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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
極道は政治家秘書に扮する 03
しおりを挟む蒼真が明紫亜の出生について知っていることはないだろうと推察されはするものの、蒼真の母で明紫亜の叔母の雪代 涼子(ユキシロ スズコ)は何かしらを知っているのではないか、と刀次郎は踏んでいる。
些細な手掛かりでも手に入れば、という思いも少しはあった。
だが、一番はただ蒼真の顔を拝んで見たかったのだ。
報告書で見た顔写真は、とても好みの綺麗な面立ちだった。
森情報では「王子様」と女子からもチヤホヤされているらしい。
正直な話、綺麗なだけでは刀次郎の心が動くことはない。
純も、純の母も、美形であり、常日頃から綺麗な顔には見慣れていた。
今までの人生で、刀次郎の胸がときめいたことなど一度もなかった。
性欲の発散道具としてしか人間を見たことがないのだ。
未だに恋を知らないが、性欲を抱くのは男に対してのみで、同性愛者なのだと自覚していた。
そんな刀次郎が蒼真に興味を持つのも仕方がないことだろう。
最初は、ただの興味本位だったのだ。
* * * * * *
困ったことに家の前で鉢合わせた蒼真と、もっと話をしてみたくなってしまった。
明紫亜をダシに寝泊まりしているホテルの一室に連れ込んでしまった己の浅はかさに溜息を吐き出したくなる。
やる気のなさそうな表情が、明紫亜の名を出した途端に必死なものになったのが面白かった。
単なる従兄に対する反応ではない。
蒼真は明紫亜に恋心を寄せているのだろう。
そう思うと、刀次郎の胸に奪いたい衝動が込み上げてくる。
少年の青臭い恋慕を踏み躙り、自分に目を向けてみたかった。
体内を巡る意地悪な欲求を呑み込み、蒼真を窓際のソファーに誘導し座らせる。
恐怖心と警戒心と懐疑心を丸出しにして、気の立った猫のような表情で部屋を進み、それでも言われるがままにソファーにと腰を降ろす少年は、危ないと察するだけの賢さを持っていながら、危険に自ずから身を投じる愚かさも持ち合わせ、何よりも美麗な顔が恐怖に歪むのが、堪らずに刀次郎の性癖に、とすん、と刺さる。
家族を思ってこそ危険だと解っている状況にも飛び込むところも可愛らしく思えた。
綺麗な顔は見慣れているが、倉本の家の美形二人は怯えることなどなく、寧ろまともな感情を表すことすらない。
恐怖と緊張感からか、蒼真の唇は震えている。
止めようとして噛み締められた口唇が痛々しく、だからこそ刀次郎の胸を熱くさせた。
「吉良さん」
ソファーに座り腿の上で拳を握る少年が口を開く。
一瞬、誰のことかと固まるが、すぐに偽名だと思い出した。
「何でしょう、蒼真さん。お飲み物をお持ちしますね」
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