Drug Crazy.

Neu(ノイ)

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一章:学園の闇

一歩、進む 03

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トートバックを無遠慮に雷紀の机に置いてあやが語るのを黙って聞いた。
まるで雷紀に意見を求めているかのように彼女は雷紀から視線を放さない。

「それは僕も同じ考えだよ。僕の欲しい情報を握っている筈なんだ。そうでなければ」
「あーっ! 水紀ちゃんだあっ!」

悲壮な顔付きで話していた勝を押し退けて悠理のヒステリックな高い声が場を支配した。
バタバタ、と教室の出入口まで駆けて行く悠理の後ろ姿の向こう側に水紀の姿があった。

「おはよう、ゆうちゃん。どうしたの? そんな泣きそうな顔して」
「だってだって、っ! 遅いから心配した!」

ぼふん、と勢い良く水紀に抱き着いた悠理は、ぐりぐり、と頭を胸部に押し付けていく。
苦笑した水紀の手が優しく彼女の柔らかい髪を撫でる。

「ごめんね、ゆうちゃん。忘れ物して取りに戻ったら遅くなっちゃって。今日はあやちゃんと登校だったよね。楽しかった?」

顔を上げさせると、ぶすう、と膨れている悠理の頬を撫で、涙の浮かぶ目尻を指先で拭っていく。

「あやちゃんの髪、ユウリが結んだんだよ。可愛いでしょ? ユウリ、あやちゃん大好きだから頑張ったの!」

褒めて、とキラキラとした瞳で訴えてくる彼女に、水紀の双眸は細まる。

「ゆうちゃんは本当にあやちゃんのことが好きだね。エライエライ」

こつん、と額を合わせ微笑み合うバカップルの間に割って入ったのは、あやだった。
寧ろ、彼女にしかこのゲロ甘な雰囲気は壊せないのだろう。

「いつも言ってるけど。こんなところでイチャつくな。迷惑だ。公害で訴えられても知らないぞ」

悠理の肩を掴み水紀から引き剥がすあやは冷たい視線を水紀にと投げた。
あー、と声を捻り出しながら頭を掻く水紀の目が伏せられる。

「ごめん、あやちゃん。気付くと体が求めちゃって。だって、ゆうちゃんが可愛いんだもん。仕方ないよね」

一応の反省は見せつつも、ふふ、と笑い小首を横に倒す水紀にあやの口から溜息が零れ落ちる。
この男は自身を可愛くか弱く見せる術に長けていた。
強面の雷紀と血の繋がりを疑いたくなる程に可愛いのだ。
そして、そんな自分の見た目が他人に齎す効力も解っていて、最大限に効率よく発揮する仕草を把握している。
あざといの一言に尽きた。

「ごめんなさい。水紀ちゃんが可愛くて、ユウリついついくっついちゃうの」

対照的に今にも泣き出しそうな顔であやを窺う悠理は、計算でも何でもなく素で可愛さを振り撒いていた。

「度を越すと教師にも注意されるかもしれないし、気を付けて。好き合うのはいい事だけど、場所を考えてくれ」
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