性教育はコッソリと

一章：教育されてます！

作家様は大学生 18

しかしながら、先程からの優位な気持ちが抜け切らず、ふいっ、とソッポを向いて神流から顔を逸らしてしまった。
こういう態度は、相手を悦ばせるだけだと、昨日嫌というほど学習したのにである。

「関係ありますよ。僕の手で乱したんですから、顛末を知る権利はあるでしょ？　それとも、言えないようなことでもあるんですか？」

ふふ、と意地悪く笑う神流を睨み付けて、羽李はふるふると首を横に振った。

「何もない。お、おさまるまで、大人しくしてた」
「えー、本当に？　こんなになってたのに、おさまったんですか？　ほら、見て下さいよ」

そう言うと、神流はポケットからスマホを取り出し、操作をした後、画面を羽李に突き付ける。
スマホの液晶には、朝撮られた羽李の恥ずかしい姿が映っていた。

「消せよっ！」

画像を見て慌てて手を伸ばす羽李から逃れるように、神流はスマホを引いてポケットに仕舞う。

「嫌です。お気に入りなんで」
「ふざけんな！」

有無を言わせないニッコリとした笑顔で言い切り、テーブルに片肘を置くと、頬杖を着いた。

「ねえ、先輩。自分の立場は解っていますよね？」

暗に画像をバラすと脅す神流に、羽李は眉間に皺を寄せる。

「くそっ、お前、ずりぃぞ」
「ズルくて結構です。で、どうやって処理したんですか？」

ぎろり、と睨んでも、神流には効果はないようだった。
それでも、そのぐらいしか抵抗の仕様がないのだ。

「その、オナした」

逃げられないと観念して、顔を俯かせ、ボソボソと小さな声で羽李が答えれば、神流は愉しそうに口角を上げる。

「聞こえませんよ、先輩」

ワザとらしく宣う神流に、羽李は頬を赤く染めた顔を勢い良く上げた。
何か言おうとして、何も出てこないのか、口をパクパクと開閉させ、結局はまた下を向いて先程よりも大きな声で告げる。

「っっ……！　だ、だから、自分で、した」
「そうですか」

神流が納得したように頷くものだから、羽李はこれで終わった、と安堵に息を吐く。

「何を考えながらしたんです？」

だが、すぐに自分の考えが甘かったと思い知る。

「そっ、そんなん言えるかっ！」

これだけは知られてはなるまい、と必死で首を振る羽李の目は、涙目である。
しかしながら、そんな羽李を見て、逆に神流の被虐心に火が着くのだった。