孤児のTS転生

シキ

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孤児の学園生活

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私は老人執事についていきこの邸宅の中に入ることとした。
中に入ると後ろのレンガっぽい素材でできていた扉は私が初めてきた時のように普通の壁に戻るように動き出し私が完全に中に入り数歩歩いた時点で壁に戻ってしまった。

にしてもここは仮にも王族の家のはずなのだが…予想外に静かすぎる。
いや別に普通の水の流れる音などの生活音やらはどこかから聞こえてくるが人の声が聞こえてこないし鳥の囀りすら聞こえてこないなんてのは異常なのではないだろうか?
レイベル殿下は王族のご子息で貴族の最上位に君臨する…そのため多くのメイドやら召使いやらを囲って生活しているからこのような静けさは異常だ。

それにこの歩いている間に通り過ぎる人も異常だ。
この邸宅を歩いている間に会う通り過ぎる人はまるで息をしていないかのような呼吸が聞こえないし気配も何故か私がはっきりそこにいると判断しているのに頭の片隅で「本当にそこにいるのか?」と錯覚を覚えてしまうぐらい気配が薄い奴ばかりだ。
そうまるで私が使用しているスキルを日常的に使用している奴がここにはいっぱいいる。
…まさか王族は暗殺一家だった可能性が微レ存?

「いや、それはないか…」

私はそう吐き捨て再びコチラを全く見向きもしない執事を追うこととした。
そのまま歩くこと数分ようやく執事はとある部屋の前まで行き止まった。
そこはこの邸宅に似合わないほど輝いて見える赤色と金色で装飾された大きな扉がそこにあった。

「この中で殿下がお待ちになっておられます…無礼がないようお願いいたします」

そう執事が私に向かって言うとまるで霧のようにその姿は薄くなり徐々に半透明となり最後にはその姿を消してしまった。
その光景を目の当たりにしてふと「本当に王族って暗殺一家じゃないよな?」と言う考えというか考察を頭の中で考えながら扉を力一杯開く。

「やぁ待っていたよ…レナ嬢」

力一杯開いた先にはシンプルな内装をした部屋がありその中心にはソファーが設置されておりそこにレイベル殿下が座りながらコチラへと話しかけてきた。
その顔は教室では見ないような鋭い眼光をしておりまさに臨戦体制に近い雰囲気を醸し出している。
それだけ私が今から行うことは大切なことなのだろう…。

「君に今日ここまできてもらったのは一つお願いをしたいからだ…」

そう言いながらレイベル殿下は立ち上がり私に一枚の紙を差し出してくる。
私はそれを受け取るとレイベル殿下を見るとその目は紙の方を見ていたため視線を紙の方へと下げた。
渡された紙を読んでみるとその内容は報告書のようなものだった。
報告内容はだいたい訳すと第一王子と宗教国家との繋がりがあるというものだ。

「宗教…国家?」

「レナ嬢はあまりこの国のことを分からないのか?…今回はその知識も必要だから教えてあげるよ」

私が聞きなれない言葉を見つけ口で疑問を問うように呟くとレイベル殿下は私を一瞥した後また紙の方に視線を移しそう答え私に宗教国家について教えてくれた。
宗教国家…これは私たちが今いる国々が言っているのだがあちらの国の住人は自らの国を神聖国家と名乗っており自らを神使という種と言い張り他国を下等種と侮蔑するなんとも選民意識が高い国だそうだ。

まぁそれで正式名称がマデリラ宗教国家と言うのだがこの国はイードラ王国をかなり敵視しているようで昔から戦争ばかり起こしていたそう。
理由は我々以外の神が存在してはならないだとか邪神が作りし国を討ち滅ぼすためだとか色々な理由をつけて侵攻してくるらしい。
だがその侵攻もあちらが戦力を失うまで行っていたため最近ではおとなしくなってきていたらしいがここに来て第一王子とその宗教国家が接触しているという報告がきたという感じだ。

そしてこの手に持つ紙の内容にはとあることが書かれてある。
それは第一王子と宗教国家の接触…宗教国家への支援が行われており第一王子の裏切り行為が目撃されているということだ。

「これが民衆にバレてしまえば王族の権威は地に堕ちてしまう。だからこそ兄を…ザージスを討たなければならない。無理を承知で頼む…手伝ってくれないか?」

その声に思わず考えなしに頷きそうになるが舌を噛んでその思考を吹き飛ばす。
その声、その表情…思い出してくる…誰かに何がなんでも縋ろうと必死になっていた自分に重なる。
同情心が心の臓から気持ち悪いほど湧いてきて咽せ返るようだ。
あぁ嫌だ嫌だこんな感じに流されてしまう自分が心底嫌になってくる…昔ならきちんとNOと言えたはず前なら断っていたはずなのにその声に表情に心が締め付けられ無条件に反応したくなっている。

冷静に判断しろよ私。
私が今やるべきことは他にもあるはずだ。
他人を助けることで何を得ることができる?
それをやったことで私は強くなることができるか?
考えれば…考えさえすれば私は冷静で完璧な判断ができるはずなんだ。

「ふぅ…そこまでやってやる義理はないよ。私はただ…学園内での護衛だけ頼まれた冒険者にすぎない」

そうして考え抜き一息つきそう言葉に出す。
これは本心だ。
私は学園内でのみ護衛を頼まれた存在であり学園外では他人の冒険者という立ち位置。
私がそこまでやる義理は無いしやる必要がない…。

「そう…か。うん…今日はありがとう。下がって…いいよ」

レイベル殿下はそう言うと私の手に持っている紙を優しく奪うと後ろを向きソファーに座りコチラを見つめてきた。
私はその視線を見ることなく視線を下に向けその部屋から出ることとした。

「後味が悪りぃ…」

だがこれでよかったのだ。
私は冷静で完璧な判断を行なってそう判断したのだ。
あぁ時と場合による人情はこれだから嫌いだ…無条件で何もかもを情に流して許して助けてしまう。
その後のことなんか予想もしないで動く…そんな勢いによる行動が私は嫌いだ。
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