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一章:責任取ってね?
神沼が大変です 03
しおりを挟む専門家から見ても明紫亜の顔色は悪かったのだろう。
心配だと言う倫成は真剣な顔付きで、生徒のことを心から想っているのだと義一郎には思えた。
それが何故だか嬉しくて、つい笑みが浮かんだ。
「僕も神沼のこと、心配だったので任せて下さい。あ、でも。よく僕が神沼と同室だって解りましたね。委員長だってことも」
ふわり、と微笑みを倫成に向けるも、ふと疑問が浮かび首を傾げる。
倫成は、ああ、と呟き苦笑した。
困ったように眉尻を下げ声のトーンを落とすと、彼は他の生徒と話しているC組の担任に視線をやる。
「水保君に声を掛ける前に、先生に同じことを頼んだんだけどね。同室の生徒が委員長だから水保君に頼んだ方がいいと思うって、君のこと指差されたんだ。ごめんね、本当は教師が気を配るべきことなのに」
申し訳ないと軽く頭を下げる倫成に、わたわたと両手を上下させ首を振った。
さらり、と倫成の髪が頬に落ちている。
「こ、此方こそ、担任が失礼しました。あの人、結構贔屓が凄くて。神沼のことは、なんだか、その、気に入らないみたいで」
言っていて悲しくなり、唇を噛み締める。
まだ日にちも浅いのに、好きな生徒と嫌いな生徒の選別はもう終わっているようだった。
担任はそういう人間なのだろう。
嫌いな生徒の対応は、大抵義一郎に押し付けてくるのだ。
見ていて解る程にあからさまで、とても気分の悪い想いをさせられる。
特に明紫亜に対する態度は度を越しているように思えた。
それを解っていて、明紫亜は担任に対しても笑みを絶やさない。
彼は担任に負けたりしないのだ。
「そう、なんだね。そういうのは、宜しくないね」
倫成の低い声で発せられる呟きに、義一郎は大きく頷いた。
「だけど、神沼は凄くて。いつも笑顔で担任のこと躱してる。神沼の方が年下だけど、よっぽど大人なんです」
拳を握り熱く語ってしまい、羞恥に俯いてしまう。
倫成の、はは、と笑う声が聞こえてくる。
「水保君は、神沼君のことが、大好きなんだね」
「あ、好きって言うか、その、えっと。憧れるんです。羨ましいなって。僕はそんなに強くないから」
倫成は双眸を細め義一郎を見詰めていた。
俯いたままの義一郎は、頭を掻いてボソボソと言葉を紡ぐ。
「あっ、もうそろそろ行かないと! 瀬名先生が優しい人で良かったです」
ふと周りを見渡せば、もう誰もいなくなっており、義一郎は慌てて荷物を手にロビーを去ろうとする。
が、手首を倫成に掴まれてしまう。
真剣な顔で義一郎の顔を凝視する倫成に、あの、と戸惑いの声が出た。
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