ティーチャー - TEACHER

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
11 / 11
一章:腐敗した恋心

無愛想なクラスメイト 05

しおりを挟む


無言で立ち去ろうとする榛伊を溜息で見送った愛生の肩が、がくし、と落ちていく。

「あっ、お騒がせしましたー! 気にしないで? んじゃ、また明日ねー」

教室内の視線を一身に集めていることを漸く自覚した愛生の手が、ひらり、と宙を舞い、彼も教室から消えて行った。


* * * * * *


 寮の部屋に辿り着いた忠樹は盛大な息を吐き出しては目の前の状況を眺める。
部屋のど真ん中で天流青と吾沙が睨み合っているのだ。
喧嘩でもしたのか、と傍観者を決め込み自分の机に向かおうとした。

「タッくん! 無視しないで!」

唐突に背中から抱き着かれ、前のめりに数歩進んだ。
吾沙の机に手を着き何とか転倒を免れる。

「ルウト、いきなりタックルすんなよ。いってぇだろ」
「ごめん、タッくん。でも、この状況を見て傍観しようとしただろ! おかえり!」

慌てて忠樹から離れつつも頬を膨らませ、怒った声を出している。
体勢を立て直した忠樹は苦笑を浮かべ、吾沙の机の奥にある自身の机上にスクール鞄を放った。

「ただいま、ルウト、アーサー。また喧嘩か?」

仕方なく問い掛け、首元に手を伸ばす。
ネクタイを緩めながら二人に視線を投げる。

「いや、喧嘩ではない。この馬鹿者を躾けていただけだ」

ふん、と鼻息を荒げ眼鏡を押し上げる吾沙に天流青が「なんだよお」と唇を尖らせた。

「何だ、とは何だ。節操なく女子に絡んで困らせている猿以下の馬鹿から女子を保護しただけだろう」

顔色一つ変えずに事のあらましを話す吾沙へと何故か抱き着きにいく天流青は足蹴にされ、わざとらしく泣き真似をしている。

「別に節操ない訳じゃないし! 困ってないし! ちょ、ちょっと、戸惑ってたかもだけどさ! なんだよ、アーサーの妬きもちさんめっ!」

顔を両手で隠した状態でチラチラと指の隙間から視線を寄越す天流青の脛を容赦なく蹴り吾沙は腰に手を当てた。
仁王立ちが恐ろしく似合っている。

「誰が誰に妬きもちを妬いた? 言語能力の劣る下等生物が適当なことを言うな」

言い争っている二人を放置し、忠樹はブレザーを脱いでいく。
仲が悪いように見えて、これでコミュニケーションを取っているのだから、忠樹に入り込む余地などない。
寧ろ、傍観者でいたい。


 ふと思い出したのは無表情な男のことだった。
何もかもを拒絶しようとしていた榛伊の顔が脳裏にちらついた。
クラスメイトだからと言って近付く必要もない。
彼自身が他と交わることを厭うているのなら、接点を持つこともないだろう。
古傷が痛む気がして忠樹の口元に嘲笑が浮かぶ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...