60 / 61
終章 別れ
三節 最後の一歩
しおりを挟む
双子が親元に帰って半年、技術部の仕事は中々減らず、他の部から人手を借りてまで、修理に明け暮れている。
その為に、なかなかルシフェルに遊んでもらえないクシェルの機嫌が全く良くない。
イネスが育児を一手に引き受けてくれているから楽なのだが、現実はそうもいかないのである。
夜よりも日中に遊んでもらいたいクシェル、休日返上で夜しか遊んであげられないルシフェル、二人の駆け引きに折れてしまったのはルシフェルの方だった。
執務室でクシェルを抱っこしながら、精密機器をいじくりまわすのがどれだけ怖い事か。頭を抱えるルシフェルに、技術部の天使たちは何も言わない。
ただ、賢いと評価されただけはあって、ネジの閉め忘れを指摘したり、壊れた個所を見ただけで当ててしまったりと、かなり助かっている面はある。
そうは言っても遊びたい盛りの五歳、むやみに触って機械が暴走でもするとことであり、大人しくしていないとクシェルはイネスから叱りを受け、過ぎるとルシフェルも叱り、二人のストレスは溜まる一方だった。
そんな日が続くある日、不意にクシェルが扉を見つめていることに気付いた。
「どうしたの?」
それに気づいたイネスが声をかけた時、クシェルの顔が一気に明るくなった。
「ねーね」
「「は?」」
「ねーねたちが来る」
そう言い放ったクシェルは、ルシフェルの邪魔をしないよう器用に膝から降りて、扉をあけ放った。
「ほら、ねーね来た!」
ノックしようとしたところで扉が開いて呆然とするイムとセレ、本当にそこにいるとは思っていなかったルシフェルとイネスも呆然としてしまった。
クシェルは他の女性天使を『お姉ちゃん』と呼称するが、双子の事は未だに『ねーね』と呼称する。クシェルなりの親愛の証である。
「ねーね、久しぶり!」
クシェルのその一言で我に返った双子は、同時にクシェルを抱きしめて挨拶を交わした。
「久しぶりだな、イムちゃん、セレちゃん」
「久しぶりですね、イムちゃん、セレちゃん」
「「久しぶり、会いたくなったから来ちゃった」」
ルシフェルもイネスも双子を抱きしめてあげて挨拶を交わした。
工程が押しているのでソファーに座り、ルシフェルは作業を進めつつ、双子の近況報告を聞く。イネスは『少しだけ三人だけにしてあげようね』とクシェルを連れて隣室に戻っている。
「それで魔素を直接操る練習か」
「「うん」」
今はその内朽ちてしまう人の体を魔素と入れ替える為、相応の変異魔素を作り出して制御を行う練習をしているらしい。
今のままでは体の寿命は百を超えるかどうか、内包する変異魔素量が多いので、魂の結びつきは完全定着しているとは言えない。完全定着してからでは遅いので急いでいる。
親たるイフリートやセルシウス、ルシフェルやラジエラ、ひいてはイネスよりも早く死ぬのが嫌で、かなり必死になっているようだ。
今日ここに来たのは、必死過ぎる双子が不憫になってイフリートとセルシウスが、たまには休めと言って行かせたかららしい。
「急ぐ時ほど休息はしっかりな。失敗したらそれこそことだぞ?」
「「うん、わかった」」
しっかりと頷いたのを見てルシフェルは安堵の表情を見せた。
「「お兄ちゃん」」
「なに?」
「「私たちが人の体を捨てる時、傍にいてくれる?」」
「勿論だよ」
喜びの表情を浮かべて双子は頷いた。
「マリとは会ってきたの?」
「「うん。挨拶は済ませたよ」」
「そうだったのか、余計な心配だったな。仕事がまだ終わりそうにないから、それまでクシェルと遊んでくれる?」
「「勿論」」
双子はソファーか降りると隣室へと消えて行った。
半年と少しぶりに遊ぶのが相当うれしいのか、隣室からはキャッキャッと声が漏れてきている。
イネスにとある頼みごとをして、今ある作業を終わらせる為に、集中するのだった。
三時間後、技術部の天使に今日の修理分を渡して自室に戻ると、丁度、ミカエラによってクシェルの解析が行われている最中だった。
セレもイムも特殊な存在とは言え、ろくに魔法が使えないクシェルが、来訪を的確に察知できた理由が全く分からない。つまり、技能を疑ってミカエラに技能鑑定を行えないか、イネスを相談に行かせたのである。
「疑いようがありませんでしたが、ルシフェルが考えている通りですね」
「やはり技能か」
「『察知』なので権能、先天性です」
権能『察知』は、技能『千里眼』、『鋭敏五感』、『鋭敏魔覚』の三つによって構成される、先天性の強力な技能である。
その気になれば、現在、誰が、何処で、何をしているか、までも把握可能であり、後方の参謀、参謀助手としては有能すぎるほど。
「イネスの血を引き、ルシフェルの血を引いているのですから、当然の技能ですね」
ルシフェルは種族の呪いと、暗黙の掟によって生まれた頃から種族を偽って生活していた関係上、その経験が引き継がれている可能性がある。
イネスは天族の仲間入りをしたと言っても、ルシフェルがいなければ立場が弱いので、お腹の中にいた頃にイネスを通して伝わり、権能獲得に至っている可能性がある。
ミカエラはこれを言いたいのだ。
「何か、悪いことをした気分になるな」
「そうですね」
二人して贖罪の意味でクシェルの頭を撫でてしまう。
「そんなことないよ」
それが伝わって意味を理解したクシェルが否定の言葉を返してきた。それで撫でられても不快だと伝えたいのかもしれない。
「お前は優しいな」
ルシフェルはクシェルを思いっ切り抱きしめた。次いでイネスもクシェルを抱きしめる。
解放されたクシェルは双子と遊び始めた。
「前例のない事でも、まれに起こることでもないのです。元から天族とはこういうものなのですからね。心配しなくても大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
そもそも、この年齢どころか生まれた頃から権能が発現するのが当たり前だった。多種族との混血が進んだことで、遅れ気味になっているのはここ最近の話である。
「それと抱っこや魔法を掛けられるのを嫌がるのはこの権能の所為です。生まれた時から権能で魔力の波長を感じ取って見分けており、本能と相まって親以外を受け入れるのに時間がかかったのでしょう」
ミカエラによってようやく解けたクシェルが見せる反応の謎、ルシフェルもイネスも胸をなでおろした気分になっていた。
ずっと気になっていたのである。技能であろうがなかろうが、教育方針に変更はないものの、からくりが分かれば効率よく教えることができる。本人とて、分かっていた方が自分の能力に怯えなくて済むわけで。
今回の解析で分かった事をミカエラに教えてもらい、ミカエラが去った後、ルシフェルもイネスも双子と遊ぶクシェルを眺めているだけだった。
それから双子は隔月でルシフェルの下を訪れるようになった。
その都度『急いては事を仕損じる』と双子を宥め、イフリートとセルシウスが意図したように休息を取らせる。
そんな双子は前にも増して甘えるようになり、左の太ももにセレ、右の太ももにイムの頭を乗せているのが風物詩となりつつあった。
「「なかなか上手く行かないの」」
「そりゃな、お前らの魔法は人の体が作りだした魔力頼りだからな」
ルシフェルは精霊の魔力の性質は知っているが、使い方を知らない。そもそも、精霊の魔法と天族を含む人族の魔法では大きな乖離がある。
精霊の魔力の正体は形を成した際の自然エネルギーであり、根本的に力としての性質が全く違う。
自然エネルギーと言う言葉自体が総称であり、様々なエネルギーとして分類が可能で、だから精霊も様々存在しているのである。精霊が魔力として使うエネルギーには偏りがあり、魔素を触媒として利用する必要すらない。
人族の魔力はニュートラルな性質をもち、魔素を触媒にしなければ魔法とならないのだが、精霊と違って多岐にわたる魔法を発動可能だ。
「魔素を相応に変異させるよりも、お父さんの魔力を完全に真似てみたらどうだ?他には二段階で作り出すとかな」
「「二段階?」」
「二人の魔力をお父さんの魔力と同じになるように魔素で変換して、変換した魔力で相応の変異魔素を作り出すんだよ。できるかどうかはさておきだがな」
「「なるほど~」」
こういう方法を思いつくのもルシフェルの権能の力である。
「「お父さんの言った通りだったねー」」
「え?」
「セルシウス様もイフリート様も、もしかしたらルシフェル様の権能を当てにしていたのかもしれませんね」
「ほう」
「「あ」」
やばいと思った双子は膝枕から飛び起きて寝具から降り、なんとルシフェルの目の前に正座をした。怒られると思ったのだが、ルシフェルにはそんな気はさらさらない。
「もう・・・そんなことで怒らないよ」
魔法を使って二人を浮かせると、器用に元の膝枕の位置に戻してその頭を撫でた。
「素直に言えば手助けはしてあげる。俺にとって、お前らは妹でもあり娘だ。家族だっていったろ?」
「「うん」」
「だから素直に頼れ。な?」
「「うん!」」
翌日、技術部の天使たちと話し合って時間をもらったルシフェルは、一先ず双子が練習場にしているとある島に向かった。
まだ、地上では見つかっていない火山型の新しい無人島で、頂上から眺める周囲は見渡す限りの海で、水平線によって惑星が丸いと言うのが分かるほどだ。
今回の件に興味がある、ミカエラ、サリエル、ガブリエラ、ルムエル、ルマエラが同伴している。更に、ガブリエラによってすべての精霊がここに集まっている。
ルシフェルが言い出した方法が可能なのならば、精霊を人工的に生み出すことが可能だということでもあり、天族ではかなりの大事になっている。
「では行きますよ」
最低限必要なのはセルシウスとイフリートの持つ自然エネルギーの情報、精霊が使う魔素に頼らない魔法の詳細だ。
セルシウスが自身を構成する変異魔素を入れ替える魔法を使って、ルシフェルがそれを解析魔法で詳細を探り、同じことをイフリートでも行う。
そして、ルシフェルは静かに一言こういった。
「可能」
その証拠に、右手で紅い、右手で蒼い、小指の先ほどの大きさの魔水晶を作り出した。
その魔水晶はミカエラが何度解析しても、精霊がその身から生み出した魔水晶であるという結果しか出ない。
試しに紅い魔水晶をイフリートに、蒼い魔水晶をセルシウスに渡すと、その体に分解吸収されて、ミカエラの解析結果が正しいと証明された。
これには天使たちも苦笑いした。
その理由は高純度の魔水晶の作成方法が判明したからだ。魔素の触媒効果を二重で使う発想は、固定観念によって今まで浮かんでなかったのである。また、必要がなかったので深く追求しておらず、これを知っているユニゲイズが教えることも、聞くこともなかった。
「セレちゃん、イムちゃん、後は自分でやらないとね。それと、お父さんと同じでいいわけじゃないから、協力はするから自分で研究してね」
「「うん!ありがとう!お兄ちゃん!」」
双子は思いっ切りルシフェルに抱き着いた。
その為に、なかなかルシフェルに遊んでもらえないクシェルの機嫌が全く良くない。
イネスが育児を一手に引き受けてくれているから楽なのだが、現実はそうもいかないのである。
夜よりも日中に遊んでもらいたいクシェル、休日返上で夜しか遊んであげられないルシフェル、二人の駆け引きに折れてしまったのはルシフェルの方だった。
執務室でクシェルを抱っこしながら、精密機器をいじくりまわすのがどれだけ怖い事か。頭を抱えるルシフェルに、技術部の天使たちは何も言わない。
ただ、賢いと評価されただけはあって、ネジの閉め忘れを指摘したり、壊れた個所を見ただけで当ててしまったりと、かなり助かっている面はある。
そうは言っても遊びたい盛りの五歳、むやみに触って機械が暴走でもするとことであり、大人しくしていないとクシェルはイネスから叱りを受け、過ぎるとルシフェルも叱り、二人のストレスは溜まる一方だった。
そんな日が続くある日、不意にクシェルが扉を見つめていることに気付いた。
「どうしたの?」
それに気づいたイネスが声をかけた時、クシェルの顔が一気に明るくなった。
「ねーね」
「「は?」」
「ねーねたちが来る」
そう言い放ったクシェルは、ルシフェルの邪魔をしないよう器用に膝から降りて、扉をあけ放った。
「ほら、ねーね来た!」
ノックしようとしたところで扉が開いて呆然とするイムとセレ、本当にそこにいるとは思っていなかったルシフェルとイネスも呆然としてしまった。
クシェルは他の女性天使を『お姉ちゃん』と呼称するが、双子の事は未だに『ねーね』と呼称する。クシェルなりの親愛の証である。
「ねーね、久しぶり!」
クシェルのその一言で我に返った双子は、同時にクシェルを抱きしめて挨拶を交わした。
「久しぶりだな、イムちゃん、セレちゃん」
「久しぶりですね、イムちゃん、セレちゃん」
「「久しぶり、会いたくなったから来ちゃった」」
ルシフェルもイネスも双子を抱きしめてあげて挨拶を交わした。
工程が押しているのでソファーに座り、ルシフェルは作業を進めつつ、双子の近況報告を聞く。イネスは『少しだけ三人だけにしてあげようね』とクシェルを連れて隣室に戻っている。
「それで魔素を直接操る練習か」
「「うん」」
今はその内朽ちてしまう人の体を魔素と入れ替える為、相応の変異魔素を作り出して制御を行う練習をしているらしい。
今のままでは体の寿命は百を超えるかどうか、内包する変異魔素量が多いので、魂の結びつきは完全定着しているとは言えない。完全定着してからでは遅いので急いでいる。
親たるイフリートやセルシウス、ルシフェルやラジエラ、ひいてはイネスよりも早く死ぬのが嫌で、かなり必死になっているようだ。
今日ここに来たのは、必死過ぎる双子が不憫になってイフリートとセルシウスが、たまには休めと言って行かせたかららしい。
「急ぐ時ほど休息はしっかりな。失敗したらそれこそことだぞ?」
「「うん、わかった」」
しっかりと頷いたのを見てルシフェルは安堵の表情を見せた。
「「お兄ちゃん」」
「なに?」
「「私たちが人の体を捨てる時、傍にいてくれる?」」
「勿論だよ」
喜びの表情を浮かべて双子は頷いた。
「マリとは会ってきたの?」
「「うん。挨拶は済ませたよ」」
「そうだったのか、余計な心配だったな。仕事がまだ終わりそうにないから、それまでクシェルと遊んでくれる?」
「「勿論」」
双子はソファーか降りると隣室へと消えて行った。
半年と少しぶりに遊ぶのが相当うれしいのか、隣室からはキャッキャッと声が漏れてきている。
イネスにとある頼みごとをして、今ある作業を終わらせる為に、集中するのだった。
三時間後、技術部の天使に今日の修理分を渡して自室に戻ると、丁度、ミカエラによってクシェルの解析が行われている最中だった。
セレもイムも特殊な存在とは言え、ろくに魔法が使えないクシェルが、来訪を的確に察知できた理由が全く分からない。つまり、技能を疑ってミカエラに技能鑑定を行えないか、イネスを相談に行かせたのである。
「疑いようがありませんでしたが、ルシフェルが考えている通りですね」
「やはり技能か」
「『察知』なので権能、先天性です」
権能『察知』は、技能『千里眼』、『鋭敏五感』、『鋭敏魔覚』の三つによって構成される、先天性の強力な技能である。
その気になれば、現在、誰が、何処で、何をしているか、までも把握可能であり、後方の参謀、参謀助手としては有能すぎるほど。
「イネスの血を引き、ルシフェルの血を引いているのですから、当然の技能ですね」
ルシフェルは種族の呪いと、暗黙の掟によって生まれた頃から種族を偽って生活していた関係上、その経験が引き継がれている可能性がある。
イネスは天族の仲間入りをしたと言っても、ルシフェルがいなければ立場が弱いので、お腹の中にいた頃にイネスを通して伝わり、権能獲得に至っている可能性がある。
ミカエラはこれを言いたいのだ。
「何か、悪いことをした気分になるな」
「そうですね」
二人して贖罪の意味でクシェルの頭を撫でてしまう。
「そんなことないよ」
それが伝わって意味を理解したクシェルが否定の言葉を返してきた。それで撫でられても不快だと伝えたいのかもしれない。
「お前は優しいな」
ルシフェルはクシェルを思いっ切り抱きしめた。次いでイネスもクシェルを抱きしめる。
解放されたクシェルは双子と遊び始めた。
「前例のない事でも、まれに起こることでもないのです。元から天族とはこういうものなのですからね。心配しなくても大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
そもそも、この年齢どころか生まれた頃から権能が発現するのが当たり前だった。多種族との混血が進んだことで、遅れ気味になっているのはここ最近の話である。
「それと抱っこや魔法を掛けられるのを嫌がるのはこの権能の所為です。生まれた時から権能で魔力の波長を感じ取って見分けており、本能と相まって親以外を受け入れるのに時間がかかったのでしょう」
ミカエラによってようやく解けたクシェルが見せる反応の謎、ルシフェルもイネスも胸をなでおろした気分になっていた。
ずっと気になっていたのである。技能であろうがなかろうが、教育方針に変更はないものの、からくりが分かれば効率よく教えることができる。本人とて、分かっていた方が自分の能力に怯えなくて済むわけで。
今回の解析で分かった事をミカエラに教えてもらい、ミカエラが去った後、ルシフェルもイネスも双子と遊ぶクシェルを眺めているだけだった。
それから双子は隔月でルシフェルの下を訪れるようになった。
その都度『急いては事を仕損じる』と双子を宥め、イフリートとセルシウスが意図したように休息を取らせる。
そんな双子は前にも増して甘えるようになり、左の太ももにセレ、右の太ももにイムの頭を乗せているのが風物詩となりつつあった。
「「なかなか上手く行かないの」」
「そりゃな、お前らの魔法は人の体が作りだした魔力頼りだからな」
ルシフェルは精霊の魔力の性質は知っているが、使い方を知らない。そもそも、精霊の魔法と天族を含む人族の魔法では大きな乖離がある。
精霊の魔力の正体は形を成した際の自然エネルギーであり、根本的に力としての性質が全く違う。
自然エネルギーと言う言葉自体が総称であり、様々なエネルギーとして分類が可能で、だから精霊も様々存在しているのである。精霊が魔力として使うエネルギーには偏りがあり、魔素を触媒として利用する必要すらない。
人族の魔力はニュートラルな性質をもち、魔素を触媒にしなければ魔法とならないのだが、精霊と違って多岐にわたる魔法を発動可能だ。
「魔素を相応に変異させるよりも、お父さんの魔力を完全に真似てみたらどうだ?他には二段階で作り出すとかな」
「「二段階?」」
「二人の魔力をお父さんの魔力と同じになるように魔素で変換して、変換した魔力で相応の変異魔素を作り出すんだよ。できるかどうかはさておきだがな」
「「なるほど~」」
こういう方法を思いつくのもルシフェルの権能の力である。
「「お父さんの言った通りだったねー」」
「え?」
「セルシウス様もイフリート様も、もしかしたらルシフェル様の権能を当てにしていたのかもしれませんね」
「ほう」
「「あ」」
やばいと思った双子は膝枕から飛び起きて寝具から降り、なんとルシフェルの目の前に正座をした。怒られると思ったのだが、ルシフェルにはそんな気はさらさらない。
「もう・・・そんなことで怒らないよ」
魔法を使って二人を浮かせると、器用に元の膝枕の位置に戻してその頭を撫でた。
「素直に言えば手助けはしてあげる。俺にとって、お前らは妹でもあり娘だ。家族だっていったろ?」
「「うん」」
「だから素直に頼れ。な?」
「「うん!」」
翌日、技術部の天使たちと話し合って時間をもらったルシフェルは、一先ず双子が練習場にしているとある島に向かった。
まだ、地上では見つかっていない火山型の新しい無人島で、頂上から眺める周囲は見渡す限りの海で、水平線によって惑星が丸いと言うのが分かるほどだ。
今回の件に興味がある、ミカエラ、サリエル、ガブリエラ、ルムエル、ルマエラが同伴している。更に、ガブリエラによってすべての精霊がここに集まっている。
ルシフェルが言い出した方法が可能なのならば、精霊を人工的に生み出すことが可能だということでもあり、天族ではかなりの大事になっている。
「では行きますよ」
最低限必要なのはセルシウスとイフリートの持つ自然エネルギーの情報、精霊が使う魔素に頼らない魔法の詳細だ。
セルシウスが自身を構成する変異魔素を入れ替える魔法を使って、ルシフェルがそれを解析魔法で詳細を探り、同じことをイフリートでも行う。
そして、ルシフェルは静かに一言こういった。
「可能」
その証拠に、右手で紅い、右手で蒼い、小指の先ほどの大きさの魔水晶を作り出した。
その魔水晶はミカエラが何度解析しても、精霊がその身から生み出した魔水晶であるという結果しか出ない。
試しに紅い魔水晶をイフリートに、蒼い魔水晶をセルシウスに渡すと、その体に分解吸収されて、ミカエラの解析結果が正しいと証明された。
これには天使たちも苦笑いした。
その理由は高純度の魔水晶の作成方法が判明したからだ。魔素の触媒効果を二重で使う発想は、固定観念によって今まで浮かんでなかったのである。また、必要がなかったので深く追求しておらず、これを知っているユニゲイズが教えることも、聞くこともなかった。
「セレちゃん、イムちゃん、後は自分でやらないとね。それと、お父さんと同じでいいわけじゃないから、協力はするから自分で研究してね」
「「うん!ありがとう!お兄ちゃん!」」
双子は思いっ切りルシフェルに抱き着いた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
王女殿下は家出を計画中
ゆうゆう
ファンタジー
出来損ないと言われる第3王女様は家出して、自由を謳歌するために奮闘する
家出の計画を進めようとするうちに、過去に起きた様々な事の真実があきらかになったり、距離を置いていた家族との繋がりを再確認したりするうちに、自分の気持ちの変化にも気付いていく…
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる