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一章:「さようなら」は許さない
臆病な恋心 05
しおりを挟むこの時、羽李の言う通りに告白していたならば、何年も辛い想いをすることもなかったのかもしれない。
好きでもない男に脅され身体を好きにされる屈辱も恥辱も受けずに済んだのだろう。
たらればの話をしたところで、起きてしまった現実は変えられない。
臆病な恋心を隠すことを選んだ史壱が悪いのではない。
それでも、夢想してしまう。
あの時、修斗と付き合えたのなら、彼の手を取ることが出来ていたのなら、きっと幸せに包まれていたのだ。
* * * * * *
目が覚めると其処は仕事場のバックヤードだった。
売場から「フウ、時間だ」と楓の声が聞こえてくる。
「今行くよ」
掠れた声で返事を返し、ソファーの上から降りた。
今日は棚卸しがあり、いつもよりも忙しく神経も使う。
昔の想い出に囚われている暇などない。
忘れたくても忘れられない男と再会したことは、何処か奥深い場所にと押しやり、史壱は仕事のことで頭を埋め尽くす。
深呼吸を繰り返し売場にと向かった。
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