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一章:援交とタローさん

性交はイコールで愛になるか 06

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天使って何だよ、と口を尖らせながら、シャツを脱いだ。
籠に放り投げて、ズボンのベルトに手を掛ける。
頭にあった手が、するりと頬に降りて、両手で顔を挟まれた。

「無自覚かもしれんけど、君は可愛いよ。他の人間がどう思うかはどうでも良くて。俺にとっては、可愛くて天使みたいなの」

解った? と屈んで目線を合わせた彼に微笑まれて、あわあわと口を開閉するしか出来なかった。

「こんなん言われても困るか。ごめんね」

お兄さんの双眸が切なそうに細まる。
手が離れていった。


 僕は返事も返せずに俯いていた。
僕達は、何にしても援交という関係性だ。
可愛いだとか、心地良いだとか、そういった感情など関係ない。
お金で体を売り買いする、そういった関係の中に、感情など邪魔なだけだ。
それは彼も解っているのだろう。
お互いに望むものを、提供し提供され、そうして契約は成立する。
僕は、お金を貰い体を捧げるだけ。
お兄さんは、お金を払い体を貰うだけ。
それ以外のものを持ち込めば、関係自体が破綻する。
僕達はそういう関係性の上に成り立っているのだ。


 義務的にベルトを外し、ズボンもパンツと一緒に脱いでしまう。
頭の中のぐるぐるは、一旦遠くに追い払った。
僕が脱いだものを籠に入れるのを見届けて、彼は浴槽に入った。
僕も続けて入る。
其処まで広くもないが、二人ならなんとか入れる広さだ。
カーテンをシャッと引いて閉めると、お兄さんはシャワーヘッドを掴んでお湯を出す。
最初は冷たいのか、暫く手に当てた後で、僕の体に当ててくれた。

「温度、これで大丈夫?」
「うん、ちょうどイイ」

気まずいのを払拭するように、お兄さんは努めて明るく聞いてきた。
僕は頷いて、ぴったりと体をくっつける。

「こうしたら、一緒にあたれるよ。タローさん、風邪ひいちゃう」

吃驚したのだろう、体を引こうとする彼に腕を回して逃がさない。
上目遣いに見れば、目を逸らされた。
顔が赤くなっているのは、暖かいお湯のせいだけではないようで、目線を下に移せば、彼のモノは太股の間でふるふると頭を持ち上げようとしていた。
僕は、お兄さんのお腹より少し上に頬を当てて、その様を見ていた。

「コラ、恥ずかしいでしょ。そんな見ないの」

頭からお湯を掛けられて、思わず目を瞑った。
背中に腕の感触を感じたかと思えば、体を持ち上げられていた。
うわ、と声を上げる。
耳元で彼が笑う吐息を感じた。
そっ、と浴槽に座らされる。
目を擦って目蓋を上げると、お兄さんは僕の脚の間に入り込んでいた。
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