聞こえる。
周囲の色は抜け落ちたように白く染まった後鮮やかな光が老人を中心に降り注ぐ。
その光景をクトゥルゥは傍観し今もなお魚人達を肉塊の化け物へと変えていく。
「さぁ今こそ超越にして卓越を迎える転身の時…我々こそ最上の『人』であり陸、空、そして…宙をも支配する神の種族なのだ!嫉妬の権能『事実改変:我身転生』ッ!」
老人はそう叫ぶと手に持つ錫杖で自分を突き刺した。
それはただの自傷かと思われたが突き刺された部分の皮膚が蛹のように剥がされ白い光が溢れ出す。
ヒビが入り老人の身体は砕け散る…その中から出てきたのは正に異形を模った存在。
背中にはドラゴンの翼に鬼族のような屈強な肉体、天使のような輪が頭に浮かび下半身は蜘蛛のような身体がついておりそこには伸び縮みする触手がありその先に狼の顔が浮かび上がっている。
「ワタシは…王女のように美しく、ドラゴンのように空を飛び、人のように陸を踏みならし、誰からも信仰され、獣を導き、憎き王の如く多くのことを成し遂げる大いなる存在。我こそが至上の王にして海を統べる神…我こそがワダツミなのだッ!」
『ふむ完全に力に呑まれているな…この$°#☆+〆すら倒そうとするか…だがまだ足りぬな』
クトゥルゥはワダツミと名乗る存在にそう投げかけると自らの触手で地上に転がる魚人を薙ぎ払おうとする。
だがそれを阻止しようと6つ目の魚人がその触手を食い止める。
6つの目は俊敏に動き地に転がる魚人、肉塊に襲われる魚人、そしてクトゥルゥからの悪戯ともいえる薙ぎ払いに対処する。
あれじゃいつかは体力が切れて動けなくなるだろう。
なら私がすべきことはあのワダツミを倒し王女を殺す…いやもうコレには意味が無いか。
何せもう王女は事切れている。
本来の物語が終わっているのにまだコレが終わっていないということはそれをまだワダツミが留めているということだろう。
ワダツミの手には表紙に『海神物語』と書かれた本がありその本に向かって何枚もの紙が飛んでいる。
終わりにさせない為物語を綴る…先延ばして終わり方すら改変しているのか。
「だったらあの本は…この結界の素となっている魔道具みたいなのか」
「ならば僕が先延ばしている紙を燃やそうじゃないか…憤怒の炎よ集いて形を成せッ!」
アルキアンがそう叫ぶと黒い炎は彼の元へと集い剣へと形を成した。
飛んでいく剣がワダツミに集まる紙に向かって飛んでいくが…。
「海の支配者であるワダツミに炎とは…馬鹿なものよ!」
ワダツミがそう言うと飛んでいる紙が溶け水となりそれが龍の形をした水へと変質しアルキアンの炎の剣へとぶつかる。
確かに水と火であれば相剋する存在のためアルキアンの炎はワダツミの水には…あまり効果を為さないだろう。
アルキアンは炎が効いていないことを知ると黒い炎を集め鎧として纏い腰から剣を抜き突撃する。
剣を持ち飛んでくる水を切り上げると斬られた水は意識を持ったように動き棘となりアルキアンを突き刺そうとする。
ワダツミはアルキアンが水に翻弄されているのを見てから下半身から生える多くの触手で急接近する。
そしてその触手の先にいる狼の顎を大きく開け喰らわせるように襲う。
それを飛んで避けようとし跳躍すると水は槍やトライデントとなりそれを狼の顎が掴む。
ワダツミは背中についた大きなドラゴンの翼を大きく動かし空へと舞い上がる。
翼さえ無ければ地に落ちるだろうか?
それとも…いやこんなこと考えている場合ではないだろう。
頭で常に動き今もなお空中戦を繰り出している存在の位置や次に行う行動の予測。
雷ならばそれより上にいる存在へ当たるため…今回の場合クトゥルゥが近すぎるから意味が無いか。
「ならば…魔法陣展開!『魔星砲』発射ッァ!」
空に魔法陣を幾つも描きだしてそれを描き次第ワダツミへと撃ち出す。
撃ち出した魔星砲は軌跡を描きながら空を駆けてワダツミの頬を掠める…がこちらを見向きもしない。
挑発のつもりで撃ったのだがこちらを見向きもしないところを見る限り目の前の敵に集中しすぎているのだろう。
でかい一発を喰らわせよう…空を悪魔の姿で羽ばたくアルキアンに目を合わせる。
シンボルは暗き夜に見守る髑髏に星…今出来る最大限の強化を施し構築を開始する。
シンボルが二つ…もちろん魔力の制御や魔法陣を同時に二つも構築するようなものだから難易度も高い。
「魔法陣展開…コレが検証を重ねて生み出した産物だ…じっくり味わいな『星ノ呪縛』」
地上に描かれた魔法陣から幾つもの黒い鎖が這い出しワダツミを捕まえる。
振り払おうとしても呪いのように離れず雁字搦めとなり空から地上に引き摺り込もうと引っ張っていき地上へと叩きつけた。
星自体に引き摺り込む重力に執念深い死者の象徴にして呪いである髑髏のシンボル。
それに今まで作り出してきた前時代の魔術と私の魔術を合わせたコレこそ本当の複合魔術。
シンボル自体に意味を持たせる…私が思い描いた魔術とは少し違うが魔法を凌駕するモノ。
禁忌にも似た魔術である。
…それ故に魔力の消耗が激しいが魔法の呪文を唱えてないから神の力を借りずに済むため代償も無い。
「クソがぁッ!何故ワダツミとなりし我が…ああぁこんな目に…!」
「コレで終わりだよッ!」
ワダツミが叫ぶその真上の上空でアルキアンは黒い炎を剣に集めそれを大剣と成した。
突き刺すように下に向け地に縛り付けられ動けないワダツミに向かって急降下して行く。
*今回使った魔術一覧*
『星ノ呪縛』:その地に眠る死者の願いや呪いを纏う意思を持った鎖が対象を縛り星の中心へと連れ込もうとしていく。鎖はそこで亡くなった者が多ければ多いほど重量と効力を増し奈落の底へと突き落とす。
周囲の色は抜け落ちたように白く染まった後鮮やかな光が老人を中心に降り注ぐ。
その光景をクトゥルゥは傍観し今もなお魚人達を肉塊の化け物へと変えていく。
「さぁ今こそ超越にして卓越を迎える転身の時…我々こそ最上の『人』であり陸、空、そして…宙をも支配する神の種族なのだ!嫉妬の権能『事実改変:我身転生』ッ!」
老人はそう叫ぶと手に持つ錫杖で自分を突き刺した。
それはただの自傷かと思われたが突き刺された部分の皮膚が蛹のように剥がされ白い光が溢れ出す。
ヒビが入り老人の身体は砕け散る…その中から出てきたのは正に異形を模った存在。
背中にはドラゴンの翼に鬼族のような屈強な肉体、天使のような輪が頭に浮かび下半身は蜘蛛のような身体がついておりそこには伸び縮みする触手がありその先に狼の顔が浮かび上がっている。
「ワタシは…王女のように美しく、ドラゴンのように空を飛び、人のように陸を踏みならし、誰からも信仰され、獣を導き、憎き王の如く多くのことを成し遂げる大いなる存在。我こそが至上の王にして海を統べる神…我こそがワダツミなのだッ!」
『ふむ完全に力に呑まれているな…この$°#☆+〆すら倒そうとするか…だがまだ足りぬな』
クトゥルゥはワダツミと名乗る存在にそう投げかけると自らの触手で地上に転がる魚人を薙ぎ払おうとする。
だがそれを阻止しようと6つ目の魚人がその触手を食い止める。
6つの目は俊敏に動き地に転がる魚人、肉塊に襲われる魚人、そしてクトゥルゥからの悪戯ともいえる薙ぎ払いに対処する。
あれじゃいつかは体力が切れて動けなくなるだろう。
なら私がすべきことはあのワダツミを倒し王女を殺す…いやもうコレには意味が無いか。
何せもう王女は事切れている。
本来の物語が終わっているのにまだコレが終わっていないということはそれをまだワダツミが留めているということだろう。
ワダツミの手には表紙に『海神物語』と書かれた本がありその本に向かって何枚もの紙が飛んでいる。
終わりにさせない為物語を綴る…先延ばして終わり方すら改変しているのか。
「だったらあの本は…この結界の素となっている魔道具みたいなのか」
「ならば僕が先延ばしている紙を燃やそうじゃないか…憤怒の炎よ集いて形を成せッ!」
アルキアンがそう叫ぶと黒い炎は彼の元へと集い剣へと形を成した。
飛んでいく剣がワダツミに集まる紙に向かって飛んでいくが…。
「海の支配者であるワダツミに炎とは…馬鹿なものよ!」
ワダツミがそう言うと飛んでいる紙が溶け水となりそれが龍の形をした水へと変質しアルキアンの炎の剣へとぶつかる。
確かに水と火であれば相剋する存在のためアルキアンの炎はワダツミの水には…あまり効果を為さないだろう。
アルキアンは炎が効いていないことを知ると黒い炎を集め鎧として纏い腰から剣を抜き突撃する。
剣を持ち飛んでくる水を切り上げると斬られた水は意識を持ったように動き棘となりアルキアンを突き刺そうとする。
ワダツミはアルキアンが水に翻弄されているのを見てから下半身から生える多くの触手で急接近する。
そしてその触手の先にいる狼の顎を大きく開け喰らわせるように襲う。
それを飛んで避けようとし跳躍すると水は槍やトライデントとなりそれを狼の顎が掴む。
ワダツミは背中についた大きなドラゴンの翼を大きく動かし空へと舞い上がる。
翼さえ無ければ地に落ちるだろうか?
それとも…いやこんなこと考えている場合ではないだろう。
頭で常に動き今もなお空中戦を繰り出している存在の位置や次に行う行動の予測。
雷ならばそれより上にいる存在へ当たるため…今回の場合クトゥルゥが近すぎるから意味が無いか。
「ならば…魔法陣展開!『魔星砲』発射ッァ!」
空に魔法陣を幾つも描きだしてそれを描き次第ワダツミへと撃ち出す。
撃ち出した魔星砲は軌跡を描きながら空を駆けてワダツミの頬を掠める…がこちらを見向きもしない。
挑発のつもりで撃ったのだがこちらを見向きもしないところを見る限り目の前の敵に集中しすぎているのだろう。
でかい一発を喰らわせよう…空を悪魔の姿で羽ばたくアルキアンに目を合わせる。
シンボルは暗き夜に見守る髑髏に星…今出来る最大限の強化を施し構築を開始する。
シンボルが二つ…もちろん魔力の制御や魔法陣を同時に二つも構築するようなものだから難易度も高い。
「魔法陣展開…コレが検証を重ねて生み出した産物だ…じっくり味わいな『星ノ呪縛』」
地上に描かれた魔法陣から幾つもの黒い鎖が這い出しワダツミを捕まえる。
振り払おうとしても呪いのように離れず雁字搦めとなり空から地上に引き摺り込もうと引っ張っていき地上へと叩きつけた。
星自体に引き摺り込む重力に執念深い死者の象徴にして呪いである髑髏のシンボル。
それに今まで作り出してきた前時代の魔術と私の魔術を合わせたコレこそ本当の複合魔術。
シンボル自体に意味を持たせる…私が思い描いた魔術とは少し違うが魔法を凌駕するモノ。
禁忌にも似た魔術である。
…それ故に魔力の消耗が激しいが魔法の呪文を唱えてないから神の力を借りずに済むため代償も無い。
「クソがぁッ!何故ワダツミとなりし我が…ああぁこんな目に…!」
「コレで終わりだよッ!」
ワダツミが叫ぶその真上の上空でアルキアンは黒い炎を剣に集めそれを大剣と成した。
突き刺すように下に向け地に縛り付けられ動けないワダツミに向かって急降下して行く。
*今回使った魔術一覧*
『星ノ呪縛』:その地に眠る死者の願いや呪いを纏う意思を持った鎖が対象を縛り星の中心へと連れ込もうとしていく。鎖はそこで亡くなった者が多ければ多いほど重量と効力を増し奈落の底へと突き落とす。
10
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる