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4 気はまったく進まないけれど、陰キャも意見言わなくちゃいけない時があり
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「あ、ああああ、あの! ちょ、ちょっと、いいかニャッ?」
クラスの空気を淀むのを防ぐべく声を上げた、私・八重垣紫苑。
だけど、思いきり噛んだ上に思いきり声を裏返らせてしましましたとさ。
「……」
「……」
結果辺りが何とも言えない空気にっ!
いや、寺虎くんでさえ笑わずに、皆でこう可哀想なものを見るような眼差しを向けてくれる優しさ(?)に内心悶えまくる私。
私が逆に空気を淀ませてしまったのではないでしょうか……ううう、申し訳ないですし恥ずかし過ぎる……穴を掘って埋まりたい。
そうして私が精神的には全身火達磨状態でプルプル震えていると堅砂くんは皆への言葉を打ち切って、こちらへと視線を移してきた。
「――ああ、八重垣、だったな。なんだ?」
うう、やっぱり薄ぼんやりとしか覚えられてない――まぁ私は目立つタイプじゃない、というか陰か陽かで言えば間違いなく陰側だから仕方ないけど。
それでも半年以上一緒にクラスにいるんだけどなぁとしょんぼり。
でも何事もなかったかのように振舞ってくれたのには感謝です、はい。
心の中で感謝の土下座をしながら、私は震えた声で予定していた提案を口に――。
「……」
しようとして中々出来ませんでした。
うう、すみません、話慣れてないもので。
みんなの何とも言えない視線が集まる中、私は咳払いで喉を整えてようやく提案を口にした。
「え、ええと、そのあの、ですね。
わ、私は、ここで待機する人たちのグループを作りたいんだけど、いい、かな?」
「待機? どういう事だ?」
「か、かかか……」
「落ち着け、取って食べやしないから」
「ほ、本当に?」
「……。ホントに取って食べると思ってたのか……?」
「いえいえいえ! 滅相もございません!」
「だったら落ち着いて話してくれ」
呆れ果てた様子の堅砂くん……うう、ホントすみません。
謝罪は今度改めてするとして、折角私なんかに与えられた機会を無駄には出来ない。
今は喋らねば――意を決して私は改めて自分の意図を伝える事にした。
「か、かか、堅砂くんも言ってたけど、ここは異世界だよね?
将来的にはともかく、少なくとも今現在の私達の身寄りは、えと、私達だけでしょう?
な、なのに、助け合えない状況になったら困るんじゃないかなって思って。
例えば、その、皆が冒険に行ったと仮定して、いざという時の助けが必要になった時、連絡先はどうする、のかな?
皆が皆冒険してたら連絡を取るのも、多分、一苦労、じゃないかなぁ」
「あ、そりゃあそうだな……」
私の意見に守尋くんが頷く。
説明下手じゃないかなと思っていたので、意味が伝わってとりあえず安堵しつつ、私は言葉を重ねた。
「ぼ、冒険者協会って相互互助組織があるってラルエル様言ってたけど、
そこだけを当てにするのも難しい時があるかもだし、
だ、だから、ある程度の人数は、待機――ううん、皆が帰る場所を作って守る役割の人がいるんじゃないかなって、思ったんだけど、どうかな」
「おいおい、冒険して命懸ける奴もいるのにビビって引き篭もってて……」
「――も! 勿論! そうして守る役割の人も色々役割や仕事、しなくちゃいけない事があると思うの!」
横から混ぜっ返そうとする寺虎くんの意見は申し訳ないけど強引に遮らせてもらう。
今ごちゃごちゃされたら二度と喋れない気がするので必死です、はい。
ファンタジーな世界というと戦わなくちゃいけないイメージがあるけど――全員がそうできるはずもない。
実際、クラスの中には運動が得意ではない人、気質的に向かない人がいる。
そんな中で、戦わないのが臆病、そういう印象が生まれてズルズル引きずるようになったらクラスメート同士の軋轢の理由になる。
趣味で幾つか読んだ事がある、クラスごとトラブルに巻き込まれるタイプの物語では、そこから全体が瓦解する事も少なくないからね、うん。
そうなったらもう悲惨の一言だろう。正直想像するだけで怖い。めちゃくちゃに怖い。
逆にちゃんとクラスが一丸になっている場合は、クラス全体の生存率がグッと上がるはずだよね。
物語だとしても、現実だとしても。
――あんまり自己主張するのは好きじゃないけど、ここは恥をかいてでも言っておかないとマズい気がするので、滅茶苦茶に緊張しつつ、私は意見を述べた。
「か、帰る場所として家とかを買うなり借りるにしてもお金が必要になるから働かないとだし。
そういう場所を維持する事を引き篭もってる、なんていうのは間違いじゃないかな……って、私は思うよ、うん。
あ、ああ、あくまで今の所は仮定の話だけどね。冒険の話もそうだけど」
「うん、すごく納得だな。寺虎もそう思うだろ?」
「――むぅ。まぁ留守番は必要かもな」
どうにか納得してもらえたようでホッとする。
そこでチラリと、堅砂くんに視線を送ると彼も納得してくれたようで頷いた。
「確かに、拠点は必要だな。
最終的に皆がどうするかどうなるかまでは現時点では分からないが、それまで互いに助け合う事も、その為の場所も必要だ。
じゃあ、ひとまずは冒険組と拠点組に別れて、どうするか話し合って決めていくという事で異論ないか?」
「いいと思う」
「いいんじゃねーの? 俺は冒険できればいいし」
堅砂くんの確認的な問いかけに、皆はそれぞれに了解の返答を返した。
問題はここから最終的にはどうなるかだが、ここからは手探りで進んでいくしかないと思う。
ここは、私達にとって何処までも果てしなく未知の世界だし。
だからホント、みんな仲良くしてほしいなぁ、うん。
出来れば私が何もしなくても仲良くでお願いします。
争いの仲裁とか陰キャには辛いので……いや、マジで無理なんで。
「その上で最終的には、ここで面倒を見てもらえる猶予期間の終わりまでに各自が身の振り方を考えていく事になる。
そうなった時、本当に何もできない、何もする気がない奴は見捨てられても仕方がないからな。
――ちゃんと考えておいた方がいいぞ」
最後の最後できっちりと釘を刺す堅砂くん――いや、うん、ごもっともなんですが、何も今言わなくても。
そう思ってなんとなく堅砂くんに視線を送ると、彼はプイと視線を逸らした……ううぅ、前途は多難だ。
そうして意見がまとまるのを待っていたかのタイミングで、聖導師長ラルエル様の使いの人が、移動用の馬車の到着を知らせてくれた。
私達が当座暮らす事になる街へ進む馬車、その荷台で揺られながら、私はこれからどうなっていくのかの不安と、ほんの少し何処か落ち着かないながらも何かを期待するような、そんな心地でいた。
そんな思いがこれからずっと続いていく……否、その上で、想像を越えた様々な困難に立ち向かっていく未来を知らずに。
そして、私の『私が何もしなくても仲良く』という願いは悲しい事にどんどんどんどん裏切られていくんだよね……どうしてあんな事に――ううう。
クラスの空気を淀むのを防ぐべく声を上げた、私・八重垣紫苑。
だけど、思いきり噛んだ上に思いきり声を裏返らせてしましましたとさ。
「……」
「……」
結果辺りが何とも言えない空気にっ!
いや、寺虎くんでさえ笑わずに、皆でこう可哀想なものを見るような眼差しを向けてくれる優しさ(?)に内心悶えまくる私。
私が逆に空気を淀ませてしまったのではないでしょうか……ううう、申し訳ないですし恥ずかし過ぎる……穴を掘って埋まりたい。
そうして私が精神的には全身火達磨状態でプルプル震えていると堅砂くんは皆への言葉を打ち切って、こちらへと視線を移してきた。
「――ああ、八重垣、だったな。なんだ?」
うう、やっぱり薄ぼんやりとしか覚えられてない――まぁ私は目立つタイプじゃない、というか陰か陽かで言えば間違いなく陰側だから仕方ないけど。
それでも半年以上一緒にクラスにいるんだけどなぁとしょんぼり。
でも何事もなかったかのように振舞ってくれたのには感謝です、はい。
心の中で感謝の土下座をしながら、私は震えた声で予定していた提案を口に――。
「……」
しようとして中々出来ませんでした。
うう、すみません、話慣れてないもので。
みんなの何とも言えない視線が集まる中、私は咳払いで喉を整えてようやく提案を口にした。
「え、ええと、そのあの、ですね。
わ、私は、ここで待機する人たちのグループを作りたいんだけど、いい、かな?」
「待機? どういう事だ?」
「か、かかか……」
「落ち着け、取って食べやしないから」
「ほ、本当に?」
「……。ホントに取って食べると思ってたのか……?」
「いえいえいえ! 滅相もございません!」
「だったら落ち着いて話してくれ」
呆れ果てた様子の堅砂くん……うう、ホントすみません。
謝罪は今度改めてするとして、折角私なんかに与えられた機会を無駄には出来ない。
今は喋らねば――意を決して私は改めて自分の意図を伝える事にした。
「か、かか、堅砂くんも言ってたけど、ここは異世界だよね?
将来的にはともかく、少なくとも今現在の私達の身寄りは、えと、私達だけでしょう?
な、なのに、助け合えない状況になったら困るんじゃないかなって思って。
例えば、その、皆が冒険に行ったと仮定して、いざという時の助けが必要になった時、連絡先はどうする、のかな?
皆が皆冒険してたら連絡を取るのも、多分、一苦労、じゃないかなぁ」
「あ、そりゃあそうだな……」
私の意見に守尋くんが頷く。
説明下手じゃないかなと思っていたので、意味が伝わってとりあえず安堵しつつ、私は言葉を重ねた。
「ぼ、冒険者協会って相互互助組織があるってラルエル様言ってたけど、
そこだけを当てにするのも難しい時があるかもだし、
だ、だから、ある程度の人数は、待機――ううん、皆が帰る場所を作って守る役割の人がいるんじゃないかなって、思ったんだけど、どうかな」
「おいおい、冒険して命懸ける奴もいるのにビビって引き篭もってて……」
「――も! 勿論! そうして守る役割の人も色々役割や仕事、しなくちゃいけない事があると思うの!」
横から混ぜっ返そうとする寺虎くんの意見は申し訳ないけど強引に遮らせてもらう。
今ごちゃごちゃされたら二度と喋れない気がするので必死です、はい。
ファンタジーな世界というと戦わなくちゃいけないイメージがあるけど――全員がそうできるはずもない。
実際、クラスの中には運動が得意ではない人、気質的に向かない人がいる。
そんな中で、戦わないのが臆病、そういう印象が生まれてズルズル引きずるようになったらクラスメート同士の軋轢の理由になる。
趣味で幾つか読んだ事がある、クラスごとトラブルに巻き込まれるタイプの物語では、そこから全体が瓦解する事も少なくないからね、うん。
そうなったらもう悲惨の一言だろう。正直想像するだけで怖い。めちゃくちゃに怖い。
逆にちゃんとクラスが一丸になっている場合は、クラス全体の生存率がグッと上がるはずだよね。
物語だとしても、現実だとしても。
――あんまり自己主張するのは好きじゃないけど、ここは恥をかいてでも言っておかないとマズい気がするので、滅茶苦茶に緊張しつつ、私は意見を述べた。
「か、帰る場所として家とかを買うなり借りるにしてもお金が必要になるから働かないとだし。
そういう場所を維持する事を引き篭もってる、なんていうのは間違いじゃないかな……って、私は思うよ、うん。
あ、ああ、あくまで今の所は仮定の話だけどね。冒険の話もそうだけど」
「うん、すごく納得だな。寺虎もそう思うだろ?」
「――むぅ。まぁ留守番は必要かもな」
どうにか納得してもらえたようでホッとする。
そこでチラリと、堅砂くんに視線を送ると彼も納得してくれたようで頷いた。
「確かに、拠点は必要だな。
最終的に皆がどうするかどうなるかまでは現時点では分からないが、それまで互いに助け合う事も、その為の場所も必要だ。
じゃあ、ひとまずは冒険組と拠点組に別れて、どうするか話し合って決めていくという事で異論ないか?」
「いいと思う」
「いいんじゃねーの? 俺は冒険できればいいし」
堅砂くんの確認的な問いかけに、皆はそれぞれに了解の返答を返した。
問題はここから最終的にはどうなるかだが、ここからは手探りで進んでいくしかないと思う。
ここは、私達にとって何処までも果てしなく未知の世界だし。
だからホント、みんな仲良くしてほしいなぁ、うん。
出来れば私が何もしなくても仲良くでお願いします。
争いの仲裁とか陰キャには辛いので……いや、マジで無理なんで。
「その上で最終的には、ここで面倒を見てもらえる猶予期間の終わりまでに各自が身の振り方を考えていく事になる。
そうなった時、本当に何もできない、何もする気がない奴は見捨てられても仕方がないからな。
――ちゃんと考えておいた方がいいぞ」
最後の最後できっちりと釘を刺す堅砂くん――いや、うん、ごもっともなんですが、何も今言わなくても。
そう思ってなんとなく堅砂くんに視線を送ると、彼はプイと視線を逸らした……ううぅ、前途は多難だ。
そうして意見がまとまるのを待っていたかのタイミングで、聖導師長ラルエル様の使いの人が、移動用の馬車の到着を知らせてくれた。
私達が当座暮らす事になる街へ進む馬車、その荷台で揺られながら、私はこれからどうなっていくのかの不安と、ほんの少し何処か落ち着かないながらも何かを期待するような、そんな心地でいた。
そんな思いがこれからずっと続いていく……否、その上で、想像を越えた様々な困難に立ち向かっていく未来を知らずに。
そして、私の『私が何もしなくても仲良く』という願いは悲しい事にどんどんどんどん裏切られていくんだよね……どうしてあんな事に――ううう。
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