6 / 17
一章:責任取ってね?
神沼が大変です 04
しおりを挟む「あ、ああ、ごめんね。何処かで、会ったことがあるような気がして。知り合いだったかな?」
うーん、と唸り義一郎の手を放す倫成の顔を眺め、義一郎も首を傾ける。
パンフレットで見た以外に会った記憶はなかった。
「いえ、全く覚えがないです。人違い、ですかね?」
「そっか。引き止めちゃってごめんね。神沼君のこと、宜しく頼んだよ」
照れたように笑う倫成に頷き、では、とその場を後にした。
* * * * * *
エレベーターで宿泊部屋の階まで上がり、明紫亜と二人部屋の番号を探し出す。
事前に渡されていたカードキーで扉を開けると、扉から真正面に見える窓際に置かれたソファーに明紫亜が座っていた。
「あ、委員長。遅かったね」
ぐったりと背凭れに肢体を預ける彼の顔が此方に向く。
二つあるベッドの一つには明紫亜の荷物が置いてあり、義一郎は何もない方に自分の荷物を置いた。
「委員長、ベッド、好きな方でいいよ。荷物退かすしさ」
ソファーから立ち上がった明紫亜が近寄って来る。
何処か覇気のない顔が義一郎に向く。
気怠げに、それでも彼は、くたりと笑った。
「こっちで大丈夫。神沼、体調悪いんだろ? 少し横になってたら?」
んー、と考えるような声を出しながらベッドに倒れ込む明紫亜は、それでも首を横にと振る。
「少し気分悪いだけだから。取り敢えず、見学させて貰うよ」
大丈夫、と笑って体を起こそうとしている。
義一郎は心配でハラハラとしてしまい、挙動不審に目があちこちに動いてしまう。
「で、でも、顔色、あんまり、良くないよ?」
わたわたと両手を上下させながら告げると、明紫亜は双眸を瞬かせ、ふんわりと微笑んだ。
その優しくて柔らかな表情に、義一郎の胸はドキリとときめいた。
いつもの元気一杯な笑顔も素敵だが、大人な雰囲気を醸し出す微笑みも、両極端な筈なのに彼には似合っている。
「ありがとう、委員長。でも、少しでも顔は出したいんだ。参加したって言う、その気分だけでも味わいたくて。本当に無理だったら、ちゃんと休ませて貰うから、ダメ、かなあ?」
上目遣いに、くたりと首を傾ける明紫亜に、義一郎はもう何も言えなくなってしまう。
胸がトクントクンと高鳴っていた。
ぎゅ、と左胸を左手で押さえる。
「わかったけど。無理はしないって、約束だからな?」
赤くなる顔を隠すように俯き加減でそう宣えば、彼の嬉しそうな、えへへ、と言う笑いが聞こえた。
「ん、約束する。委員長、大好きだよ!」
そっと目線を上げると、満面の笑みを浮かべる明紫亜に目を見詰められる。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
ドS×ドM
桜月
BL
玩具をつかってドSがドMちゃんを攻めます。
バイブ・エネマグラ・ローター・アナルパール・尿道責め・放置プレイ・射精管理・拘束・目隠し・中出し・スパンキング・おもらし・失禁・コスプレ・S字結腸・フェラ・イマラチオなどです。
2人は両思いです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる