CHILDREN CRIME

Neu(ノイ)

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一章:出逢イハ突然ニ

新学期 04

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 必死で走る。
息が上がる。
ランドセルがガタガタと音を立て、背中の上で上下運動を繰り返す。


 学校まで走って5分。
知有は全力で走った。
走るのは良いのだが、遅刻は決定的。
嫌味を言われることは解っている。
それでも、どうせ嫌味コースまっしぐらならば、なるべく怒られる要素を減らしておきたい。
とにかく、力の限り走り抜けた。


 左右にスライドさせる扉が、バンッ、と勢い良く音を立てて開け放たれる。
はあはあ、と肩が上下し、知有は疲労からか、上体を倒し、膝に手を着いた。
視線は床に落ちる。
額から頬から汗が滴り落ち、床の木目を濡らす。
足がガクガクとして体が震えている。

「見事な遅刻だ、宇津井。2日連続。お前、やる気あんの? 毎年毎年、進級早々遅刻してくれてよお。なあ、宇津井。保護者呼ぶか、ああ? 俺の仕事、増やさんでくれよ」

案の定、頭上から嫌味がやってきた。
先生らしかぬ口調で、担任の男、安津 忠樹(アンヅ タダキ)は宣い、カツカツ、と革靴の音を響かせて近付いてくる。
恐る恐る顔だけ上げれば、すぐ目の前まで彼は来ていた。
腕が伸びてくる。
ぐわし、と頭を捕まれ、上下左右に回される。

「わ、悪かったってば! 保護者呼ぶのだけは勘弁してよ。オレ、明日は死ぬ気で起きるしっ」

榛伊に迷惑は掛けたくない。
安津も其れは解っている筈だ。
彼は知有の事情を知る、数少ない人間である。
榛伊の高校からの知り合いで、安津とは幼い頃からの顔見知りなのだ。
偶然か必然か、去年から知有のクラスで担任を受け持っている。
一瞬、教師かどうか疑いたくなる言動をする男ではあるが、なかなかどうして生徒からの人気は高い。
飾らないところが人気の秘訣らしい、安津曰く。


 安津は知有の頭から手を離すと、溜め息を吐いて、ポン、と軽く知有の頭を叩く。
席に着け、と小声で言われる。
彼はざわつく教室内を見渡し、もう一度溜め息を吐いた。
そして、知有から離れ、教卓に戻る。
知有は安津を窺いながら、出席番号順にならんでいる自分の席にと座った。

「おら、お前ら、静かにしろ。宇津井は放課後、職員室に来いよ。話があっから。朝の会、続けるぞ」

どん、と教卓を叩く安津。
教室内は一気に静まり返る。
良い意味でも悪い意味でも、安津は豪快だ。
人気の高さと共に、恐れられている先生でもある。
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