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一章:出逢イハ突然ニ
新学期 02
しおりを挟む訳も解らずに泣き出してしまいそうになるのだから、己の叔父に対する依存度の高さを思い知る。
「うん、ハル」
潤む目を瞬かせつつも、どうにか頷いて寝返りを打つ。
俯せになり枕を抱いた。
布団から出る気のない行動に自分自身嫌になる。
知有は顔を埋めて視界から榛伊を消した。
「ココア、出来てるからな。俺も仕事が近いし、一緒に行くか?」
知有の行動に軽く笑うと、榛伊は腕時計に目を配らせた。
其れを聞くと知有の頭が、がばりっ、と一気に起き上がる。
枕から外れた顔が歪んでいる。
今にも泣き出しそうである。
知有は必死で首を振り、布団の上に座るとベッドから飛び降りた。
「駄目だよ、そんなの! オレは一人でも大丈夫なんだから、さ」
榛伊の元まで歩み寄り、下から睨み付ける。
榛伊は双眸を眇めて知有を見やり、口端を上げた。
知有とて解ってはいる。
どう切り出せば自分が動くのかを、榛伊は把握しているのだ。
敵う筈もない。
解ってはいるが無性に腹立たしい。
両手で榛伊を押しやり背中を向ける。
支度をするから出て行けと、態度で示した。
「そうか。急げよ、ココアが冷める」
「すぐ行く!」
榛伊も承知したのか、軽く知有の頭を撫でると、一言二言だけ残し扉が閉められた。
榛伊の言葉に焦ったかのように知有の支度が始まった。
それと言うのも、榛伊が淹れる珈琲、ココア、紅茶、日本茶は、どれを取っても美味しいのである。
中でも、知有は熱いココアが好きだった。
冷めない内にと、急いで支度を済ませ、ランドセルと横断バックを手に一階まで降りて行く。
普段は知有の役目である朝食だが、この時期ばかりは榛伊がやってくれるのだ。
滅多に飲むことの出来ない榛伊のココアを飲みたくて、知有は一目散にダイニングへと向かった。
ダイニングテーブルに腰掛けている榛伊は、斜めにストライプが入った暗い灰色のネクタイを締めている最中のようだった。
「早かったな。ほら、ココア。パンで良いか?」
入ってきた知有に気付くと、榛伊は手早くネクタイを締めてココアの注がれたマグカップを知有の定位置に置く。
其処には既に、トーストとベーコンエッグが用意されていた。
知有は頷きながらランドセルと横断バックを床に置き、椅子に座る。
ココアはまだ冷めていないようだ。
湯気が立ち上っている。
トーストにマーガリンを塗っていく。
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