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一章:学園の闇
謎の同級生 10
しおりを挟む「ごめんなさい。あの子、きっと出て来ないと思います。部屋も、締め切っているので。……どういったお話かしら?」
お盆を片腕に乗せ、もう片手で縁を支えながら、彼女がやってくる。
膝を着き、ローテーブルの上にグラスを置いていった。
勝が頭を下げつつも、隣へと回していく。
全員に行き届いたのを見れば、頂きます、と呟いて、グラスに口を付けた。
真哉の母親は、申し訳ないと俯いて、首を横に微動させる。
ちらり、と目線だけを上げて、一堂を見渡した後、勝に視線を固定させた。
「そう、ですか。そうですよね。その、真哉君の噂のことで、確かめたいことがありまして」
「其れは、麻薬や佚君のこと、よね? 人伝に聞いたのだけど。出鱈目なのよ、あの噂は。私も心を痛めていて。真哉は、佚君のためにあんなに頑張っていたのに、殺しただなんて。一体誰が」
彼女の目尻が光って見えた。
口許を押さえて、言葉を詰まらせる。
勝の手が、彼女の肩に置かれる。
彼女は顔を上げ、目を瞬かせた。
勝を他の四人も見詰めていた。
雷紀は、他人事だと言いた気に、冷やかな視線を向けている。
あやは、頑張れと心の中で応援していた。
水紀は、複雑な表情で、彼女を眺めている。
その顔は、とても辛そうであった。
悠理はそんな水紀に気付き、ぎゅっと手を重ね、握り込んだ。
「大丈夫です。僕達は、噂を鵜呑みにして来た訳ではありません。申し訳ないのですが、少し調べさせて貰いました。市川君が麻薬中毒で亡くなった、と突き止めた時に、真哉君の噂はおかしいと、そう結論付けました。僕達は、真実を知りたいんです。真哉君は、ある噂の真相に関わっているんではないかと、僕は思っているんです。お願いです。何か、何でも良いんです。知っていることがあるのなら、教えて下さい」
ゆっくりと、だがはっきりとした口調で勝が話を進めていく。
真哉の母親と目を合わせ、真剣な表情である。
彼女の口が、幾度か開閉し、そして、ついには目が伏せられた。
瞳から一筋、涙が溢れる。
「真哉は、何も知らないの。真哉は、あの子は。佚君を止めようとしただけなのよ。麻薬にも関わっていない。ただ、あの子は佚君にぼうこ」
「かあさん。なに、喋ってるの」
不意にキッチンから人影が現れる。
ほっそりとした色白の体。
身長は165cm程だろうか。
小柄な少年だった。
彼の目には、生気がなく、どんよりと曇っているようにも見えた。
寝間着姿で、体を大きく揺らしながら歩いている。
ソファーに近付くと、母親の後ろに立った。
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