鬼畜極道と似非王子

一章：鬼畜極道は似非王子を騙す

王子とキノコと学校生活 07

大丈夫、と頷きベッドから降りようとする明紫亜の身体を支えながら蒼護にと視線をやる。
唸っていた蒼護は満面の笑みで首肯し「任せてよ」と胸を叩いている。
父の言葉を信じ、蒼真はそのまま明紫亜と共に帰宅するのだった。


＊　＊　＊　＊　＊　＊


　その後の展開としては非常に気分の悪いものとなったのを覚えている。
調べてみれば、他の生徒にも性的な悪戯をしては口止めをしていたという事実が出てきて退学させることになったのだが、親と本人が納得せず、何度も抗議に訪れていた。
そして、自分達の主張が聞き入れられないと知ると、学校ホームページの掲示板に事実無根な内容を書き込んだのだ。

【理事長の息子で中等部の教員である雪代 蒼護は、小等部の生徒で甥である神沼 明紫亜と性的な関係にあり、贔屓にしている】

匿名で投稿された記事であったが、内容が内容だったので、警察に相談し突き止めたところ、渦中の家族の書き込みだと判明し、記事はすぐに削除された。
だが、噂はなかなかに消えてはいかず、蒼護も明紫亜も、嫌な陰口に傷付く日々を余儀なくされていた。
涼子が名誉毀損で訴えようと動いていたものの、明紫亜が強く嫌がったため、裁判沙汰にはならずに終わりを迎える。


　噂も徐々に下火になっていったが、完璧に消えることはなかった。
噂が風化しそうになる頃合いで新しい噂が掲示板に書き込まれるのだ。
高学年に進級する頃には、明紫亜の体質は行事をサボるための仮病だという噂が投稿され、根も葉もない噂に従兄は傷付いていた。
教師も、明紫亜を庇う者と、疑いの目を向ける者と二極化しているように見えた。
蒼護との噂があってからは教師との関係にも気を付けていた明紫亜が、この噂の後は完璧に教師から距離を置くようになり、蒼吉も蒼護も悲しそうであったのを記憶している。


　そして、更に別の噂が流れ始めたのは、明紫亜が中等部に進級する頃だった。
誰が書き込んだのか未だに判明していない匿名の記事には、明紫亜の母親のことが書き込まれていたのだ。

【神沼 明紫亜の母親は風俗嬢。不特定多数の人間と関係を持ち、父親も解らぬ子供を産んで捨てた】

これには涼子も腹を立て警察に被害届を出すと息巻いていたが、矢張り明紫亜が嫌がり、有耶無耶なままに記事だけを削除した。


　今までは学校の中でだけの噂だったのが、今回は近所に明紫亜の生い立ちの噂が拡がり、面白可笑しく脚色され、明紫亜が中学３年に進級する時には凄いことになっていた。
中でも「不貞の子供」「レイプされて出来た子供」というものが一番酷かった。