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一章:援交とタローさん

性交はイコールで愛になるか 15*

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僕の知らない感情、感覚だ。
絡め合いどちらのものかも解らなくなった唾液を飲み込んで、僕はどうにもならない感情で涙を止めることが出来なくなっていた。
きつく閉ざした目蓋から、静かに水滴は流れていく。

「大丈夫だよ。怖くないよ?」

おもむろに、お兄さんと距離が空いた。
離された唇は色付いていて、彼の口唇から目が離せない。
優しく宣い、お兄さんは頭を撫でてくれた。
まるで僕が初めて経験するかのように扱ってくれている。
何処までも優しい人だと思うと、余計に涙が止まらなくなった。
タローさん、と呟き彼の肩口に額を当てる。
この人の優しさを愛と呼ぶのなら、なんて温かいのだろう。
この温もりが欲しかった。
彼女に抱き締めて貰えたなら、どんなにか嬉しいか。
名前を呼んで頭を撫でて貰えるのなら、それは幸せと呼べるのだろう。


 必死でお兄さんにしがみ着いた。
首に回していた手は、背中に移動している。

「ごめんなさい。もう大丈夫」

何とか気持ちを落ち着かせる。
ぐすん、と鼻を啜りながらも、彼と目を合わせて微笑みを向けた。

「うん、ゆっくりで良いからね」

そう言って、お兄さんの唇が降りてきた。
額に目蓋に頬にと口付けを落とされる。
肩を竦ませるも、黙って受け止めた。
段々と接吻は下っていき、首筋や鎖骨をキツく吸い上げられる。
痕は困るよ、と抗議しながら身を捩った。
悪戯に笑う彼と視線がかち合う。
そのまま顔は下がり、肋骨の辺りを舐め上げる舌に、ひゃん、と声を上げた。
熱い舌ベロが、肌の上を走る。
擽ったさに混じる、何とも言い表し難い感触に体がびくついた。
骨を辿るかのように、ゆっくりと動く舌にこそばゆさと、全身を逆撫でるような、得も知れぬ感覚が体を廻る。
そうこうする内に、どんどん下降していく彼の頭を無意識に掴んでいた。
お臍の周りを舐めるお兄さんの顔が上を向く。

「どうしたの?」
「そんな、舐めると……なんか変だよ。ムズムズする」

目と目が合うと、恥ずかしくて目線を逸らした。
彼は笑って、うん、と頷くも、止めようとはしない。
焦って髪の毛を引っ張れば、呆れたようにお兄さんの手がパンツに掛かった。

「ムズムズして良いんだよ。男の子だから当然でしょ。大人しく感じてて」

そのまま、ズルリと足首までずらされてしまう。
僕の性器は小さいながらに勃ち上がり、彼の視線に晒されていた。
何度も性交渉はしたが、いつも性急で、こうやってじっくりと見られることなどなかった。
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