孤児のTS転生

シキ

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孤児と大罪を背負う英雄

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船の個人用の部屋…に行く筈だったのだが途中でアルキアンに用事がある貴族に捕まってしまった為只今私1人で個人用の部屋でくつろいでいた。
部屋は狭く内装も机と椅子とベッドしか置いていない簡素な作りと言わざるおえない内装となっていた。

まぁコレだけ人が乗る船だしコレぐらい部屋が小さく無いと乗員することすら難しいのだろう。
にしても本当にすることがない。
アルキアンと駄弁って時間を潰すこともできないし1人でいてもやる事がない…いや一応魔術の研究とかやることはあるんだがやる気にならない。

「ふぁぁぁ…甲板にでも行って海でも見てよ」

そう呟き寝そべっていたベッドから降り甲板へと移動する。
移動する時こちらをチラチラと奇異の目で見てくる視線が刺さるがこういうのは大抵無視しとけばどうにかなる。
まぁたまに馬鹿が突っかかってくるが…というかそんなに冒険者格好が貴族様には珍しいかね?

海を見ると一面相変わらず青が広がっておりその色の濃い青のせいで魚も見えない。
甲板の端に行き下の海を見ると移動の際に出る白い泡のせいでせっかくの青が残念に見えた。

「あ、魚…」

海の表面を泳いでいた珍しい魚を見かけたが見た瞬間に船に吸い込まれるように近づいて来て白い泡に埋もれていってしまった…。
こうしてみるとこの船はかなりの速度で進んでるんだなぁとふと考えてしまう。

あんまり考えずそのまま甲板の端の手すりに捕まり船といえばということで名シーンの再現だとか1人で楽しみやった後になって頭おかしいことしてたなぁとか反省しつつ時間は過ぎていく。
…そういえばコレが初めてかな私が船に乗ったのって確か前世でも船には一度も乗ったことってなかった筈だし。
船酔いは大丈夫そうだな気持ち悪くなっていないし…あれって三半規管がああだこうだで気持ち悪くなるんだったか?

「まぁ…知らんけど」

知らんけどっていいよね何となく肯定した後に否定入れると有耶無耶にできる感じが不確定さを醸し出しててその情報が間違っていても責任は自分にはないって感じがさ…社会人になって言わないように直したことなんだが最近はずっとこんな感じだ。
自分の言葉に責任を負わないってのは本当に良いことだと思うわけだよ。

遂確定していることにも癖で言ってしまって困らせたこともあったなぁとか思い出しつつ目を遠くに向ける。
日は傾き出してきており…いや何時間私ここにいたんだ?

「うぅお腹空いた…何か食べなくちゃ」

急いで虚空庫から朝に移動前に買っておいた調理済みの魚を取り出して齧り付く内臓の処理がほぼされていない小さめの魚だった為か少し苦いがその苦味も今は美味しく感じる。
噛めば噛むほど唾液と混じり旨みは増していく…『暴食』を持ってて一番の利点がこの美味しく食べれるということだと思う。

え…それ以外はどうだって?
そんなんクソの役に立たないスキルに決まってるじゃないか。
何でも食べれるようになるという利点がありそれと私のスキル『神ノ因子』によって食べたモノの一部を身体に構築するという相乗効果は本当に奇跡レベルの噛み合いその結果『メタモルフォーゼ』という魔物になれる自傷技が出来るが…コレが無かったら何でも食べれる代わりに食欲だけ無限に湧くという要らないスキルだ。

まぁそれでも要らないものは要らないわけだが。
満たされることのない食欲のせいで苦しむのなんてデブか私ぐらいだろう。
…大罪でありこの世界では特殊なスキルとして存在する『暴食』。
私の前に持っていたのは私が倒したあのドロドロのスライム…国が討伐隊を作ってそれでも倒せず逃げ延び弱っている所を私が倒す感じで手に入れたこのスキル。

あのスライムはこのスキルを使ってどのぐらい食べ続けてきたのだろうか…思い出すと確かにあのスライムは『暴食』の名に相応しい立ち回りだった。

「あれ?そういえばアルが持ってるのって『憤怒』だよな…何でアルはその意味の通りに怒り狂ってないんだ?」

アルキアンはいつも会うと優しく話を聞いてくれるし大抵のことは笑って許してくれる。
釣りであの時釣れないアルキアンを私が煽ってもイラっとはしただろうけどやる気に満ち溢れて怒っていなかった。
私とアルキアンとで何が違うのだろう?

アルキアンがオーガを倒したことで手に入れた『憤怒』…それをどうやって制御しているのか正直相談したいが私が『暴食』を持っているっことは何となくだが言いたくない。
何故と聞かれればわからないの一言に尽きるが…ま、まぁそんなことはどうでも良くないが良いのだ。

「さて、現実逃避はコレぐらいにして…アレは何だろうな?」

視線の先には異世界のテンプレというべきか大きなタコが佇んでいた。
細かくいうとタコではないのだが…外見はタコに目を増やし触手も普通のタコは8本の筈だが見た感じ8本以上確認できるし何と言ってもタコなのにイカのような鰭が頭に付いている。
コイツは果たしてタコなのかイカなのか…。
いつの間にか船は停止しており海面に浮上してその先にいるビルほどの大きさのタコのようなナニカと睨み合っているようだ。

「これはアレだなクラーケンってやつじゃないか?テンプレ的にさ」

確か冒険者ギルドで依頼で街近くの海の調査でクラーケンを見つけたから急遽国中のAランクパーティが集められたというのが過去の記録にあったなぁ…まぁコイツを倒すにはAランク以上の実力がなきゃいけないのは確定だろう。
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