CHILDREN CRIME

序章：点ト点ト、ソノ先

自己防衛 02

　本が当たっても、あまり痛みは感じない。
七が力を抜いているのか、はたまた知有の感覚が狂っているのか。
どちらでも同じことではある。
お互いに恐れているのだ。
互いの痛みを知ってしまうことに。
だから、こんな茶番劇をいつまでも続けている。
知有と七には、二人で幸せになるという選択肢がなかった。
其を認めたくはなくて、狂った日常を繰り返す。


　けれど、七も気付いてしまったのだろう。
何れだけ耐えても、この劇に幸せなど訪れないことを。
二人でいる限り、二人して不幸になってしまうことに。
気付いても尚、足掻いてみせた。
信じたくはなかったからだ。
自分の考えが間違いであって欲しかった。
でも、もう無理なのだ。
逃げるのは終わりだと、七の瞳（め）が語っていた。
きっと、この狂った世界は終わりを迎える。
そして、知有と七にも別れが訪れるのだ。


　知有は、部屋から出ていく七の背中を、ただただ見送ることしか出来なかった。




　終わりを告げる狂宴は、数時間後（すうじかんのち）に行われた。
子供部屋に遺された幼児は、感情の窺えぬ顔を窓から突き出していた。
眼下に広がる真っ赤な景色にも、表情は動くことがない。
コンクリートの上には、小さく見える三体の人形（ひとがた）。
周りは血の海である。
彼の家族だったものだ。
ぴくりとも動かない其を、表情のない顔で以て、彼は羨ましそうに眺めていた。
発見者の悲鳴が響き渡っても、彼が動くことはなかった。




堕チテ行ク、
笑イナガラ。

狂ッタヨウニ笑ッテ
彼ハ堕チタ。

兄ノ幸セダケヲ願ッテ──