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序章:寮長様と小型わんこ
可愛いわんこ 01
しおりを挟む【可愛いわんこ】
和志が健とルームメイトになってから三ヶ月が過ぎようとしていた。
前よりも彼に対する嫌悪感は薄れている。
まだまだ子供なのだと思えば可愛く見える時すらあった。
ほわほわ、と目の下を動く柔らかそうな頭髪は、ぴょんぴょこ、と飛び跳ねている。
「なんで起こしてくんなかったの!? 遅刻しちゃうよ!」
ぷくう、と膨れたほっぺたを突付きたくなる衝動を抑えて和志は苦笑を返した。
黒に近い茶色の髪を、くしゃり、と撫でると、健の両目は心地良さそうに細まっていく。
制服のシャツに腕を通している健に手を伸ばし釦をとめ遣る。
「起こしたよ、三回も。昨日、遅くまで起きてただろ? ちゃんと早く寝ないと駄目だよ」
「そっ、それは、……ごめんなさい。新しいゲームが楽しくて、つい夢中になっちゃったんだ。反省する」
下から上まで全ての釦をとめ、健が手に持つネクタイを奪い手早く彼の首に巻き付けてしまう。
注意する和志に、しゅん、と肩を落とした健は、きりり、と表情を改めた。
「ほら、荷物持っておいで。早くしないと朝食抜きになる」
この三ヶ月、健と過ごして解ったのは、彼がとても素直な人間であると言うことだった。
感情のままに行動しているのだろう。
和志は健のそういったところが嫌いで苦手だったのだ。
だが、一緒に生活する内に、自分にはない彼の一面を好ましく思うようになっていた。
慌てて自室からスクール鞄を取って来た健と並んで部屋を出るのだった。
食堂に辿り着き中に入り、カウンターで朝のメニューを選んだ。
遅い時間だからか人気(ひとけ)はあまりない。
流れ作業で朝食を受け取り、何処に座ろうかと部屋を見渡した和志の目に、幼等部からの知り合いの姿が入る。
今年はクラスが違うが、何度か同じクラスになったこともある二人だ。
一人は泣き虫で争い事が嫌いな天星 響(テンセイ ヒビキ)で、健よりは大きいが標準よりは小さい。
物腰が柔らかく、両親が極道とは到底思えない優しい子だった。
もう一人の持宗 龍神(モチムネ リュウジン)は、大柄な体躯に厳つい顔で、明らかにカタギとは違う雰囲気を醸している。
極道一家の跡取り息子で、響の父親は組長(龍神の父親)の右腕(側近)をやっていると言う。
二人は生まれた時からの仲で、クラスが違っても行動を共にしていることが多い。
「おはよ、堀中。今日はゆっくりだね。珍しい。ね、龍君」
和志に気付いた響の手が、ひらり、と振られ、和志は健を伴い二人に近寄っていく。
「ああ。堀内が寝坊したんだろ? 昨日はゲームの発売日だったからな」
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