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ランク別武闘大会・開幕
緊急クエスト・ライバルたちの悪巧み
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~緊急クエスト・ライバルたちの悪巧み~
出場規制は前回の闘技大会で無双した三人と、対人戦に向かない冒険者に救済措置が出されたようだ。
私は渡された名簿を見てがっくりと膝をつく。 理由までしっかり書いてあるのがまた憎ったらしい。
出場規制と言われた時点で予想していたが……
鋼ランク・ぺろぺろめろん 金ランクのみ出場を認める(金ランク冒険者の資格を持っているため)
鋼ランク・すいかくろみど 金ランクのみ出場を認める(金ランク冒険者の資格を持っているため)
銀ランク・樽飯庵 銅ランクまでの出場を認める(大会の規定と能力の相性が合わないため)
鋼ランク・鈴雷 銀ランク以上の出場を認める(使用する支援魔法が反則に近い性質を持つため)
これは、まずい!
樽飯庵さんも鈴雷さんもキャリーム先輩の担当冒険者!
そして鈴雷さんはあのぺろぺろめろんさんにまさかの黒星を与えた正真正銘の化け物!
「ええ! うちら規制されてんじゃん! どうすんのセリナさん!」
……これは、きっとキャリーム先輩の陰謀だ!
前回負けたのをものすごく悔しそうにしていたからな、きっと今回は本気で勝ちに来る!
可愛い顔してなんて卑怯なんだ!
この武闘大会はお祭りのようなもの、楽しんでなんぼのはずだ!
こんな卑怯な手を使うなんて! ならば私は正攻法の手段でねじ伏せてやる!
泣かせてやるからな、キャリームちゃん! そして泣いているかわいいお顔をこの目に刻み、脳内フィルターに永久保存するのだ! むふふふふ。
ちくしょう! なぜこの世界にはカメラがないのだ! 泣き顔のキャリームちゃんとか! 可愛すぎて世界が危ない!
って今はそんなこと考えている場合じゃない!
私は深呼吸して、心を落ち着かせる。 そして、動揺する冒険者たちに呼びかける。
「出場規制? 上等ですよオラァァァ! 皆さん、これは受付嬢たちの陰謀です! 私たちに負けるのが怖くて卑怯な手を使おうとしています! ……しかぁーし! 王者である我々は、この卑怯な陰謀にも屈せず、正々堂々正面から叩き伏せてやろうじゃあないですか!」
私の発言に冒険者たちは雄叫びをあげる、沈んでいた空気が一気に変わった。
全員ボルテージマックスだ!
「代表変更します! 鋼は夢時雨さん! 金はぺろぺろめろんさんに変更です!」
「え、ええっ? 僕ですか?」
「ちっくしょー! 出たかったぁ!」
「魔法で直接攻撃が!」「禁止じゃなければ!」「「俺らは負けないのに!」」
鋼ランクの皆さんは気性が荒い、パイナポや双子さんたちからブーイングが飛ぶ。
実際、鋼ランクならパイナポと少し迷ったが、接近戦なら絶対夢時雨さんに軍配が上がるはずだ!
噂だが、よく訓練場で手合わせているパイナポは夢時雨さんに勝ったことがないと聞いたことがある。
魔法の直接攻撃が有効ならパワーとスピードがある極楽鳶さんにしていたのだが、魔法による直接攻撃が禁止されているのだ、仕方がない。
「それでは皆さん! 一週間後の大武闘大会……勝ちに行きますよぉぉぉ!」
「「「「「うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
今日一番の歓声に会議室が揺れる、みんなの気持ちが今一つに——なろうとした瞬間に、会議室の扉が勢いよく開かれた。
「セリナ! 会議室で騒ぐのはやめなさい! 外まで丸聞こえだからね! あと! キャリームちゃんとレイトさんが呼んでたわよ! もう一回言うけど、最初から最後までまる聞こえだったからね!」
……あ、これやばいやつだ。
☆
私は今、カフェエリアの椅子に正座している。
「セリナったら、随分と気合が入っていたわね?」
「あ、はい。 今回も精一杯頑張ります。」
目の前のキャリーム先輩は、それはもうお怒りだった。
毎日ストーキング……もとい観察していた私は分かる。
現在キャリーム先輩は、紅茶が入ったカップの持ち手を人差し指でコツコツ叩いている。
これはイライラしている時に見せるキャリーム先輩のクセ。
ちなみに機嫌がいいとカップの持ち手を親指と人差し指でコネコネする。
「それにしても、さっきの盛り上がりはすごかったわね? どんな呼びかけをしていたのかしら? 今後の参考にするために聞かせてくれるかしら?」
キャリーム先輩は私の顔を覗きこんでくる。
しかし参った事になったなぁ。
怒ったキャリームちゃんの顔もかわい……違うそうじゃない。
「ちょっと! 聞いてるの?」
「ええっと、聞いてましたすみません。 皆さん今回も優勝するぞー! 的なこと言いました。」
私は顔のパーツが緩まないように、こっそりと太ももをつねる。
「そんなこと誰でも言うでしょ! 言っておくけどさっきの全部聞こえてたからね! べっつに? 怒ってるわけじゃないけど! ただ、この武闘大会は冒険者たちの実力を確かめるためのお祭りなのよ! だから強すぎる冒険者がいたら力試しにならないでしょ! 実力にあった相手と戦うべきよ! だからこれは陰謀じゃないわ!」
「確かに、それもそうですね。」
さすがキャリーム先輩、めちゃくちゃかわい……いい加減にしろ私。
「けど私だって卑怯者扱いされた以上、聞かなかったふりはできないわ? だからこうしましょう!」
キャリーム先輩は立ち上がり、キメ顔で私を指差す。
私は椅子の上に正座していたので少し座高が上がっている、なので自然とキャリーム先輩と目線が合う。
別に背が低いキャリーム先輩を馬鹿にしているわけではない、ガチで。
目がバッチリあった私たちは一瞬無言になる。
「……セリナ、なんでそんな座り方してるの?」
「反省しているんです。 私の生まれた場所では、こうして座ることが反省している証明になるのです」
「そ、そう。 それはいい心がけね!」
キャリーム先輩は一度後ろを向き、こほんと咳払いをすると……
再度、勢いよく振り向きながら私を指差した。
かっこつかなかったから、やり直したんだね? なんて愛くるしい。
「私が勝ったら! 次の休みの日、このあたしに時間をよこしなさい! 月光熊討伐のこととか、九尾狐討伐の事とか! クエストの指揮を取る時、どんな事に注意して指示を出したりアドバイスしているのか、ぜぇ~んぶ吐いてもらうからね!」
え? 今なんて言った?
もしかして、負けたら休みの日にキャリーム先輩とデート? なにそれご褒美じゃん。
「も、もちろん……その、あたしが負けたらあなたの言うことを聞くわ? まあ、負けないけどね!」
「よし、乗りました! 私が勝ったら休みの日に、私がコーディネートした服を着て、一日中私のお願いを聞いてもらいます!」
こうして、負けられない戦いが、今始まろうとしていたのだ。
☆
私はキャリーム先輩が代表にするであろう冒険者の情報を集める。
代表者は全員公開する決まりだ、そして公開されている冒険者を見て頭を抱えた。
キャリーム・チーム名「ドダキステ」
鉄ランク・どろぱっく
銅ランク・樽飯庵
鋼ランク・キャザリー
銀ランク・鈴雷
金ランク・貂鳳
いやいや、チーム名。
みんなの頭文字取ったのかな、さすがキャリーム先輩のネーミングセンス。
それにしてもこれ、マジで反則だ。
確実に勝てると踏んでいるぬらぬらさんとぺろぺろめろんさんの相手がマジでやばい。
まず、前回ぺろぺろめろんさんに唯一黒星をつけた鈴雷さん。
彼女の能力は自らの体に電流を流し、触れた相手を感電させて動けなくする。 前衛の盾役冒険者だ。
この技は、攻撃でなく防御魔法と本人が訴えている、よってルール三は害さないらしい。
超グレーゾーンだと思う、まぁ確かに電気を纏っても相手の鎧は壊せないさ。
鎧を直接攻撃する魔法が禁止というあやふやすぎるルールが悪い。
ようは炎の球を飛ばしたりしなければ大体の魔法がセーフなのだから。
しかし今頃そんなこと言っても遅い、でも普通に考えて対人戦の一対一で、触れたら感電とか勝てないじゃん!
そもそも鎧を壊すか場外に吹き飛ばさないといけないのに触っちゃダメって矛盾してる!
そしてもう一人、貂鳳さん。
あの月光熊を一人で圧倒した化け物だ。
あの時は、いくら視界を封じていたとは言っても、絶対ダメージを与えられないと思われた月光熊の腕をバッキバキに折った上に、後半はほとんど月光熊を弄んじゃうほどの身体能力。
「あ! うちの相手、貂鳳って書いてある! もしかしてこれって、てんてんのことじゃない?」
まだクエストに向かっていなかったらしい、ぺろぺろめろんさんは名簿を見ながら嬉しそうな声を上げる。
「そうですね、ぺろぺろめろんさんが一番近くで彼女の戦い見てましたからね、勝てそうですか?」
私はウキウキしているぺろぺろめろんさんとは対称に、死んだ魚のような目で質問する。
「え~! セリナちゃんもしかしてうちが負けるとか思ってる~? それってひどくな~い? うちのこと、信じてくれないの~?」
ぺろぺろめろんさんは頬にぷっくりと不満をためる。
「まあ、私は貂鳳さんが戦ってるところをよく見てないので、どんな実力か知ってるわけではないですから。 あなたが勝てると言うのなら、信じますよ?」
ぺろぺろめろんさんの膨らんだ頬を突っつきながらそう言ってみる。
するとぺろぺろめろんさんは嬉しそうに抱きついてきた! ふ、不意打ちか!
「わ~い! セリナちゃん大好き~! ま、私的にはてんてんと戦うのは楽しみだけど、本当はすずっちにリベンジしたかったかな?」
真剣な顔で鈴雷さんの名前を指でなぞるぺろぺろめろんさん。 あ、あだ名はすずっちなんだね?
「まあ、準決勝を勝たないとキャリーム先輩とは戦えませんからね! 私はこれからどるべるうぉんさんととーてむすっぽーんさんに相談される予定があるので、この二人をどこまで最強にできるかに思考を割きますよ。 ぺろぺろめろんさんで一勝だから、この二人で三勝。 単純ですよね?」
ぺろぺろめろんさんは、それはもう嬉しそうにスキップしながら今日のクエストに向かった。
……今から行くんかい、今午後一時だぞ?
出場規制は前回の闘技大会で無双した三人と、対人戦に向かない冒険者に救済措置が出されたようだ。
私は渡された名簿を見てがっくりと膝をつく。 理由までしっかり書いてあるのがまた憎ったらしい。
出場規制と言われた時点で予想していたが……
鋼ランク・ぺろぺろめろん 金ランクのみ出場を認める(金ランク冒険者の資格を持っているため)
鋼ランク・すいかくろみど 金ランクのみ出場を認める(金ランク冒険者の資格を持っているため)
銀ランク・樽飯庵 銅ランクまでの出場を認める(大会の規定と能力の相性が合わないため)
鋼ランク・鈴雷 銀ランク以上の出場を認める(使用する支援魔法が反則に近い性質を持つため)
これは、まずい!
樽飯庵さんも鈴雷さんもキャリーム先輩の担当冒険者!
そして鈴雷さんはあのぺろぺろめろんさんにまさかの黒星を与えた正真正銘の化け物!
「ええ! うちら規制されてんじゃん! どうすんのセリナさん!」
……これは、きっとキャリーム先輩の陰謀だ!
前回負けたのをものすごく悔しそうにしていたからな、きっと今回は本気で勝ちに来る!
可愛い顔してなんて卑怯なんだ!
この武闘大会はお祭りのようなもの、楽しんでなんぼのはずだ!
こんな卑怯な手を使うなんて! ならば私は正攻法の手段でねじ伏せてやる!
泣かせてやるからな、キャリームちゃん! そして泣いているかわいいお顔をこの目に刻み、脳内フィルターに永久保存するのだ! むふふふふ。
ちくしょう! なぜこの世界にはカメラがないのだ! 泣き顔のキャリームちゃんとか! 可愛すぎて世界が危ない!
って今はそんなこと考えている場合じゃない!
私は深呼吸して、心を落ち着かせる。 そして、動揺する冒険者たちに呼びかける。
「出場規制? 上等ですよオラァァァ! 皆さん、これは受付嬢たちの陰謀です! 私たちに負けるのが怖くて卑怯な手を使おうとしています! ……しかぁーし! 王者である我々は、この卑怯な陰謀にも屈せず、正々堂々正面から叩き伏せてやろうじゃあないですか!」
私の発言に冒険者たちは雄叫びをあげる、沈んでいた空気が一気に変わった。
全員ボルテージマックスだ!
「代表変更します! 鋼は夢時雨さん! 金はぺろぺろめろんさんに変更です!」
「え、ええっ? 僕ですか?」
「ちっくしょー! 出たかったぁ!」
「魔法で直接攻撃が!」「禁止じゃなければ!」「「俺らは負けないのに!」」
鋼ランクの皆さんは気性が荒い、パイナポや双子さんたちからブーイングが飛ぶ。
実際、鋼ランクならパイナポと少し迷ったが、接近戦なら絶対夢時雨さんに軍配が上がるはずだ!
噂だが、よく訓練場で手合わせているパイナポは夢時雨さんに勝ったことがないと聞いたことがある。
魔法の直接攻撃が有効ならパワーとスピードがある極楽鳶さんにしていたのだが、魔法による直接攻撃が禁止されているのだ、仕方がない。
「それでは皆さん! 一週間後の大武闘大会……勝ちに行きますよぉぉぉ!」
「「「「「うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
今日一番の歓声に会議室が揺れる、みんなの気持ちが今一つに——なろうとした瞬間に、会議室の扉が勢いよく開かれた。
「セリナ! 会議室で騒ぐのはやめなさい! 外まで丸聞こえだからね! あと! キャリームちゃんとレイトさんが呼んでたわよ! もう一回言うけど、最初から最後までまる聞こえだったからね!」
……あ、これやばいやつだ。
☆
私は今、カフェエリアの椅子に正座している。
「セリナったら、随分と気合が入っていたわね?」
「あ、はい。 今回も精一杯頑張ります。」
目の前のキャリーム先輩は、それはもうお怒りだった。
毎日ストーキング……もとい観察していた私は分かる。
現在キャリーム先輩は、紅茶が入ったカップの持ち手を人差し指でコツコツ叩いている。
これはイライラしている時に見せるキャリーム先輩のクセ。
ちなみに機嫌がいいとカップの持ち手を親指と人差し指でコネコネする。
「それにしても、さっきの盛り上がりはすごかったわね? どんな呼びかけをしていたのかしら? 今後の参考にするために聞かせてくれるかしら?」
キャリーム先輩は私の顔を覗きこんでくる。
しかし参った事になったなぁ。
怒ったキャリームちゃんの顔もかわい……違うそうじゃない。
「ちょっと! 聞いてるの?」
「ええっと、聞いてましたすみません。 皆さん今回も優勝するぞー! 的なこと言いました。」
私は顔のパーツが緩まないように、こっそりと太ももをつねる。
「そんなこと誰でも言うでしょ! 言っておくけどさっきの全部聞こえてたからね! べっつに? 怒ってるわけじゃないけど! ただ、この武闘大会は冒険者たちの実力を確かめるためのお祭りなのよ! だから強すぎる冒険者がいたら力試しにならないでしょ! 実力にあった相手と戦うべきよ! だからこれは陰謀じゃないわ!」
「確かに、それもそうですね。」
さすがキャリーム先輩、めちゃくちゃかわい……いい加減にしろ私。
「けど私だって卑怯者扱いされた以上、聞かなかったふりはできないわ? だからこうしましょう!」
キャリーム先輩は立ち上がり、キメ顔で私を指差す。
私は椅子の上に正座していたので少し座高が上がっている、なので自然とキャリーム先輩と目線が合う。
別に背が低いキャリーム先輩を馬鹿にしているわけではない、ガチで。
目がバッチリあった私たちは一瞬無言になる。
「……セリナ、なんでそんな座り方してるの?」
「反省しているんです。 私の生まれた場所では、こうして座ることが反省している証明になるのです」
「そ、そう。 それはいい心がけね!」
キャリーム先輩は一度後ろを向き、こほんと咳払いをすると……
再度、勢いよく振り向きながら私を指差した。
かっこつかなかったから、やり直したんだね? なんて愛くるしい。
「私が勝ったら! 次の休みの日、このあたしに時間をよこしなさい! 月光熊討伐のこととか、九尾狐討伐の事とか! クエストの指揮を取る時、どんな事に注意して指示を出したりアドバイスしているのか、ぜぇ~んぶ吐いてもらうからね!」
え? 今なんて言った?
もしかして、負けたら休みの日にキャリーム先輩とデート? なにそれご褒美じゃん。
「も、もちろん……その、あたしが負けたらあなたの言うことを聞くわ? まあ、負けないけどね!」
「よし、乗りました! 私が勝ったら休みの日に、私がコーディネートした服を着て、一日中私のお願いを聞いてもらいます!」
こうして、負けられない戦いが、今始まろうとしていたのだ。
☆
私はキャリーム先輩が代表にするであろう冒険者の情報を集める。
代表者は全員公開する決まりだ、そして公開されている冒険者を見て頭を抱えた。
キャリーム・チーム名「ドダキステ」
鉄ランク・どろぱっく
銅ランク・樽飯庵
鋼ランク・キャザリー
銀ランク・鈴雷
金ランク・貂鳳
いやいや、チーム名。
みんなの頭文字取ったのかな、さすがキャリーム先輩のネーミングセンス。
それにしてもこれ、マジで反則だ。
確実に勝てると踏んでいるぬらぬらさんとぺろぺろめろんさんの相手がマジでやばい。
まず、前回ぺろぺろめろんさんに唯一黒星をつけた鈴雷さん。
彼女の能力は自らの体に電流を流し、触れた相手を感電させて動けなくする。 前衛の盾役冒険者だ。
この技は、攻撃でなく防御魔法と本人が訴えている、よってルール三は害さないらしい。
超グレーゾーンだと思う、まぁ確かに電気を纏っても相手の鎧は壊せないさ。
鎧を直接攻撃する魔法が禁止というあやふやすぎるルールが悪い。
ようは炎の球を飛ばしたりしなければ大体の魔法がセーフなのだから。
しかし今頃そんなこと言っても遅い、でも普通に考えて対人戦の一対一で、触れたら感電とか勝てないじゃん!
そもそも鎧を壊すか場外に吹き飛ばさないといけないのに触っちゃダメって矛盾してる!
そしてもう一人、貂鳳さん。
あの月光熊を一人で圧倒した化け物だ。
あの時は、いくら視界を封じていたとは言っても、絶対ダメージを与えられないと思われた月光熊の腕をバッキバキに折った上に、後半はほとんど月光熊を弄んじゃうほどの身体能力。
「あ! うちの相手、貂鳳って書いてある! もしかしてこれって、てんてんのことじゃない?」
まだクエストに向かっていなかったらしい、ぺろぺろめろんさんは名簿を見ながら嬉しそうな声を上げる。
「そうですね、ぺろぺろめろんさんが一番近くで彼女の戦い見てましたからね、勝てそうですか?」
私はウキウキしているぺろぺろめろんさんとは対称に、死んだ魚のような目で質問する。
「え~! セリナちゃんもしかしてうちが負けるとか思ってる~? それってひどくな~い? うちのこと、信じてくれないの~?」
ぺろぺろめろんさんは頬にぷっくりと不満をためる。
「まあ、私は貂鳳さんが戦ってるところをよく見てないので、どんな実力か知ってるわけではないですから。 あなたが勝てると言うのなら、信じますよ?」
ぺろぺろめろんさんの膨らんだ頬を突っつきながらそう言ってみる。
するとぺろぺろめろんさんは嬉しそうに抱きついてきた! ふ、不意打ちか!
「わ~い! セリナちゃん大好き~! ま、私的にはてんてんと戦うのは楽しみだけど、本当はすずっちにリベンジしたかったかな?」
真剣な顔で鈴雷さんの名前を指でなぞるぺろぺろめろんさん。 あ、あだ名はすずっちなんだね?
「まあ、準決勝を勝たないとキャリーム先輩とは戦えませんからね! 私はこれからどるべるうぉんさんととーてむすっぽーんさんに相談される予定があるので、この二人をどこまで最強にできるかに思考を割きますよ。 ぺろぺろめろんさんで一勝だから、この二人で三勝。 単純ですよね?」
ぺろぺろめろんさんは、それはもう嬉しそうにスキップしながら今日のクエストに向かった。
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