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一章:男性保育士奮闘記
男性保育士と働くお父さん 11
しおりを挟む出逢った時から彼等双子は、性別を入れ替えて生活していた。
男である雄仁は女として。
女である雌威は男として。
それぞれに性別を偽って生きることを強要されていた双子と僕は幼馴染で、実家が隣同士だったのだ。
事情は知ってはいても、子供の僕にとっては、男でも女でも関係なかった。
苛められていればヒーローよろしく二人を庇い、家族と上手くいっていない時には仲裁にも入った。
友達がなかなか出来ない双子の唯一とも言える友人が僕なのである。
その僕でさえ、彼等の本当の姿を見ることは滅多にない。
休みの日には、本来の姿に戻る双子ではあっても、そもそも僕と休みが一致しないので、なかなかに見られない。
それ故に、女の雌威も、男の雄仁も、レアなのだ。
「解ってるよ、雄仁。今回は僕の落ち度だ。初めにちゃんと連絡すれば良かったね。ちょっと藍沢さんと話があってまだ帰れないけど大丈夫だから、ちゃんと寝るんだよ?」
琴村兄妹の実家では、双子の立場はとてもデリケートなものだった。
自分の意思で好き勝手なことを出来ない二人にとって、実家を出られたことは奇跡に近いが、だからと言って全くの自由でもない。
監視は常にされているのだろうし、怪しい動きを取れば命すら狙われる状況にあった。
そんな中で、僕という存在は中立的なところに存在している。
だからこそ、僕と住まうことを条件に琴村兄妹が実家を出ることが許されたのだ。
僕はある意味では監視要因であり、双子を抑える役目を期待されているのだろう。
『情人がアタシのことかぎ回っているみたいなのよ。あの子はアタシのモノは全て奪わないと気が済まないから。……颯介には何もしないでしょうけど。念のため、気を付けて頂戴』
情人(ナサト)は、今年16歳になる琴村兄妹の異母弟だ。
双子とは違い、甘やかされて育った俺様で傲慢なヤンチャ坊主である。
10歳も年下の情人は、颯介にとっても弟のようなもので、情人も颯介を兄のように慕ってくれている。
だが、情人が雄仁を執拗に目の敵にしていることも事実だった。
彼は雄仁から何もかもを奪ってしまいたいのだ。
もう何も持っていない雄仁からこれ以上何を奪おうと言うのか。
僕の脳裏に浮かんだのは、雄仁が惚れたと言う彼の同僚だった。
「ムウさんは大丈夫なのか? 好きなんでしょ、彼のこと」
僕しか見ようとしなかった雄仁が、はじめて僕以外に目を向けようとしていた。
その相手が同じ職場で働いている小筑 睦呀(サツク ムッカ)という二歳年上の男である。
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