陰キャでも出来る!異世界召喚冒険譚!

渡士愉雨

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94 決戦の日――怒涛の総攻撃!……だったんだけど

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「行くぞ、わたる!」

 落下していく屍赤竜リボーン・レッドドラゴン――絶好の攻撃の機会に、守尋もりひろたくみくんが叫んだ。
 
「了解だ、巧っ!!」

 それに応えるのは守尋くんと一番親しい、きっと親友の津朝つあさわたるくん。

 二人はそれぞれの剣に思いっきり魔力を込めていく。
 結果守尋くんは青く、津朝くんは赤く、それぞれに魔力の光が溢れ出て、巨大な刃が形を成していた。
 クラスの皆の強化バフが乗りまくった守尋くんと、そんな彼に【協調シンクロ】する事で同等の力を纏う津朝くん。
 多分、を除けば、今の私達に可能な最大火力×2がここにあった。
 
「み、みみみ、道は私が作るんでっ!」
「助かる!」
「サンキュー!!」

 そんな二人が純粋な全力を出しやすくする為に、私・八重垣やえがき紫苑しおんが落下していく屍赤竜リボーン・レッドドラゴンへの道を、魔力の具現化で空中に作り上げる。
 ジャンプして斬るの流れだと踏み込みができない分、折角の威力も多少落ちちゃうからね、うん。
 相手が相手なので、今はほんの少しでも威力を上げる努力をしておきたかったのです。

 そうして二人が駆け抜け様に狙うのは――屍赤竜リボーン・レッドドラゴンの喉。
 私の【ステータス】による情報だと屍赤竜リボーン・レッドドラゴン息吹ブレス関連の攻撃の起点はそこだ。
 つまり、喉部分を潰す事さえ出来れば、少なくとも息吹ブレス攻撃を封じる事が出来る、ということ。

 弱点を狙い撃ちするようで後ろめたい部分も少しはありますね、ええ。
 でも、少なくとも今はそこに拘る戦いではないし、私だけの戦いという訳じゃないし。
 である以上、価値観を皆に押し付けるつもりは毛頭ないし、今は屍赤竜リボーン・レッドドラゴンを倒す事が最優先!

 なので、可能なら喉だけと言わず、首を断ち切れればありがたいんだけど――!

「本日二回目! 必殺の征進一刀せいしんいっとう!!」 
模倣トレス・征進一刀《せいしんいっとう》!」

 私だけでなく、皆も恐らく同じ考えだろう――そんな期待を乗せた二人の一撃×2が炸裂する――が。

「ぐ、がぁぁぁっ! かてぇっ!」 
「すまん! 首はちょっと無理だった!」

 交差した二人の斬撃は、屍赤竜リボーン・レッドドラゴンの堅固な肌を破り、首を確かに切り裂いていた。
 阿久夜あくやみおさんの『贈り物』でほぼ完全再生したからか、血が噴き出るようになっていて鮮血が零れていく。

 だけど、二人が魔力の刃が消失するまで振りぬいても首を切り落とすまでには至らなかった。

 斬撃の直後、屍赤竜リボーン・レッドドラゴンは意識が多少戻ったのか落下停止していた。
 だが完全ではないらしく、攻撃を終えた二人の離脱を簡単に許している。

 そして――!!

「き、ききき、気にしないでっ! 私もやってみる―――フゥゥゥゥッ!!」

 可能な限りの自己強化魔法を全身に駆け巡らせて、かつて齧った武道の経験を呼び起こす。
 同時に自分を鼓舞するべく、歯を剥き出しに獰猛な笑みを浮かべた。
 少し荒っぽくいかせていただきますよー!!

 私は、それらを全て載せて、さらに魔力を上乗せしたヴァレドリオンの白光の超長々刀身を突きの形で解き放った。

「必っ殺ぅ……穿孔一貫せんこういっかんッ!!!」
 
 イメージするのはフルスイングの正拳突き。
 それでいて狙いは精密に一点集中……二人が切り裂いてくれた喉の傷跡だ――!

「セイ、ヤァァァァッ!!!」

 気迫を吐き出しながらの渾身の一撃は確かな手応えと共に屍赤竜リボーン・レッドドラゴンの喉へと突き刺さり……貫通した――!

 私の魔力刃だけでは貫くのは不可能だったが、二人が傷をつけてくれたからこそ成し遂げられた。
 後はこのまま横に薙いで、首を両断出来たら――!!  

 そうするべく、私は魔力の足場の上でヴァレドリオンを握り締め、刀身を動かそうとする。 
 だけど。

「ぐ、ぐぅぅぅっ!? や、刃が、動かないぃぃぃ――!」

 意識を完全に取り戻しつつある屍赤竜リボーン・レッドドラゴンが喉の筋肉を締めているのか、刃は思うように振るえない状態だった。
 あるいは私の膂力が守尋くん達と同レベルであれば、それさえ越えて振りぬけたのかもしれないけれど――今はないものねだりをしていても仕方がない。
 私の強化バフを頼みたい所だけど、それが可能な人達とは距離があって、それを待っている時間は多分ないね、うん。

 であるならば、最適解は……!

「こ、ここ、こうなったら――解放リリースッ!!」

 私は斬撃を諦めて、魔力の刀身を撃ち込んで炸裂させる事を選択し、ヴァレドリオンから刀身を切り離す。
 魔力を放出する形になるので、MPを300以上一気に消耗する事になるけど、この機を逃せばまともなダメージは入らないかもしれない。
 直後、切断する前の私の意志に従って、超長々の刀身は喉の傷口へと一気に収束――魔力の爆発を巻き起こした。
 
 これで首が千切れるほどのダメージになれば御の字なんだけど――やっぱり、そう甘くないみたい。
 傷口はさらに広がって、ダメージは大きくなったけれど、首そのものは繋がったままだった。

「ご、ごご、ごめんなさいぃー! 切れませんでしたぁ――!!」
「いや――よくやってくれた」
「うん、傷口を広げてくれたから、狙いやすくなったよね」 
 
 私が謝罪の声を上げた直後答えてくれたのは、堅砂かたすなはじめくんと志基しきやなぎくん。
 二人の掲げた杖は待ち詫びていたとばかりに光り輝いていた。

「合わせて行くぞ」
「了解――今度は僕がコピらせてもらうね」
「1、2、3!!」
「「剛雷閃刃レグ・ラグト・リット・レードッ!!」」

 魔術師二人による発動の魔術言語が唱和した後、降り注いだ雷を元に、空中で形成された二つの大きな雷の刃が射出。
 文字どおり電光の速度で疾駆した雷刃は――引き寄せられるかのような正確な軌道で屍赤竜リボーン・レッドドラゴンの喉の傷に直撃した――!!

『―――――――――――――――――――――!!!!!!!』

 落雷の炸裂音と共に、それと同等の屍赤竜リボーン・レッドドラゴンの叫びが周囲に響き渡る。
 直後、ドラゴンは仰向けになりながら再び落下……地面に叩きつけられた。

「よっし!」
「決まったー!!
「おおっ! やっ―――」

 地面に倒れ伏すドラゴンの姿を見て、喜びの声を上げかける皆――だけど……!!

「いやっ! 違うぞ!!」
「み、皆っ!! ドラゴンは、まだ――」

 ドラゴンの身体の音を『贈り物』で把握し続けている河久かわひさうしおくんと、
 この場にいる皆の、そしてドラゴンの【ステータス】の状態も確認継続している私は気付いていた。

 屍赤竜リボーン・レッドドラゴンはまだ――!!

 私達がそうして警戒の呼びかけをしようとした時、その巨体から想像出来ない速度で起き上がったドラゴンの赤眼が強く強く輝いた。
 これまで私達が攻撃で放っていた魔力光とはまるで違う――深く強く美しい煌めき。 

 それを認識した次の瞬間――私の、いや、この場のドラゴンを除く全員の身体から力が一気に抜けていった……。

 うぐぐぐ、こ、これはまずいかもぉー!? 
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