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一章:「さようなら」は許さない
「久し振り」とは言えない 04
しおりを挟む「恋愛対象じゃなくても体の関係は持てるでしょ?」
考えたくはないが、それでも心の何処かで疑ってしまうのをやめられない。
修斗の問い掛けに、楓の表情は険しくなり、怒ったように言葉を発した。
「そういう同性愛者は確かに多いかもしれないな。……でも俺もフウも、そういう関係は好きじゃないんだ。男なら誰でも良いみたいに思われるのが一番不愉快なんだよ。フウは誰よりも純粋で綺麗な奴だ。アンタ、友人なんたからわかってんだろ? 他の同性愛者がどうだろうが関係ない。フウのことが好きなら信じてやれよ。彼奴は、アンタのこと大事に想ってんだ」
楓の眼がスッと細まり、切な気に唇を噛んでいる。
修斗はどうしても納得出来なかった。
「大事ならどうして。俺から離れようとするんですか」
無意識に拳を握っていた。
掌に爪が食い込み痛みを伝えてきたが、それ以上にやるせなくて俯くしかなかった。
「大事だからこそ離れることを決意したんだろ。俺はフウの自分を犠牲にしてでも他人を思い遣るところは尊いと思うよ。アンタのせいで傷付いたのに、フウは一度だって君を責めたりしなかったし、君の為を思って自分の想いを押し殺したんだ。……君の先輩がフウに何をしたのか、知っているんだろ? 知っていて何も出来なかった君にフウを責める資格なんかない」
ぼそり、と溢れ落ちた修斗の本音に楓は溜息を吐き出し、自身の髪をガシガシと掻き混ぜるとやるせなさそうに言葉を絞り出し、最後には修斗を責めるように睨み付ける。
「……俺は何度も説得しましたよ。それを拒んだのはフミだ」
言われっ放しなのは面白くなくてつい反論してしまう。
そんな修斗に肩を竦める楓の口からは盛大な溜息が溢れ落ちた。
「本当にアンタ、想像力の足りないお子様だな。あのフウが傷付いてまであんな男と何年も付き合う理由が解らないか? フウはどんなに惚れた相手でも黙って傷付けられているような男じゃねぇよ。彼奴はそんな愚かじゃない。それを何年も堪えてたんだ。それなりの理由があるんだよ。そのぐらい察してやれ」
敵わない、と修斗は生まれて初めての敗北感を抱いてしまう。
きっと史壱は、彼といることがとても楽なのだろう。
誰よりも信頼し頼れる存在がこの男であることは少しの時間でも解った。
自分には到達出来ないポジションにいる男が妬ましい。
「俺は別にアンタの邪魔をするつもりはないし、恋敵になることもない。だからそんな怖い顔すんなよ。フウが幸せになれるならそれでいいんだ。遠藤君にフウを幸せにするだけの器量があるのなら協力してもいいしね」
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