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一章:出逢イハ突然ニ
再会 05
しおりを挟むふんふん、と頷いている後輩の頭に綾吾の拳が降っていくのを他人事のように見ていた。
「テメエ等、聞こえてんだよ! つぅか、中谷! お前のせいだっ、お前の! 毎回毎回言わせんなっ! 俺の尻を触るな揉むな弄るな! 会議中に堂々とセクハラすんじゃねぇよ!」
爆発した綾吾が怒鳴りながら何回も拳を葉月の頭に振り落としている。
「せっ、先輩! 僕、中谷先輩じゃないですよー! 中谷先輩を殴ればいいじゃないっすかー! ひどいですうううう」
嫌だあ、と頭を押さえる葉月は哀れな涙目を榛伊に向けてきた。
「佐津井先輩。五月蝿いんで静かにしてもらえますか。別に減るもんでもないし、彼氏からの愛はしっかりと受け取ってやって下さい。中谷のやる気は佐津井先輩に掛かってますから。頑張って体を捧げて下さい」
仕方ないと綾吾の手首を掴むと、彼の怒りは更に燃え上がっていく。
「坂中、お前今の台詞、知有の前でも言えんのか、おい! こんの叔父バカめ! 知有にみせる優しさを少しは他人にもみせろ!」
手を振り払った綾吾が榛伊を睨んでくるので、彼の瞳を見詰めた。
葉月が「部長ー、止めて下さいよお!」と叫んでいるが無駄だろう。
彼は喧騒に負けることなく事務的に資料を読み上げることに専念していた。
いつものことである。
「そうですね。もしもチユの前でそんな破廉恥なことをする人間がいるのなら俺はその人間を消します。小学生にはまだ早いでしょ。中谷、お前その内、痴漢で捕まるぞ。佐津井先輩に撲殺されるのとどっちが先だろうな」
いい意味で緩い会議なのは仕方ないだろう。
会議をしようにも事件がないのだ。
平和なのはいいことである。
「自分のものに触って何が悪いのか俺には解らない。それに坂中、お前の甥ももう12歳だろ? 尻の一つや二つ平気で撫で回す年頃だ。男はそうやって成長するんだよ」
仕事は出来るのに中身が非常に残念な変態なのが宏哉という男だった。
「変態は黙ってろ。佐津井先輩、浜本君の隣に座ったらどうですか? きっと浜本君が変態から守ってくれますよ」
後輩に振れば情けない声で「えええー、僕ですかあ?」と大きな声を張り上げて頭を抱えている。
腹を抱えて葉月を笑う綾吾が「そういやあさ」と口を開いた。
「最近坂中、残業して何調べてんだよ。浜本まで巻き込んでさ。こんな平和な所轄で未解決事件か?」
乱暴なだけでなく目聡い綾吾に問われ、榛伊は黙り込む。
出来ることならば、この男には言いたくなかった。
「昔いた所轄の事件ですよ。気になることがあるのて調べ直しています」
「粟冠事件か」
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