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一章:援交とタローさん

性交はイコールで愛になるか 25

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幸せを描けば描いただけ、残酷な現実は僕を嘲笑う。
何度夢見ても、彼女が僕を思い出すことはない。
何度会いに行っても、彼女にとって息子は「初対面の迷い込んできた他所の子供」だった。
それと同じだ。
ある日、突然に幸せは崩壊し、二度とは戻らない。
その痛みを僕は未だに覚えている。
彼の言う幸せな未来が、僕も欲しかった。
だが、支払う代償が大きすぎる。
二人の関係が世間に知れた時の失うものは、想像もつかない程だ。

「……取り敢えず、今日は寝ようか。明日またゆっくり話し合おうよ。ちょっと待ってて。身体拭くもの用意するからさ」

僕の言いたいことは解るのか、黙り込んだお兄さんは、それでもにこやかに笑い風呂場の方に消えて行った。
握り締めたお札を破り捨てたくなる。

「愛って、こんなにも、あったかくて、満たされて。……こんなにも、苦しくて、痛いんだね。知らない方が、楽だったのに」

洗面所から聞こえてくる水音に掻き消される呟きを放った後で、でも、と思う。

「それでも、知ることが出来て、嬉しい」

痛む胸の苦しみがイコールで愛だと知った。
性交はイコールで愛にはなれないのだ。
愛の意味を履き違えて犯罪を繰り返した僕にはお似合いの罰なのかもしれない。

「神様、明日までは甘えることを許して下さい。あと少しだけだから」

顔の前で手を組んで神に祈った。
信仰心の欠片もない僕は、何の神に祈っているのかも解らずに、ただ漠然とした「神」という概念に祈った。


 温かな濡れタオルを持って戻ってきたタローさんに全身を拭われ、四つん這いにされ、ナカに出された残滓を掻き出される。
その後でシャワーを強制的に浴びさせられた。
お兄さんの大きな寝間着を羽織り、二人でベッドに潜り込む。
僕を腕に抱いて眠るタローさんは、まるでぬいぐるみか抱き枕を抱き締める痛い大人だ。
束の間の幸せを噛み締めるように、そっ、と彼の腕に頬を寄せて目を閉ざした。
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