CHILDREN CRIME

Neu(ノイ)

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一章:出逢イハ突然ニ

新学期 05

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 そのぐらいが丁度良いのかもしれない、と思いながら、知有はランドセルを机上に下ろす。
横断バックを机の横に掛けると、お道具箱を机の中から引き出し、ランドセルから教科書やノートを移した。
いつもならば、空になったランドセルを後ろのロッカーに置くのだが、今そんなことをしては安津の怒りに振れてしまうので、休み時間に置きに行くことにする。
取り敢えずは邪魔にならないように、机の横、横断バックを掛けた方とは逆サイドに立て掛けておく。


 ふと視線を上げると、前の席の猪俣 蜜柑(イノマタ ミカン)が此方に視線を向けている。
体が気持ち後ろを向いている。
安津に怒られないだろうかと思うのと同時に、彼のニコリとした笑顔を目にしてついほっこりと和んでいる自分がいた。
可愛らしい名前と中性的な容姿、そして、成長期前とは言えども、華奢すぎる体格をしている蜜柑は、一見すると女子に見えるのだが、歴(れっき)とした男である。
去年同じクラスになって以来、仲良しの一人である。
知有もお世辞にも男らしいとは言えず、どちらかと言えば、中性的で女児に間違われることもある。
背の順でも蜜柑とワンツートップを競っている程だ。
そんなこんなで、親近感を抱いているのだ。

「お疲れだね、チユちゃん。呼び出し、大丈夫?」

コソコソと声のトーンを落として蜜柑が話し掛けてくる。
心配そうに眉が寄っている。
猫のような少しつり上がったアーモンド型の瞳が印象的で、日本では珍しい自前の明るい茶髪ともマッチしている。
しかしながら、蜜柑の容姿は、日本の学校では浮いてしまうようだった。
あまり友達は多くないらしい。
知有も茶の色素が濃い髪をしているが、一応黒髪の範囲内である。
そこまで浮くことはないが、気持ちは痛い程に理解出来た。
嫌なのだ。
茶色いね、と言われるのが。
自分が異端であることを強く意識してしまう。
慣れてしまえば、髪の色も気にしなくなる子が殆どだが、進級して間もない間は、矢張りどうしてもその話題からは逃げられない。
それも遅刻の一要因なのかもしれない。

「んー、拳骨は免れたいなあ。アレ、痛いし」

蜜柑に釣られて眉間に皺が寄る。
頭を片手で擦る。
自然と溜め息が口を出た。
声は抑え目、安津を横目でチェックする。

「痛いよね。人間業じゃあないよ、アレ。気を付けてね。僕、アレ喰らった後、保健室で寝込んじゃったんだよ」

その場面が目に浮かび、顔が歪んだ。
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