ジ・エンド

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
5 / 47
一章:幸せを知らない男は死にたいらしい

春の日の、拾いもの 03

しおりを挟む


「つ。っ、つめ、た、い、っ、です」

戸惑いがちに放たれた台詞に薄く笑う。
お湯になるまでには時間が掛かるのだから冷たくて当たり前だった。

「我慢しろ。すぐに温かくなる」

か細い声で「はい」と返ってくる。
反抗的なのか従順なのか、よくわからない。
それがまた、面白かった。


 俯いて水流に打たれている青年の身体を伝い落ちる水は、茶色く濁っている。
浴場の床が汚れていくのに舌打ちをした。

「一体どんだけ洗ってないんだよ? 髪洗うから目ぇ瞑っとけよ」

温かくなった温水で十分に髪を濡らし、一旦シャワーをホルダーにと掛ける。
シャンプーのボトルから、とろり、とした液剤を掌に出し、青年の髪に撫で付けた。
絡んで指が通らず泡立たないのを、根気強く解し、梳いて泡を立たせて頭皮ごと揉んでいく。
気持ち良さそうにスリスリと掌に頭部を擦り付けてくる青年に、思わず幸在の口端が持ち上がる。

「お前、名前は?」

何度か洗い流しては、またシャンプーで洗いを繰り返すこと20分程して、漸く綺麗になった気がして泡を全部流していく。

「む、むひら、さち……です。そう呼ばれてました」

ふーん、と相槌を打った。
呼ばれていた、という部分に引っ掛かりを覚え、詳しく聞けば、拾われ子だったらしい。
無平は拾った男の姓で、サチは通り名だと、恐々と声にする青年は、幸在のことが怖いようだ。
上目遣いに見られるのは楽しいが、あまりに怯えられるのは面白くない。
恐怖心を取り除こうと優しい口調を心掛け、名前の漢字を聞いてみたが、漢字、という言葉を知らないと首を振る。
年齢も聞いたが、年齢の意味が理解出来ていない様子なので諦めた。
呼称がサチで、推定年齢20歳前後、それだけ解っていれば幸在には十分だった。

「次は身体洗うぞ。服脱げ」

あまり触れたくなくて命令しても、首を横に振り脱ごうとしない男に焦れて、濡れても尚、汚い衣に手を掛ける。

「やっ、いやや、っ! 触れんといて! み、見んなや! オレ、オ、レ。き、汚い、ねん。お、お願いやから、見ぃひんで!」

途端に声を荒げ、身を捩り腕で体躯を抱き締め、震えながら小さくなろうとする青年に片眉を上げた。

「うるせぇな。汚いから洗ってやってんだろ。触らないと洗えねぇんだよ。大人しくしてろ。暴れたらぶち犯すぞ、バカ犬」

脅すように声音を低くし睨み付けると、青年は「ひうっ」と悲鳴を上げ、はっはっ、と浅い呼吸を繰り返し「いやや、いやや」と呟いては、瞳になみなみと溜まった涙が零れていく。
埒があかないと無理矢理に服を掴み、縦に引き裂いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...