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一章:学園の闇
謎の同級生 11
しおりを挟む「真哉。クラスの子が来てくれたの」
「うん、解ってるよ。かあさん、余計なこと、言わないで。忘れたの?」
母親を見下ろしている真哉の顔には表情がない。
ぴりぴりとした空気が流れていた。
「こんにちは、和泉原君。メールさせて貰ったと思うけど、僕は藤沢 勝。彼等もクラスメイトだよ」
「……帰って、くれないか。話すことなんかない」
その空気の中で、勝が声を発した。
真哉に手を差し出すも、その手は払われてしまう。
「お前、ヤク、やったことあんだろ。禁断症状、出てんじゃねぇのか?」
唐突に雷紀の言葉が響き渡った。
真哉の顔がゆっくりと雷紀に向かう。
「帰って。帰ってくれよ。もう僕に関わらないでくれ」
目を細めれば、ふい、と雷紀から視線を外し、俯いてしまう真哉を、水紀は辛そうに見ている。
真哉の母親は、肩を震わせて俯いていた。
嗚咽が聞こえてくる。
泣いているのだろう。
「和泉原君。雷紀は、こいつは、アメリカに住んでいたんだけどね。薬物中毒だったんだ」
「おい、水紀! 何話して」
「雷紀は、黙ってて。こいつ、廃人みたいになってた。麻薬の怖さは一番良く知っている。君だって、本当は解っているんだろ? このままじゃいけないって」
水紀の言葉が部屋に響き渡る。
真哉は唇を噛み締め、拳をぎりぎりと握っていた。
顔は下を向き表情は窺えない。
「いつまで逃げるの? 目を背けても、受け入れるまで追い掛けて来るんだよ。現実は優しくなんてない。だけど……、一人じゃないから。支えてくれる人は必ずいるから。独りで抱え込まないで」
水紀の言葉は続いた。
その目には涙が光っている。
思い出してしまったのだろう。
昔の弟の有り様を。
悲惨な状況を。
其れでも、水紀は真哉から目を離さなかった。
「でて、出ていって、くれ。話すことなんか、ない。逃げても、いない」
真哉の口からは、やはり拒絶の言葉が力無く零れた。
水紀から目を反らし、首を左右に振りたくる。
そんな真哉の様子に、勝は一度一堂を見渡し、頷いた。
「皆、今日は帰ろうか。和泉原君、急に訪ねて悪かったね。また、来るよ。考えておいて」
立ち上がる勝を他のメンバーは見上げた。
彼は本気なようだ。
あやが続いて腰を上げた。
真哉は安堵の表情を覗かせている。
悠理はあやと水紀を交互に見遣り、おもむろに立ち上がった。
水紀の腕を引っ張っている。
それに苦笑すれば、水紀もその場に立った。
眉間に皺を寄せ、難しい顔をしている雷紀も、のっそりとした動作で腰を上げる。
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