CHILDREN CRIME

Neu(ノイ)

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一章:出逢イハ突然ニ

再会 10

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宏哉にズルズルと引き摺られるようにして部屋を出て行った二人の背中を眺め「さて」と榛伊も腰を上げる。
宏哉に貸しを作ってしまったようなので、その内に綾吾を懐柔する手助けをさせられるのだろう。
察しのいい男には助けられはするものの面倒事も多い。
仕事は出来るのに何故ああも変態なのか。

「浜本君、粟冠家で甥に会えるかもしれないから、少し話してみたらどうだい? 俺にはよく解らない感覚だが。互いに何かしら掴めるかもしれないし」

隣の男に声を掛けると、謎を抱える後輩は満面の笑みで頷いてみせた。

「坂中先輩の甥御さんは、思い出すことを望んでるんすか?」

葉月が椅子から立ち上がる音に混じり、無邪気な問いが聞こえてくる。

「……どうだろうね。頭痛が自己防衛だとするならば、思い出さない方がチユにとっては良いことなのかもしれない。この件についてはちゃんと話したことがないんだ」

ふんへー、と独特な相槌を打つ葉月と肩を並べて会議室を後にした。


* * * * * *


 閑静な住宅街の一角に、その古ぼけた一軒家はある。
榛伊の自宅からそう離れていない距離だった。
インターホンを押して出て来た女性は、粟冠事件の被告人、粟冠 昇貴(サツカ ショウキ)の妻で倶利の母でもある京(ミヤコ)だ。
普段は看護師の仕事をしており、シフト時間も日によって昼だったり夜だったりと安定していない。
この日は休みで家にいることは確認済だった。
彼女に警察手帳を示してみせると、表情が強張る。

「突然申し訳御座いません。倶利君と話をしたいのですが、取り次いで貰えますか?」

頭を下げ伺いを立ててみるが戸惑いをみせたまま彼女は眉を顰(ひそ)めた。

「……難しいと思います。あの子は殆ど部屋から出ては来ないですし、人とも会おうとはしないんです。況してや警察の方とは……」

途中で言葉を止めた京の瞳が見開かれ、一点を見詰めて動かない。
怪訝に思い振り向いた榛伊の目に映し出されたのは、数m先から歩いてくるランドセルを背負う知有と、そんな彼の隣をかったるそうに歩く安津の姿だった。

「ハルー! お疲れ様! ……っ、こっ、こん、にちは」

ぶんぶん、と手を振り安津を置き去りにして走ってくる知有に榛伊は自然と微笑んでしまう。
榛伊の前で立ち止まった知有は京に気付き、赤面した顔を隠すかの如く頭を下げた。

「昨日は有り難う。刑事さんとお知り合いなのね。忠樹君も倶利に用事かしら?」

榛伊の背中に隠れ顔を半分だけ出す知有に京が玄関から出て来た。
知有の横に並ぶと目線を合わせ、ふわり、と微笑む。
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